第二十八夜 ドラゴンボール3 悟空伝
一つ、ゲームの話でもしようか。
前回は「ドラゴンボール」ゲーム第二弾、「ドラゴンボール 大魔王復活」についてお話しました。この作品が出てまもなく、バンダイは早くも次の「ドラゴンボール」ゲームを出すべく動き始めます。
そして、約一年後に前作を正当進化させた続編が発売されます。それが今回ご紹介するファミコンソフト「ドラゴンボール3 悟空伝」になります。
それでは今回もごゆっくりと、「ドラゴンボール」ゲームの世界をご堪能下さいませ。
本作は旧バンダイ、現バンダイナムコエンターテインメントより発売されたRPGです。しつこいようですがレベルの概念があるという事で、今回もRPGで押し通させて頂きます。
前作のストーリーはピッコロ大魔王編のみでしたが、今回のストーリーはピッコロ大魔王編をベースに原作における悟空の旅立ち直後からマジュニア(のちのピッコロさん)打倒までをなぞったまさに悟空伝の名に相応しいものとなっています。アニメで言えば、タイトルにZが付くまでのドラゴンボールですね。
基本的なシステムは前作とほぼ一緒な為、ここでは前作からの変更点を中心にご説明させて頂く事にします。まずマップパートですが、前作のように一回の移動毎にカードを引く事はなくなりました。代わりにマス目にイベント効果が付くようになり、ますます双六っぽくなったと言えます。
イベントマスは必ず敵が出るもの、ランダムでアイテムが貰えるもの、体力を減らさず経験値が貰える修行が行えるもの、お助けカードが貰える神経衰弱か手持ちのカード総入れ替えのどちらかが起こるものと様々です。またそれ以外の白マスでも時々敵がエンカウントしてくるので、イベントマスでないからと言って油断をしてはいけません。
また前作では探索パートのクリア毎に新しいルートが増えるだけでしたが、本作ではストーリー進行によってマップの構造が次々と変わっていきます。探索パートが発生する大マスも常に一つの場所に繋がるとは限らず、何もない時はただの通路になったり、同じ大マスが全く違う場所になったりします。これにより、常に新鮮な気持ちでマップを探索出来ます。
移動においても好きな大マスまで一瞬で行けるアイテムが追加されるなど、長い移動が少しでも快適になるように変更がなされています。ただ移動アイテムはどれも使用に条件が付くので、バンバン乱用するような事は難しいのですが。
戦闘は前作同様コミックバトルが採用されていますが本作では悟空と敵が別々のマスに分かれ、互いの動きがより解りやすくなっています。また本作でのそれぞれのモーションの幾つかは原作に実際にあったコマをトレースしているので、原作を読んでいるとより楽しめるかもしれません。
カードの情報は星、技の種類、漢数字と前作同様ですが本作では漢数字も七までになり、また星の数が攻撃権の強さだけではなく攻撃力そのものをも表すようになりました。つまり、星の多いカードで攻撃した方が与えるダメージも増える訳です。
これにより前作以上に、いかに星の多いカードを温存しておけるかが重要になってきます。もっとも温存し過ぎて死んでしまっては元も子もないので、時には思い切りも大切ですが。
また本作においても最も威力が高いのはやはり必殺技ですが、本作では、必殺技が任意で選択出来るようになった代わりにポイント消費制に変わりました。威力の高い必殺技ほど消費ポイントも多く、ポイント回復の手段も限られている為計画的な運用が必要になります。一応ポイントが切れても一番威力が低い必殺技だけは撃てるのですが、肝心のダメージがガクッと低下してしまう為ポイント残量には常に気を付けましょう。
さて本作も前作同様レベル制なのですが、本作ではストーリーの進行度によってレベルの上限が変わるシステムが採用されています。これにより、『亀仙人に出会う前にレベルアップでかめはめ波を習得する』などの矛盾が起きなくなっています。
そして本作では悟空にステータスが付き、レベルアップにより得た成長ポイントを好きなステータスに振り分ける事が出来るのですが……これこそが本作一の曲者要素であり、本作の評価を大きく落としているポイントなのです。
まず悟空のステータスはスピード、パワー、テクニック、タフネスの四つに分かれています。ですがこれらステータスを上げる事で悟空がどう強くなるのか、説明書には一切書いてありません。繰り返します、一切書いてありません。
ちなみに悟空の初期ステータスはテクニックが1、後は全て3です。これだけ見ると一つだけ低いテクニックを上げたくなりますが、それは大きな間違いです。
実はこれらのステータス、内訳は下記のようになっています。スピードは対雑魚戦用の攻撃力と防御力。パワーとテクニックは対ボス戦用の攻撃力。そしてタフネスは対ボス戦用の防御力。
簡単に言えばスピードを多く上げれば雑魚戦が楽になり、それ以外を多く上げればボス戦が楽になるという案配です。パワーとテクニックの違いは正直よく解らないのですが、攻略サイトによればまあ大体どっちも同じという事みたいです。
では、平均的にステータスを上げていけば雑魚にもボスにも強くなれるのか? 答えは否です。
正直ステータスのこの仕様だけでも十分に罠なのですが、本作の真の罠は出てくる雑魚の強さにあります。もし悟空を平均的なステータスにしてしまったが最後、中盤辺りからろくに雑魚にダメージが通らなくなり最終的には必殺技でしかダメージを与える事が出来なくなってしまうのです。原作での悟空の強さが嘘みたいです。
これを防ぐ為には、スピードに多めに成長ポイントを割り振っていく必要があります。流石に全振りはボスに勝てなくなるので駄目ですが、全ポイントの半分くらいはスピードに振ってもバチは当たりません。
そうしてスピード多めに割り振ると、今度は雑魚相手に無双出来るようになります。何とも極端なゲームバランスです。
折角システム周りは順当に進化を遂げたのに、説明不足のステータスと極端すぎるゲームバランスにより前作より難しくなってしまった本作。もしゲームバランスがちゃんとした状態で世に出ていたら……と思うと、何だか惜しく感じます。
とりあえず、今回はこれにて。