第五十九夜 真・女神転生2
一つ、ゲームの話でもしようか。
救世主……漫画や小説ではお馴染みの存在ですね。超人的な力をもって人々を救う救世主はまさにヒーローで、読者の憧れとなったものです。
しかし元々はこの概念、現代の宗教の成り立ちの中で生まれたものです。自分達の宗教の開祖を絶対的な力を持つ救世主と位置付ける事で、その宗教の神秘性を高め揺るぎないものにしようとしたんですね。
では……人類が危機に瀕し、新たな救世主が求められた時それら宗教はどうするのでしょうか? その答えの一つとなるのが、今回ご紹介する「真・女神転生2」です。
本作はスーパーファミコン最盛期、アトラスからスーパーファミコンにて発売された3DダンジョンRPGです。舞台は前作の未来となっており、物語中盤にはお馴染み東京の地域も登場します。
ストーリーは大破壊の後、大洪水により海に沈んだ東京。メシア教により人工的に作られた島カテドラルに逃れる事により僅かに生き延びた人々はそこを拠点とし、再び繁栄を始めた。カテドラルは『TOKYOミレニアム』と名を変え、海に沈んだ陸地の上に新しい陸地を築きその上に幾つもの居住区を作り上げた。それから長い時が過ぎ――。『TOKYOミレニアム』の居住区の一つ、ヴァルハラに住む記憶喪失の青年ホークは彼を拾った岡本の指導の元、闘技場のチャンピオンであったレッドベアーを見事打ち倒し新チャンピオンとなる。それを皮切りとするように、彼の元を次々と訪れる人々。その中で失われた自分の本当の名を思い出した彼の身に、今、大きな運命の波が押し寄せようとしていた……というものになっています。
本作では序盤、沢山のキャラの名前を付ける場面に遭遇します。どうしても浮かばなければ今回は主人公も含めデフォルト名が用意されていますが、どうせなら自分で名前を考える方が思い入れも違ってくると思います。
また本作よりメッセージの文字が大きくなり、漢字も使われるようになりました。この頃のRPGは使える容量の増加により文章面も改善がなされており、本作もそれに倣った形と言えるでしょう。
2Dマップに特に大きな変更点はありませんが、今回は架空の地名が多い都合上か前作のように地名は表示されなくなっています。また前作にひっそり搭載されていた、アイコンの動きで現在の自分の属性が解る機能が外されたのはちょっと痛い点でしょうか。
3Dダンジョンは従来のダメージゾーンやダークゾーンの他、落とし穴や一方通行の道などが増えより難易度が上昇しました。その分オートマッピングにもマーカー機能が付き怪しい部分には印をつけておけるようになったので、これを上手く活用しダンジョンを踏破していきましょう。
施設はほぼ前作から据え置きですが、新たに前々作にあったバーとカジノが復活しました。今回のバーは以前のように情報料の酒を要求される事はなくなり酒と情報は完全に別物になった他、酒の効果も変わり一定歩数の間のステータス上昇効果が得られるようになりました。
但し確率でバッドステータスもプレゼントされるので、ご利用は計画的に。リアルでもゲームでも、お酒は程々にという事ですね。
カジノはかなり遊べる種類が増え、スロットだけでも三種類ある上ビッグオアスモールにバカラなど様々なゲームがお出迎えしてくれます。本作のカジノはマッカでコインを買いゲームでコインを稼いで景品と交換するという形になっており、交換出来る景品もカジノでしか手に入らないものばかりなので頑張って手に入れておきたいところです。
メタルカードで遊べる数字当てのコードブレイカーも健在で、本作ではカジノとは独立する形で存在しています。景品も貴重なアイテムばかりなので、メタルカードを持っているなら気軽にチャレンジしてみましょう。
他にも危険なギャンブルとして、仲魔を使ったロシアンルーレットなんて言うのも。勝てば強力な悪魔が仲魔になりますが、死んだ状態で譲渡されるので復活の手間が必要です。
また新規施設として、バーチャルトレーナーが新たに登場しました。ここはマッカを支払う事で悪魔の出没する短いダンジョンに挑戦出来るという、一風変わった施設となっています。
出てくる悪魔とは交渉が出来ずマッカやマグネタイト、アイテムも得られませんが死んでもゲームオーバーにならず安全に経験値が稼げるのでレベル上げに最適です。それ以外にもCOMPの機能を拡張してくれる謎の人物、スティーブンとコンタクトが取れる唯一の場所でもあるので新しい町でバーチャルトレーナーを見かけたら是非とも利用しておきましょう。
