第二百十二夜 MOTHER1+2
一つ、ゲームの話でもしようか。
スーパーファミコンソフト「MOTHER2 ギーグの逆襲」をプレイし、その世界観に魅せられた筆者でしたが、その前作である「MOTHER」をプレイした事は長らくありませんでした。「MOTHER」の中古はあまり出回っておらず、たまに見つけても値段が高かったのがその理由です。
そんな筆者も大人になり、自分で金を稼ぐ歳になりました。そしてある日中古屋で見つけたのが今回のテーマ、「MOTHER1+2」。
「MOTHER」と「MOTHER2」が一本で遊べて、しかも携帯機でプレイ出来る。結構いいお値段がしましたが今なら買える!と購入即決。かくして「MOTHER1+2」は我が家にやって来たのでした。
よって今回の内容は「MOTHER」の紹介であり、「MOTHER1+2」の紹介でもあります。基本的には実際プレイした「MOTHER1+2」ベースの内容になってますので、そこら辺はご了承下さい。
それでは今回のご紹介のはじまり、はじまり……。
本作はゲームボーイアドバンス中期、任天堂よりゲームボーイアドバンスにて発売されたRPGです。前述通り、ファミコン中期に発売されたファミコンソフト「MOTHER」とスーパーファミコン中期に発売されたスーパーファミコンソフト「MOTHER2 ギーグの逆襲」をカップリング移植したソフトです。
「MOTHER」はオリジナル版より大幅に手を加えられ、公式には未発売で終わった海外版に近い内容になっています。「MOTHER2」は逆にバグ修正以外はほぼベタ移植ですが、音源だけはハードの都合で大幅に劣化しています。
以下は「MOTHER」のストーリー。「MOTHER2」のストーリーは該当回に紹介を譲ります。
アメリカの片田舎にある町、マザーズデイ。この町に住んでいた一組の夫婦が、ある日行方不明になりました。夫の名は、ジョージ。妻の名は、マリア。夫のジョージはやがて帰って来ましたが、今までどこに行っていたのか誰にも何も語る事なく不思議な研究に没頭するようになりました。妻のマリアは、とうとう帰っては来ませんでした。それから時が経ち、現在のマザーズデイの町。その郊外に、一人の少年が両親と妹二人と一緒に住んでいました。なかなか家に帰れない父親と電話で連絡を取り合いながら平和に暮らしていた少年でしたが、ある日そんな少年の家に異変が起こります。何と電気スタンドが独りでに浮き上がり、少年に襲い掛かってきたのです。何とか電気スタンドを撃退し部屋の外に出た少年でしたが、同様の異変は家中で起こっていました。少年が妹の部屋にあった人形を撃退すると、漸く異変は治まります。そしてその人形から流れてきた不思議なメロディ……。そのメロディに導かれるように、少年は地下室にあった曾祖父ジョージの日記を手に旅立つ事を決意します。果たして少年の行く手に、何が待ち受けているのでしょうか――?
