第二十四夜 魔界村
一つ、ゲームの話でもしようか。
ファミコン初期の時代。当時のソフトのラインナップは、オリジナルよりもアーケードからの移植作が多めでした。
あのアーケードでの人気作が自宅で!という事で一定の集客は見込めますし、わざわざ一からプログラムを考える必要もない為苦労して作っても売れるかどうか解らないオリジナルゲームよりも安定した収入になると各メーカーはこぞって自社の人気アーケード作品の移植に取り組みました。またファミコンというもの自体がどこまで売れるのか、どこまでのものが作れるのかまだ解らないという背景もそこにはあったりもしました。
ですがそこは当時のファミコンの性能の悲しさ。いくら同時期の家庭用ハードより安くて性能が良かったと言っても当時から大容量を使えたアーケード作品の完全移植はなかなか難しく、大抵は何かしらデチューンが施されたりその代わりにファミコン版独自のシステムを盛り込んだりとアレンジが加えられるのが普通でした。
では、それをしないで無理矢理原作の再現を試みた場合、一体どうなるのでしょうか。
それを教えてくれるのが、今回のテーマである「魔界村」です。
本作は、カプコンにより開発されアーケードで人気を博した同名アクションゲームのファミコン移植作です。プレイヤーは主人公の王国騎士アーサーとなり、魔王にさらわれた姫を助け出すのが目的となります。
ステージは全部で六つ。任意スクロールのステージを駆け抜け、最後に待ち構えるボスを倒しステージ端の扉を開ければステージクリアとなります。
主人公のアーサーは最初鎧を身に纏っており、一度ダメージを受けるとパンツ一枚の裸に。その状態でもう一度ダメージを受けるとミスとなり、残機が1減ります。
本作を語る上で欠かせないのが、その異常とも言える難易度です。ただでさえ難しかったアーケードの難易度をそのまま持ってきた上にボスによって効かない武器を設定するという誰得アレンジ、更にコンティニューは裏技扱いという様々な仕様により難易度は吊り上がりに吊り上がり、今なおファミコンの難ゲーと言えばこれ、と言われるほどの難易度と化してしまいました。
実際筆者も買った当時は一面すらクリアできず、現在に至っても二面までいくのが関の山な状態です。それどころか周囲の誰も一面を抜けられなかったので、筆者が直に三面以降を見た事は一度もありません。
アイテム持ちの敵を倒す事でランダムに手に入る多彩な武器も使ってみれば初期装備の槍が一番使いやすい場面の方が多く、大半は無用の長物です。しかし前述のボスに効かない武器に槍が含まれていたり、特定の武器を持っていないと最終面に辿り着けなかったりと槍一本で通す訳にはいかないのが悩みどころです。
そして本作の難易度を吊り上げている最大の要因。これはアーケード版からしてそうなのですが、全ステージを二周しないとエンディングに辿り着けない事です。
ただでさえ難しいステージを全部で二周。明らかに無茶ぶりです。かの有野課長も、この事実を知って挑戦ギブアップしたぐらいです。
かくして本作は、『アーケードを可能な限り再現しようとする事が必ずしもいいとは限らない』という教訓を筆者に教えてくれたのでした……。
とりあえず、今回はこれにて。