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第二百二十五夜 SIMPLE DSシリーズVol.16 THE さがそう不思議なこんちゅうの森

一つ、ゲームの話でもしようか。



「SIMPLE」シリーズというシリーズを皆様、覚えておいででしょうか。その名の通り低予算で作ったシンプルなゲームを低価格で売るという、D3パブリッシャーによるシリーズです。

低価格でソフト提供が可能になったプレイステーション・プレイステーション2の黄金時代を象徴するシリーズで、ある種の実験場にも似た空気を漂わせていました。低予算である都合上大半は凡ゲー・駄ゲーといった様相でしたが、時に「地球防衛軍」や「お姉チャンバラ」といったクオリティの高い人気作を輩出する事もあり、その様はまさに玉石混淆という言葉がピッタリでした。

ダウンロードでソフトが購入出来るようになってからはダウンロード専売に主戦場を移し、細々と続いてきた「SIMPLE」シリーズでしたが、2016年を最後に発売は途絶え、今では「SIMPLE」シリーズの名を冠する新作はなくなってしまいました。但し低価格ソフトの販売自体は、今も行ってはいるようです。

今回はそんな「SIMPLE」シリーズの一つ。玉石混淆の『石』の方。「SIMPLE DSシリーズVol.16 THE さがそう不思議なこんちゅうの森」をテーマにお送りします。


本作はニンテンドーDS中期、D3パブリッシャーよりニンテンドーDSにて発売された3DアクションRPGです。ざっくり言うと戦闘が格ゲーになった「ポケモン不思議のダンジョン」。

ケントとチズ、二人の兄妹を操作し、こんちゅう達を捕まえて『こんちゅうずかん』を完成させるのが目的。以下はストーリー。


ケントは『こんちゅうハンター』として活躍する父が大好きな少年。こんちゅうハンターとは、森を荒らす凶暴なこんちゅう達を捕らえ『こんちゅうずかん』に収録する事が仕事のヒーロー的存在。父が今までに捕らえたこんちゅうが収録されたこんちゅうずかんは家にあり、父が留守の間、妹のチズと共にこんちゅうずかんを眺めるのがケントの習慣だった。しかし……ある日いつものように二人がこんちゅうずかんを眺めていると突然こんちゅうずかんが光り輝き、何と収録されていたこんちゅう達が全部逃げ出してしまう。空っぽのこんちゅうずかんを前に、途方に暮れる二人。もしこの事が留守中の父にバレたら、手酷いお仕置きをされてしまう……。そこで二人は逃げ出したこんちゅう達を自分達の手で捕らえ、父が帰ってくるまでにこんちゅうずかんを元通りにする事を思い付く。お仕置きから逃れる為の二人の冒険が、今幕を開けた――。


ちなみにオールクリアしても、何でこんちゅうずかんからこんちゅう達が逃げ出せたかは謎のままです。そこハッキリさせとかないと、また同じ事が起こるのでは……。


本作のプレイヤーキャラは二人。兄のケントと妹のチズです。

但し一周目はケントのみしか使えず、チズが使用可能になるのは二周目から。一度チズが使用可能になった後は、自宅のベッドでいつでもプレイヤーキャラを切り替える事が出来るようになります。

体力と満腹度が個別管理である事以外性能に全く差はない二人ですが、ケントプレイ時にのみ、チズプレイ時にのみ現れるこんちゅうというのがそれぞれ存在します。この為どちらか片方だけ使っていても、ずかんは完成しないようになっています。

ちなみに所持アイテムはプレイヤーキャラを切り替えても受け継がれるので、片方がアイテムを掻き集めてもう片方に渡すといったプレイも可。本作にはレベルの概念がないので、効率的に二人を使い分けていきましょう。


と前提を語り終えたところで、本作の問題点を一つずつ挙げていきましょう。ハッキリ言って本作は、「SIMPLE」シリーズである点を考慮してもかなり出来が悪い方です。


まず一つ目、持てるアイテムの数が少なすぎる。本作にはローグライクゲームの要素もありまして、基本的にアイテムは現地調達となります。

だと言うのに、本作で持てるアイテムの総数はたったの七つ。一般的なローグライクゲームの二十個ですら足りないのに、その半分以下とあっては……。

その癖ダンジョン内では、結構な頻度でアイテムが手に入ります。こんちゅうを捕らえずに倒すと必ず何らかのアイテムを落とす仕様も、それを助長させています。

トドメにアイテム使用の際は、いちいちタッチペンでアイテムを選んで手に持たせないといけないという面倒臭さまでプラス。ボタン操作で使えるようにしてくれよ……。


二つ目、回復アイテムの意味が薄い。本作では体力と満腹度に、それぞれ大中小の三つずつの回復アイテムが存在しています。

回復方式は割合回復となっており、小は25%回復、中は50%回復、大は100%回復となっています。この為「風来のシレン」シリーズの薬草のような、後半は大して役に立たない回復量になるアイテムというのはとりあえずは存在しません。