「MOTHER2」では『アメリカっぽい架空の国』となっている物語の舞台ですが、「MOTHER」ではしっかり舞台がアメリカと明言されています。もっとも町の名前は全部架空ですが。
「MOTHER」について。「MOTHER」では、パーティー人数の最大が三人となっています。
主人公以外のパーティーメンバーにはそれぞれデフォルトネームが存在しますが、オリジナル版の時点ではゲーム内では解らないようになっています。ここではデフォルトネームを前提として、主人公も含めた各キャラの特徴を挙げていきます。
主人公は攻撃も回復もいける万能型。直接戦闘力が高く、PSI(本作の魔法)は回復・補助系を中心に習得していきます。戦闘の要となる存在故に、主人公の戦闘不能=全滅確定になりがち。
ロイドは壊れたアイテムを持っていると、ホテルに泊まった時にそれを直してくれる事があります。戦闘面ではPSIが使えず直接戦闘力も然程高くないので、大抵アイテムを買い込んでぶっぱする羽目になる。でもクリアの為には必ず仲間にしないといけないキャラ。
アナは直接戦闘力は弱いですが、それを補って余りある豊富なPSIの種類が強み。主に習得するのは攻撃系ですが、回復・補助何でもいけます。仲間にした後はずっとパーティーにいてくれますが、一方で必ずしも仲間にしなくてもよかったりもする。
テディはロイドと入れ替わりで一時的に加入するキャラ。PSIを使えない事を差し引いてもなお頼りになるずば抜けた直接戦闘力を持ち、高性能の彼専用装備まで存在するという優秀さ。ロイドには専用装備ないのにね。
ピッピはある場所から救出し自宅に送り届けるまでの間だけ共に戦ってくれるスポット参戦キャラ。仲間でいる期間が大変短いので基本レベル上げも装備の買い揃えもする事なく別れるキャラですが、意外にも直接戦闘力のポテンシャルは主人公並なんだとか。まあ別れと引き替えに貰えるアイテムが必須級のアイテムなので文句は言えまい。
またパーティーメンバーには数えられませんが、戦闘中にオートで一緒に戦ってくれるキャラも存在します。敵は彼らにも攻撃を行い見えないながらHPも存在しますが、こちらから回復などのサポートは一切してやれません。
フライングマンはマジカントという場所限定でついてきてくれるキャラで、全部で五人存在します。HPが0になるか同行させたままマジカントを出ると死に、家に墓が建てられます。ちなみに途中で別れる事は不可能なので、連れてった時点で死亡確定。
イブは終盤ある場所に行くとついてきてくれるキャラで、テディをも超える圧倒的な火力で敵を殲滅していきます。攻撃力だけでなく防御力も非常に高く、終盤の敵の攻撃ですら傷一つ付きません。しかしある敵との戦闘で……。
主人公とアナの使えるPSIの種類は続編の「MOTHER2」とは異なる部分も多く、説明書や攻略サイトなしでプレイすると大いに戸惑う事になります。特に「MOTHER」の時点ではヒーリングで風邪の状態異常が治らない点は要注意。
「MOTHER2」の主人公ネスは時々ホームシックになるというある意味病を抱えていましたが、「MOTHER」の主人公にも持病があります。それは喘息。
町中でエンカウントする場所の場合、敵として暴走車が出てくる場合があります。暴走車は排気ガスを撒き散らす攻撃をする事があり、それを喰らってしまうと主人公のみ喘息の発作が起こってしまうのです。
この状態異常は病院に行くかアイテムのぜんそくスプレーを使う事で治りますが、その間は主人公がほぼ無力化されるので危険極まりない事に。暴走車が敵として出てくる頻度がそう高くない事と、ネスのホームシックと違ってアイテムでも何とかなるのが救いでしょうか。
そしてその喘息以上に厄介な状態異常がこれ。風邪。
風邪の状態異常は「MOTHER2」にもありましたが、そちらでは一番弱いヒーリング一発で治せるごく軽い状態異常でした。しかし「MOTHER」の風邪は、それとは比べ物にならないくらい凶悪です。
まず敵との戦闘では、風邪になる事はありません。まあある意味、常に体を動かしている健康な状態ですし。
ではどういう時に風邪になるのかというと……その辺の住民との会話。しかも一度で漏れなく全員に感染。
その辺の住民と会話して情報を得るのがRPGの基本なのに、「MOTHER」ではそれを行うだけで状態異常にさせられるときた。何という罠。
しかもこの風邪、病院に行くかアイテムのうがい薬を使うかしないと治らない。それもどっちも結構地味に痛いお値段。
