第二百十五夜 戦国BASARA バトルヒーローズ
一つ、ゲームの話でもしようか。
先週ファミ通で、「戦国無双」シリーズの十五周年記念特集が組まれていました。初代「戦国無双」が出てからもうそんなに時が経ったとは、筆者も歳を取る訳です。
しかし一方で、こうも思いました。『そういえばカプコンのアレの方は、もう随分音沙汰がないなあ……』と。
そう、今回取り上げるのは、カプコン版「無双」と言われた「戦国BASARA」。そのシリーズ作品の一つになります。
「戦国BASARA」と言えば、「無双」シリーズ以上にキャラがはっちゃけている事で有名なシリーズ。そしてマナーの悪いファンが非常に多い事で有名なシリーズでもあります。
全盛期の頃は、そんなマナーの悪いファンを公式が助長させるような反応をしたとして問題視をされた事も……。とにかく格ゲー化、アニメ化、舞台化、ドラマ化、更には実写映画化と非常にマルチな展開を見せたこのシリーズでしたが、肝心の本編のリリースは何故か鈍くなっていき、2016年発売の「戦国BASARA 真田幸村伝」を最後にリリースは途絶え話題にも全く上らなくなってしまっています。
今回はそんなシリーズの(まともな)ファンに『これ買ったよ』と言うと、十中八九『何でよりにもよってそれ買っちゃったのさ……』と言われた問題作。いや、それでもこの後に出た「戦国BASARA クロニクルヒーローズ」よりよっぽどマシではあるという恐ろしい事実があったりするんですが。
その微妙さ故にウィキペディアに個別記事もなく、攻略wikiですら最低限の情報しか載せてないという紹介者泣かせ。「戦国BASARA バトルヒーローズ」です。
なお諸事情によりソフトが今手元にない上情報収集も上記の有り様なので、情報はまたもあやふやな記憶頼みで非常にフワッとしてます。またも間違ってたらすみません。
本作はPSP中期、カプコンよりPSPにて発売された3Dアクションゲームです。『「BASARA」なら無双アクションじゃないの?』と思った皆様、そう記さない理由は後述。
モードは『ストーリーモード』『ミッションモード』『フリーモード』の三つに分かれており、どれかを選択して遊ぶ事になりますが……。それをご説明する前に、まずは下の項目をご覧下さい。
さて、本作を語る上で欠かせない最大の問題点。それは、『爽快感が全くない』という点です。
本作ではハードの制約上か、画面上にプレイヤーキャラを含めた自陣営が三人、敵陣営が三人までしかそれぞれ登場出来ません。敵陣営が三人以上いる場合は、1~3人で構成された敵部隊を一部隊ずつ全滅させていく事になります。
この説明だけで無双アクションを遊んだ事のある方は即問題が理解出来た事と思いますが、要するに本作、『わらわらと大量に現れる敵を纏めてぶっ飛ばす』という無双アクションの持ち味を完全に殺しているのです。上で無双アクションと書かなかったのはそういう事。
それでいてボス武将だけはこちらが勝利条件か敗北条件のどちらかを満たすまで何度倒そうが即蘇ってくる迷惑仕様。嫌がらせか。
更に言うと本シリーズには敵に攻撃を当てたり逆に敵からダメージを喰らったりする事で徐々にゲージが溜まっていき、最大まで溜める事でド派手な『バサラ技』が使用可能になる『バサラゲージ』というものがあるんですが本作ではこれもオミット。代わりに「戦国BASARA2」で追加された『戦極ドライブゲージ』が、『バサラゲージ』と同じ溜まり方をするように仕様変更されました。。
しかしこの『戦極ドライブ』の効果、使用中は基礎ステータスが上がり敵の攻撃に怯まなくなる、専門用語で言えばスーパーアーマー状態になるという単体ではイマイチ地味なもの。しかも「戦国BASARA2」では一定数敵を倒しての発動だった為事実上プレイヤー専用だったこの能力を、本作では敵もガンガン使ってくるときた。
つまり本作のプレイは『ちょっとずつ現れる敵をちまちま倒し』『無限沸きしてくる上時々スーパーアーマー状態になるボス武将の猛攻を必死に耐え』『ひたすら地道に勝利条件達成を目指す』の繰り返しとなります。如何に爽快感に欠けるかお解り頂けたでしょうか。
トドメに使用出来る技も、完全固定で一切のカスタマイズ不能。それだけならまだしも、敵が少数出現になったにもかかわらずどの技も大多数をぶっ飛ばす用の技のままなので、本作ではどの技も敵に当てにくく使いづらいという状態に……。
この時点で既にかなり駄目なんですが、次からは、各モードの駄目なところについて触れていこうと思います。ちなみにこんだけボロクソ書いてますが、これでも筆者は本作を割と熱中して遊んだ方です。
『ストーリーモード』について。ここでは選択した武将をプレイヤーキャラとした、全六章からなるシナリオをプレイしていきます。
最初に選択出来る武将の数は十名のみですが各武将のストーリーモードをクリアしていくにつれ、次第に選択出来る武将の数は増えていきます。そして最終的には計三十名の、「戦国BASARA2 英雄外伝」までに登場した松永久秀以外の全ての武将のストーリーモードが遊べるようになります。
この点は、本作唯一と言っていい評価点。PSP中期のソフトでこれだけ多くの武将にストーリーモードを用意したのは、なかなかのボリューム。
但しムービーは一切なく、エンディングも一枚絵が表示されるのみ。ここを是とするか否とするかは人によるかも。
プレイヤーキャラ選択後は遊ぶシナリオの難易度を決めます。難易度は三段階あり、高いほど敵武将の装備と思考パターンが強化されるようになってるんですが……この上昇幅が半端じゃない。