しかしマトモにこれらアイテムを回復に使うと、すぐに立ち行かなくなります。こんちゅうから受けるダメージは最初から高めで軽減手段も少なく、満腹度も異様に減りが早い為一フロアまともに探索するだけで0になってしまうからです。

ではどうすればいいのかと言うと、最大値上昇に使えばいいのです。本作も一般的なローグライクゲーム同様、体力または満腹度が満タンの時に回復アイテムを使えば最大値が上昇するようになっています。

というか本作は明らかに回復アイテムを最大値上昇に使う事を前提にバランスが取られており、後半ダンジョンに無強化状態で挑もうものならあっという間に死にます。本作は死んだらゲームオーバーで最後にセーブしたところからやり直しなので、体力と満腹度の最大値を上昇させる事は必須レベルです。

つまり本作の回復アイテムは回復の為ではなく、ドーピングの為にあるのです。何という発想の転換。

この為ただでさえ持てるアイテムが少ない事もあり、元気なうちに即回復アイテムを使う兄妹の姿が。回復アイテムって何だったっけ。

なお本作ではいつでもダンジョン内から家に帰れる為、これを利用して回復アイテムが溜まったら即家に帰って両ステータスを全快にし、ダンジョンに入り直して一気にステータス強化という芸当が可能です。……そこまでさせるなら最初からドーピングアイテムとして作れよ。


三つ目、捕獲出来るこんちゅうの種類が少ない。本作、表向きは捕獲出来るこんちゅうの種類は243種類としています。

しかしその大半は、前に出たこんちゅうの色とモデルをちょっと弄っただけの『α種』『β種』とかいう捏造こんちゅう。更に各ダンジョンで待ち受けている三匹のボスも捏造なので、実在のこんちゅうはたったの80匹しかいない計算です。

そんなこんちゅう達を集めて完成させるこんちゅうずかんも、ただ作中のモデリングと出てくる場所が解るだけという味気ないもの。多くの人がこの手のゲームに期待するであろう解説などは一切ありません。

後半になると前述の捏造こんちゅうしか出なくなるので、『次は何が出てくるんだろう』というワクワク感も皆無。ただの色違いを回収していくだけの作業と化します。

捏造じゃない方のこんちゅうはそれなりにきちんと実物の特徴を反映しようとした努力の影も見えるのですが……。途中で面倒臭くなったんだろうか。


四つ目、戦闘が単調。前述通り、本作ではこんちゅうとの戦闘に突入すると格ゲーに切り替わります。

まずプレイヤーキャラとこんちゅうが今いるエリアに閉じ込められ、どちらかの体力が0になるかこんちゅうの捕獲に成功するまで殴り合う。一度戦闘に突入したら逃げるのは不可で、こんちゅうも途中で逃げ出す事はありません。

これの何が問題なのかと言うと、出来る事が非常に少ない。まずこちらの取れる行動は威力は低いが出は早い弱攻撃、出は遅いがガードを崩せ威力も高い強攻撃、ガード、ジャンプ……のみ。いわゆる必殺技の類は一切ありません。

対するこんちゅうの行動も弱攻撃、強攻撃、ガードのみ。ジャンプすらしない。

こちらの弱攻撃はタイミング良く当てると三発までの連続攻撃になり、威力も上昇します。これ以外にコンボ的なものは存在しません。

まずこんちゅうは、こちらが弱攻撃をすると即座にガードを始めます。それを崩そうと強攻撃をしようとすると、途端に猛烈な勢いで弱攻撃を連発してきます。

それを防ごうとガードすれば、素早く強攻撃を繰り出しこちらを吹き飛ばします。つまり隙がない。

一見八方塞がりですが、ガードされても構わず弱攻撃を繰り返していればこんちゅうがそのうちガードを解くのでそこが狙い目。というかこれ以外でまともに攻撃が当たった試しがない。

更に言うと強攻撃は一発当てた時点でこんちゅうが吹き飛ぶし、ジャンプ攻撃もあるけど連続攻撃には繋がらない上威力も弱いので、弱攻撃で連続攻撃を行うのがこんちゅうに一番大きくダメージを与えられる手段です。戦略性? そんなものはない。