風邪を放置したまま移動すると、HPはごりごり減っていく。そしていずれは力尽き……。
唯一の救いは、風邪にさせられる地域が限られている事。後半に辿り着く町では風邪の住民はいない為、安心して普通に会話出来ます。
「MOTHER」はアイテムも特徴的なものが多いです。例えばこれ、パン。
このアイテムを使うと食べてHPを回復するのではなく、「ヘンゼルとグレーテル」よろしく千切って歩き出します。千切られたパンは『パンくず』というアイテムに変わり、そのパンくずを使うとパンを使った場所まで一瞬で戻ってくる事が出来るのです。
どれだけ長い距離を歩こうとも戻ってくる時は一瞬という、それどんなパンくずなんだと言いたくなる代物なんですが、「MOTHER1+2」ではその性質上バグを誘発する原因になっていた為か存在自体が削除されてしまいました。ちょっぴり残念。
そしてこれ、愛の缶詰と呪いの缶詰。この二つはクリアとは全く関係のないアイテムで、ある場所にいる研究者に『イチゴ豆腐』なる珍妙なアイテムを譲ってあげるとお礼として貰う事が出来ます。
肝心の効果はと言えば、戦闘中に使う事で愛の缶詰は『すき』、呪いの缶詰は『きらい』という言葉をそれぞれ発する……だけ。しかもこれ、使い捨てで一回使ったらなくなります。
入手に手間を必要とするのに、使ってみると全くの役立たず……。この辺賛否両論だったのか、続編の「MOTHER2」ではこの手の完全無駄アイテムは必ず手に入る一つだけになっています。
「MOTHER」の戦闘バランスは、終始厳しめです。一人旅の間だけならともかく、仲間が加わってからも厳しい戦闘が続きます。
前半の壁となるのが、ハロウィーンという町にある幽霊屋敷。ここは道が分岐だらけで迷いやすい上に、出てくる敵も手強いものばかり。
特に凶悪な敵が、必ず単体で出現するちまみれゾンビ。単体だからと侮るなかれ、その時点では桁違いの攻撃力と素早さを持ち、しかもクリティカルまでぶっ放してくるという完全な初見殺しキャラなのです。
出会ったら即逃亡は必至。もし逃亡に失敗したら、死者の一人は覚悟しましょう。
そしてラストダンジョン、ホーリーローリーマウンテン。ここの敵がまたどいつもこいつも強い。
このダンジョンには都合二回来る事になるのですが、テディがいてくれる一回目はまだ楽な方。問題は、テディが抜けてロイドが加わる二回目の方。
攻撃力の高いテディがいてもなお辛かった道のりを、それより貧弱なロイドと進まなければならないのです。これはきつい。
しかしこれはまだ序の口で、ダンジョンを抜けた先の山頂近くはテディが例えいたとしても相手にならないくらい強い。途中まではイブが加勢してくれますが、その後は……。
まあラストの展開を考えると、無理に敵と戦う事はないという暗示なのかもしれませんが……。本作ではエンカウントが調整されたという話なので、もしかしたらオリジナル版はもっときつかったのかもしれない。
さて「MOTHER」でよく語り草になる部分としては、ラストの怒涛の展開です。今まで集め続けてきたメロディの意味、そして最終決戦……タイトル「MOTHER」とも深く関わってくるそれは、それらの展開をあらかじめネットで見て知っていた筆者の胸にも強い印象を残しました。
しかしクイーン・マリーが最後のメロディを自力で思い出すという部分が変更されたのは、個人的には改悪だったかも。ゲーム的には楽になる変更だったんですけども。
誰かに教えて貰うだけじゃなく、クイーン・マリー自身の心にもメロディが強く残っていた……。こっちの方が完成したメロディの重要度が増しそうな気がするんですけどもね……。
ここからは「MOTHER2」パートの話。前述通り「MOTHER」パートと違い、「MOTHER2」パートには音質の劣化以外内容の大幅な変更はないんですが……一ヶ所だけ、結構致命的な移植ミスが。それはパワースポットで流れるメロディの、四番目と五番目が入れ替わっているという事。
それでいてメロディを記録する『音の石』に記録されるメロディはオリジナル版のまま。つまり、純粋な移植ミス。
音質劣化だけなら許容したのに、何でメインイベントでやらかしちゃったのか……。これがあるので、本作の「MOTHER2」パートへの評価はちょっと低め。
オリジナル版から遊びやすくなっているところもあれば首を捻るようなところもあり、総じて一長一短というのが最終的な評価か。今から遊ぶにしても、これを選ぶのはちょっとお勧めしかねます。
とりあえず、今回はこれにて。