ただでさえ装備で攻撃力と体力が上がっているのに、難易度一つ上がるだけでガードや回避の反応速度が急上昇するからたまらない。最高難易度なんて、例えるなら出てくる敵武将が全員呂布になったような感じになってる。
難易度が変わろうがシナリオの内容は一切変わらないので嫌ならやらなきゃいいだけなんですが、そうも言っていられないのが本作。何故かと言うと店売り装備を全開放するには、ストーリーモードの最高難易度の第六章まで進める事が必須になっているからです。
つまり装備を買い揃えたきゃ、何が何でも最高難易度に挑むしかない訳で……。一人でもそこまで到達すれば、全員の装備が売りに出されるのだけが不幸中の幸い。
後は純粋にシナリオの内容で言えば、ギャグシナリオがちょっと多めなのが人を選ぶかなというところ。特に浅井長政とか「英雄外伝」でああだったのに、本作では相当アレな感じのシナリオになってるから……。
『ミッションモード』について。ここでは伊達政宗・真田幸村・前田慶次の三人の中から一人を選び、数々のミッションをこなしながら天下統一を目指す事となります。
三人以外の武将は時に天下統一を阻むライバルとなり、時に軍門に下り頼もしい仲間となります。誰のルートで誰が仲間に加わるかはあらかじめ決まっており、自由なスカウトは出来ません。
このモードの何が問題かというと、ズバリ、難易度が高すぎる事。下手な人は中盤辺りから、最も評価が高い『完勝』どころかミッションクリアそのものが難しくなります。
筆者の場合、『ガードも回避も行わない最弱設定CPUキャラを一度も死なさずに敵を全滅させろ』で詰まって投げました。モブ兵になぶり殺される小十郎とか見たくなかったよ……。
ちなみに各ミッションはキャラ指定がされてなければ誰を出すのも自由なんですが、ミッション中に受けたダメージはそのまま蓄積される事となり、体力を回復させるにはステージ内にあるつづらを壊すと出てくる回復アイテムを取るかミッションに出さずに休ませるかしかありません。この為下手くそは、各武将の体力管理にまで悩まされる事になります。
あとミッションをクリアする毎に各地の勢力図は変化していき、一見シミュレーションゲーム要素も匂わせますが、実際は勢力図の変化パターンは完全固定で戦略性は全くありません。というか一度出現したミッションは何度でも繰り返し挑めるという都合上、既に滅んでいる勢力ともお構いなしで戦い始めるし……。
『フリーモード』について。このモードはいわゆる対戦モードで、常時二対二のタッグバトルで戦う事になります。
プレイヤーはまず東軍、西軍に二人ずつ分かれたプレイヤーの誰を人間が操り、誰をコンピューターが操るか決めます。なお当然ですが、二人以上でプレイするならその人数分のPSP本体と本作のソフトが必要となります。
使用出来るのはストーリーモードと同じ三十人の武将。こちらは最初から全員が使用可能になっています。
参加する人数、使用する武将をそれぞれ決めたら全プレイヤーの装備、コンピューターが操るプレイヤーの場合は思考パターンの強さ、そして両陣営の戦力ゲージの初期値をそれぞれ設定します。この戦力ゲージについては後述。
なお例えコンピューターが操るプレイヤーであっても、装備可能なのは購入済みのものだけです。その為武将によって持っている装備に差があったりすると、それだけでハンディキャップ戦になったりします。
最後にどのステージで戦うかを決めたら、対戦スタートです。本作の対戦形式は次の通り。
まず前述通り、本作では体力が0になっても即脱落とはなりません。各プレイヤー武将にはそれぞれ『コスト』というものが設定されており、プレイヤー武将が倒れるとそのコストの分、所属陣営の『戦力ゲージ』が減少していきます。
戦力ゲージとは文字通り、自軍の戦力がどれだけ残っているかの指標です。フリーモード以外の二つのモードにも存在しており、デフォルト数値は1000となっております。
コストは武将の元々の強さと装備の強さを合わせた数値で算出され、強い装備をさせるとそれだけコストも高くなり、戦力ゲージが減りやすくなります。そして相手よりも先に戦力ゲージが0になると、例えもう一人のプレイヤー武将が健在でもその陣営は敗北となります。
ちなみに戦力ゲージが0にならない限りはプレイヤー武将は何度でも復活可能で、溜まった戦極ドライブゲージも倒れる前の状態のまま継続します。よって一度倒れたとしても十分巻き返しは可能であり、実力が互角の者同士で対戦する分にはなかなか面白いシステムだと言えます。
そう、要は対人戦前提のシステムで従来の無双アクションみたいな事をやろうとするから本作は歪な事になっているのです。いっそ割り切って3D格闘ゲームという形で売り出していれば、本作の評価はまた違ったのではないでしょうか。
もっとも格ゲーとしてみた場合も問題が全くない訳ではなく、自分がしっかりしていても味方がやられれば負ける可能性があるというのはそれはそれでストレス。本作は一人では絶対出撃出来ない仕様になっているので……。
余談ですが本モードでは戦力ゲージの設定を∞にする事も出来、両陣営の戦力ゲージを∞にすると自主的に降参しない限り永遠に対戦が終わらなくなります。この辺もうちょっと何とかならなかったのか……。
とりあえず言いたい事は、何でこれでイケると思った、それに尽きます。せめて全体的な難易度がもう少し低ければ……。
とりあえず、今回はこれにて。




