第二十二夜 トルネコの大冒険 不思議のダンジョン
一つ、ゲームの話でもしようか。
ローグライクゲーム、というジャンルがあります。
これは世界最古のコンピューターRPGと言われる「ローグ」のシステムを強く踏襲したRPGの総称で、日本でも一時期一大ムーブメントを巻き起こしていました。それまでの日本産RPGにはなかったシビアなシステムや深い戦略性、それでいて運にも強く左右されるいい意味での不安定さが当時の日本のゲーマーには新鮮に映ったんですね。
今回は、そんなローグライクゲームを日本に知らしめた作品。
スーパーファミコンソフト「トルネコの大冒険 不思議のダンジョン」について触れたいと思います。
実は本作、筆者はリアルタイムでは購入していません。発売から一年ほど経った頃、行き着けの中古ゲーム屋で入手したものです。
しかし本作を実際に遊んでみると『どうしてこんな面白いソフトをすぐに買わなかったんだ!』とばかりにのめり込み、暇を見つけてはプレイするようになりました。このパターンは、この後も何度か経験する事になります。
では内容に触れましょう。本作は旧エニックス、現スクウェアエニックスから発売されたドラゴンクエストシリーズ初のスピンオフゲームです。これまで書籍としては数多くの外伝が出版されていたドラゴンクエストシリーズでしたが、ゲームとしてのスピンオフは本作が初めてとなります。
主人公を務めるのは、「ドラゴンクエスト4 導かれしものたち」において第三章の主人公として登場した武器屋のトルネコ。武器屋とは言いますが武器専門ではどうやらないようで、作中では武器以外の様々なアイテムを取り扱う姿も頻繁に見られる子持ちの妻帯者です。
ドラクエ4におけるトルネコはいわゆるコミックリリーフ的存在で、章の内容もどこかのどかな的なものとなっています。AI戦闘では彼だけが取る行動というのも多数存在し、意外な行動が勇者達の助けになったりもします。
ストーリーはドラクエ4のエンディング後、そんなトルネコが『幸せの箱』というアイテムの噂を耳にするところから始まります。トルネコは妻子と共に『幸せの箱』を求めて旅立ち、遂に『幸せの箱』があるというダンジョンがある村へと辿り着きます。そして息子ポポロにせがまれ、村の名前を答える(これがセーブデータの名前になります)といよいよゲームが始まるのです。
まずトルネコは『幸せの箱』が眠る『不思議なダンジョン』に挑む為の試練として、『ちょっと不思議なダンジョン』をクリアするよう王様から言われます。『ちょっと不思議なダンジョン』は地下10階までの深さで敵やアイテムの種類も少なく、まさに初心者向けのダンジョンと言えます。ここの地下10階に落ちている宝物を見事持ち帰ると、本格的に『不思議なダンジョン』に挑む事になります。
『不思議なダンジョン』への挑戦が開始されると同時に、村にトルネコの店がオープンします。店はトルネコがダンジョンから持ち帰ったゴールドや同じく持ち帰ったアイテムを売る事でだんだん大きくなり、ある段階まで大きくなると持ち帰ったアイテムを幾つか取って置き、次の冒険に利用出来るようになります。この店を大きくする事が、本作のもう一つの目的と言えます。
店を大きくする事で変わっていく、トルネコ一家を取り巻く人間関係も見物です。それぞれの人生を楽しく、時に悩ましく生きる村人達の姿は、きっと長い冒険の癒しとなってくれるでしょう。
ゲームシステムの説明に移ります。まず本作のダンジョンは、挑む度に部屋の配置や落ちているアイテムの位置と種類が変わるランダムダンジョンと言われる方式を取っています。モンスターは目で見る事が可能ですが最初から配置されているものの他にも時間が経つ毎に自然発生し、尽きる事はありません。よって、いかに無駄な戦いを避けて先に進むかが重要になります。
ダンジョンの探索はターン制になっており、一歩歩くと1ターン、敵を一回攻撃すると1ターン、アイテムを一つ使うと1ターン……という風に、トルネコの取るあらゆる行動でターンは経過していきます。トルネコが1ターン消費する度に今いる階のモンスター全てが何か一回アクションを取るので、相手が次にどういう行動を取るか予測しながら動く必要があります。
トルネコが何か行動を取らない限りモンスターも行動を起こさないので、じっくり慎重に考えて行動を取りましょう。なお、その場で体の向きだけ変える、持っているアイテムを確認する、の二つの行為だけはターンを消費せずに行う事が出来ます。
ターンを消費していくと、満腹度という数値が徐々に低下していきます。これがやがてゼロになると、ターン消費毎にHPが減るようになってしまいます。
これを防ぐ為には、ダンジョン内に落ちているパンを食べて満腹度を回復する必要があります。パンは大きさによって満腹度の回復量が異なり、大きいものほどより腹を満たす事が出来ます。
HP回復はアイテムで行う他、空腹状態でなければターン消費で徐々に回復する事が出来ます。満腹度に余裕があり、周囲にモンスターがいなければわざとターンを稼いでHPを回復するのも手です。
さて、普通のRPGと同じく本作も敵を倒し、レベルアップする事でだんだん強くなっていく訳ですが……HPがゼロになる、脱出用のリレミトの巻物を使う、などして一度ダンジョンを出た場合、次にダンジョンに挑む時はまたレベル1からのスタートとなってしまいます。この要素が本作の一筋縄ではいかなさに一役買っておりまして、ここを許容出来るかどうかが本作にハマれるか否かを決めると言ってもいいでしょう。
キャラのレベルが1に戻っても、プレイヤーが覚えたテクニックは消えません。何度も死に覚えたテクニックを駆使して、ゲームのクリアを目指す……これこそが、本作のみならずローグライクゲームそのものの醍醐味とも言えます。
また、本作では自動セーブが採用されております。セーブは1ターン毎に行われ、『さっき行動失敗したからやり直し』といった事は一切出来なくなっています。
この事が本作のシビアさを一層増長させ、クリアの難易度を上げています。人生にやり直しは効かない、という教訓なのかもしれません。
まだまだ語るべきところはありますがあまり冗長になっても皆様を飽きさせてしまう為、そろそろ筆を置かせて頂く事とします。それでは、最後に一つだけ。
『1000回遊べるRPG』は、伊達じゃない。
とりあえず、今回はこれにて。