それ以外だと第一作から登場しながら今まで触れて来なかった施設の一つに、ラグの店というものがあります。ここは道中で手に入れた宝石とアイテムを交換してくれるという店で、交換対象のアイテムもここでしか手に入らない貴重なものばかりとなっています。
宝石は専用の宝箱の中から時折入手出来る他、特定の悪魔を倒す事でもドロップします。交渉で要求される事もありますが、基本的には手に入れにくいものなので突っぱねても問題はないかと思います。
本作のラグの店では宝石をアイテムに交換する他、複数の種類の宝石を組み合わせて悪魔と交換する事が出来るようになりました。ここで交換出来る悪魔は合体に使うと相手の悪魔を種族はそのままにグレードだけを変えるという特殊な精霊という種族で、手に入りにくい宝石を交換に出すほどより強力な精霊と交換して貰えます。
但しそれぞれの精霊と各種族とは相性もある為、強い精霊を使えば必ず悪魔がグレードアップする訳ではないのでその辺りをよく考えてご利用下さい。また各宝石は九個集めると主人公のステータスが上昇するボーナスもついているので、敢えて交換せず溜め込むのも有りです。
今までのシリーズでは悪魔は一種類の敵が複数出る形でしたが、本作では二種類の悪魔が同時に現れる事があります。その状態で片方の種族に交渉を持ちかけようとすると、もう片方の種族が割り込んでくる事があるのです。
そうなると交渉相手がそちらの種族に移り、最初に話しかけようとした種族とは交渉出来なくなります。最初に話しかけようとした種族が本命の場合は割り込んでくる種族を先に蹴散らすしかなく、それがあまりに面倒だった為かこの割り込みは後のシリーズではなくなりました。
その交渉内容は更に多様化し、中には歌ったり踊ったりという面白選択肢も。一筋縄ではいかない交渉は、最早本シリーズの醍醐味と言っていいでしょう。
戦闘面も進化し、今まで思うように使えなかった仲魔の持つ魔法以外の特技がHPまたはMP消費で自由に使えるようになりました。特技には強力なものが多く、単純なステータスや攻撃回数だけでなくより強い特技を有する仲魔を揃える事が戦略面で重要な部分となっています。
これら特技は、通常攻撃より命中率が遥かに高いというのもポイントです。何故なら本作、後半のボスになればなるほど通常攻撃がろくに当たらなくなるからです。
命中率アップの魔法はあるにはあるのですが、これがまた序盤に出てくる悪魔しか持っていないという状態。そういう訳で、安定して攻撃を当てられる特技の重要性は本作ではかなり上の位置付けになっていると言っていいです。
悪魔合体では、新たに魔法継承というシステムが追加されました。これは悪魔合体で生み出された仲魔に本来は覚えない、素材となった仲魔の持っていた魔法を一つだけ追加で覚えさせられるというシステムで、これにより悪魔合体の重要性がかなり上昇しました。
主に優先して覚えさせられるのは回復魔法、次にステータスアップで、特に本作でも重要になるステータスアップを本来覚えない仲魔に覚えさせられるのはかなり大きいです。前述の命中率アップもこれを利用すれば後半の仲魔に覚えさせられる……と言うのは簡単ですが、実際にやるのはかなり綿密な計算が必要となる為お勧めは致しかねます。
また条件が合えば、攻撃魔法の継承も可能になりますが……本作の攻撃魔法の重要性はかなり下に位置する為、あんまり実用性はなかったりします。MPは特技や他の魔法に取っておいた方が、楽に立ち回れるでしょう。
前作にも登場した剣合体は作れる剣の種類が大幅に増え、法則も大分解りやすくなりました。最強剣の位置付けのヒノカグヅチが作れるのもそうですが、その過程で作り出せる剣もかなり強く旅の助けとなってくれます。
ただ使える属性が限られている剣が多めなのが、唯一の難点でしょうか。折角剣を強くしたのに属性が違っていて装備出来ない……という悲劇を防ぐ為にも、事前調査は怠らないようにしましょう。
恒例の属性の変わる運命の選択は、本作にも頻繁に用意されています。前作と比べるとニュートラルのまま維持しておける選択肢が増えたのが、やりやすくなった点でしょうか。
とは言え本作は前作と比べるとかなり早い段階で最終属性が決定してしまう為、旅路もそれだけ困難なものになります。どの属性で固定されてもいいように、仲魔選びは慎重に行う事をお勧めします。
ゲームバランスには少々難があり致命的なバグも存在する本作ですが、全体的に見れば前作の正当進化といった感じでより奥深くなった悪魔合体に没頭するプレイヤーも多く現れた事でしょう。本シリーズのシステムは次作、「真・女神転生if…」で一旦の完成を見る事となります。
とりあえず、今回はこれにて。