ちなみにこんちゅうの動きは、テントウムシが弱攻撃でもこちらを吹き飛ばせるという点に唯一の個性があるぐらいで後は空飛んでようが何だろうが全部前述の通り。ボスですら一緒。

即ち本作の戦闘の流れは、全てのこんちゅうにひたすら弱攻撃を繰り返すだけの酷く単調なものという事になります。ストレートに言ってしまえば、ただの作業。

そしてこっちが与えるダメージを増やせる手段は限られている上どれも永続的ではないのに、先に進む度こんちゅうの体力はどんどん増えていく。この為作業感もより強くなっていく事に……。

唯一の救いはこんちゅうがいる事を示すシンボルは基本動かない為、こちらから近付かなければ戦闘にはならないという事。まあ通路のど真ん中に陣取られるなど、戦闘を避けられないパターンも時にはありますが……。


五つ目、こんちゅうの捕獲率が低い。こんちゅうとはただ戦うだけでなく、捕獲もしていかなければ真のエンディングを見る事は出来ません。

こんちゅうを捕獲するには、『ムシカゴ』というアイテムが必要です。こんちゅうの体力が半分以下になると体力ゲージが点滅を始めるので、その時ムシカゴをこんちゅうに当てるとこんちゅうごとに決まった確率で捕獲出来るというシステムです。

しかしこのムシカゴ、なかなかこんちゅうが捕まらない。最初のダンジョンですら、深層ではちょいちょい失敗するようになる。

最後の方など、例え所持アイテムを七個全部ムシカゴで埋めても全部失敗する事もザラ。この有り様なのに、ムシカゴの上位に当たるアイテムなどは全く存在しません。

一応擁護するなら、一定時間捕獲率を上げるアイテムというのはあります。残り体力が低ければ低いほど、捕獲率が高くなるという要素もあります。

が、元の捕獲率が低すぎて効果が全然実感出来ないという……。簡単に捕獲出来たらすぐゲームが終わるという理屈は解りますが、流石にこれはやり過ぎ。

もっと言うとムシカゴを投げてから捕獲判定が出るまでの間はこんちゅうだけでなくプレイヤーキャラまで動きが完全に止まるので、捕獲判定が出るまでの間にムシカゴを用意し直すという事も出来ず失敗時のリカバリーが困難。しかもこんちゅうにガードさせて時間を稼ぐつもりで攻撃を放ったら、その時に限ってこんちゅうがガードしてくれず倒してしまって苦労が水の泡、なんて事も……。

これを考えると、捕獲に使うアイテムが数種類あり値段が高くなるほど捕獲率が上がる「ポケモン」や、仲間になるかは確率とは言え全力で倒してしまって構わない「ドラクエモンスターズ」はまだ有情だったんだなと……。まあそもそも、出来る事が捕獲だけの本作とこの二つを比べるのが間違ってますが。


六つ目、町の意味がない。本作では拠点である自宅を出ると、まずは町マップに移動します。

しかしこの町、最初に基本アイテムが落ちているだけで後は何もなし。家はあっても自宅以外には入れないし、外を住民が歩いている事もありません。

ぶっちゃけこの町マップの意味は前述の基本アイテム配布とどのダンジョンに挑むか選ぶだけ。アイテムは最初に持たせておけば済むだけの話だし、行き先なんて選択肢で決めればいいだけだから完全に容量の無駄。

この町マップ作ってる最中に、何かおかしいとは思わなかったんでしょうか。町のポリゴンモデルだって、容量を随分食う筈なのに……。


七つ目、マップも単調。本作にはローグライクゲーム要素もありますので、当然マップは挑む度に変化します。

しかしその変化の度合いが凄く薄い。本作ではどのダンジョンも4×4のエリアに区切られ、その一つ一つの構造が部屋なのかただの通路なのか変わるだけとなっているのです。

いつ挑んでも、どこに挑んでも変化は背景が変わったり時刻が変わったりと見た目だけで構造は全く同一。これで飽きるなという方が無理。

低予算ゲームにあまり多くを望むのは無意味と解ってはいますが、せめてダンジョンごとに広さを変えるぐらいはして欲しかった……。それはそれで後半の作業感が更に増すかもしれないけれども。


こんなダメダメな本作ですが、唯一褒められるところがあるとしたらストーリーデモの兄妹の絵は可愛い事でしょうか。ただチズはともかく、ケントはちょっと頭が大きすぎる気もするけど……。


低予算でも低予算なりに頑張った作品というものは見ていても工夫を感じるものですが、本作にはそういった点は殆どなし。もっともこの頃の「SIMPLE」シリーズは、既に良作から縁遠くなって久しくなっていたのですが……。



とりあえず、今回はこれにて。

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