第四十六夜 マリオのピクロス
一つ、ゲームの話でもしようか。
デジタルゲームではなく雑誌などのアナログのパズルに、お絵描きロジックというものがあります。お絵描きロジックとは、縦横に並んだヒントの数字を元にマス目を塗り潰し、隠された絵を完成させるといった形のパズルです。
パズル雑誌を好んで購入する人以外殆ど知る者のないこのパズルを、任天堂はデジタルゲームで再現しようと試みます。ゲームならではのギミックを加え、子供でも楽しく遊べるようにして……。
そうして完成したのが、今回ご紹介する「マリオのピクロス」です。元となるお絵描きロジックのルールも含めて、この場でご説明をさせて頂きます。
本作はゲームボーイにて任天堂より発売された、一人用専用パズルゲームです。「ぷよぷよ」シリーズの流行によりパズルゲームと言えば対戦型という風潮が根付いた頃に現れた、時代に逆行した作りのゲームであったと言えます。
ストーリーモードはなく、プレイヤーは用意された二百問以上の問題を解いていく事になります。コースはやさしいピクロス、キノココース、スターコース、タイムトライアルに分かれており、スターコースはキノココースのオールクリア後、タイムトライアルはキノココースとスターコースのオールクリア後にそれぞれ解放される仕組みになっています。
パズルはまず5×5、10×10、15×15のどれかで区切られたマス目の上と左にそれぞれ一列ずつ数字が記されています。これが、パズルを解く為のヒントの数字となります。
例えば左に5と書いてあった場合。その横の列では、5マス続けて連続でマス目を埋めるという事を意味します。
また、1 1 3という風に複数の数字が並んでいる場合。その場合は数字と数字の間は一マス以上空けて、1マス、1マス、3マスと上、または左から順番にその列のマス目を埋めていく事を意味します。
これら数字に一切の矛盾が出ないようマス目を埋め切ると、絵は完成しパズルクリアとなります。基本的に、ゲーム中はこうしてパズルを解く事を繰り返していく事となります。
以上がお絵描きロジックの基本ルールですが、ここからは本作独自のシステムをご紹介していく事と致しましょう。まずパズルを開始すると、ヒント機能を使うかどうかを選択する事になります。
ヒント機能とは、ルーレットで選択した縦横各一列の正しいマス目を自動で塗り潰してくれるという優れものです。自分で塗り潰したい列を自由に決められない事以外はいい事ずくめの機能ですが、これを使ってクリアするとクリア記録に『ヒント使いました』の印が残る事になってしまう為、気になる人は敢えて使わずトライしてみるのもいいでしょう。
タイムトライアル以外のコースでは、まず最初に三十分の持ち時間が与えられます。これを超えてしまうとそのパズルへの挑戦は失敗となり、もう一度最初からやり直さなければならなくなります。
とは言え三十分もあるなら楽勝と、そう思うのは甘い考えです。何故なら正しいマス目以外を塗り潰してしまうとペナルティが付き、持ち時間が減少してしまうからです。
減少幅も最初は二分ですが、そのパズルで間違いを重ねる度に四分、八分とどんどんペナルティが重くなっていきます。失敗クリアに関わらず一度パズルを終えれば減少幅はまた二分からになりますが、なるべく間違いをしない事に越した事はありません。マス目を塗り潰す際は慎重に。
但しタイムトライアルだけはこの限りではなく、間違ったマスを塗り潰しても持ち時間の減少がない代わりに間違っているというヒントも貰えず、最初のヒント機能も使えません。時間も持ち時間が減るのではなく、時間制限がない状態でどこまで早く絵を完成させられるか競うという上級者向けのものになっています。
他にもタイムトライアルでは出てくるパズルの内容も挑む度に変わるので、しっかりと基礎を身に付けた上で挑みましょう。慣れてくれば、パズルの内容にもよりますが一分を切る事も不可能ではありません。
派手な対戦型パズルゲームとは真逆のどこまでもストイックにパズルを解いていくという作りは思考型パズル好きに好評を博し、お絵描きロジックというパズル形態を広く世に知らしめる事に成功しました。この後も任天堂は、「ピクロス」シリーズを次々と世に送り出していく事となります。
とりあえず、今回はこれにて。




