表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
206/239

第二百四夜 桃太郎伝説外伝

一つ、ゲームの話でもしようか。



「桃太郎伝説」。ハドソンのRPGシリーズの一つで、かの有名なボードゲーム「桃太郎電鉄」シリーズの前身でもあります。

「桃太郎電鉄」シリーズに比べるといまいち存在感に欠ける本シリーズですが、これが意外と色んな機種で出ていたりします。ゲーマーの間で有名なのは、PCエンジンで出た「桃太郎伝説2」に大幅な追加要素を加えてリメイクしたスーパーファミコンの「新・桃太郎伝説」でしょうか。

今回はそんな「桃太郎伝説」シリーズの中から、一風変わった一本をお届けします。「桃太郎伝説外伝」、どうぞお楽しみ下さい。


本作はゲームボーイ初期、ハドソンよりゲームボーイにて発売されたRPGです。後にPCエンジンとファミコンにも移植され、グラフィックなどが大幅強化される事になります。

全三編のオムニバスシナリオで構成されており、三編はストーリーだけでなく、ゲーム内容も微妙に異なっています。ちなみに今回シリーズの主人公である桃太郎は、脇役として登場するのみになっています。

以下からはそれぞれのシナリオのストーリーやゲーム内容をご紹介。いずれもなかなか個性的な内容となっております。


貧乏神伝説は「桃太郎電鉄」シリーズでもお馴染みのお邪魔キャラ、貧乏神を主人公に抜擢したシナリオ。本作どころかRPG全体で見ても個性の塊で、ある意味本作を象徴したシナリオです。

以下はストーリー。いつもいつも人のお金を盗んで困らせてばかりの貧乏神の元へ、ある日桃太郎がやって来た。どうして人のお金を盗むのかと桃太郎が問うと、貧乏神はお金を盗めばその人が構ってくれて寂しくなくなるからだと答えた。そんな貧乏神に桃太郎は、お金ではなく人の悪い心を盗めば皆が貧乏神に感謝し寂しくなくなると優しく諭す言葉をかけるのだった。時を同じくして、巷では『ぜに王』と名乗る者が人々に法外な金額で農具を売り付け、皆が困り果てていた。そこで貧乏神は桃太郎の教えを胸に立ち上がり、ぜに王を懲らしめる為の『正義の盗み』を行う事にしたのだった。果たして貧乏神の『正義の盗み』はぜに王を懲らしめ、人々を救う事が出来るのだろうか――? といった感じになっています。

本シナリオを一言で表すなら、金。最初から最後まで、徹頭徹尾金、金、金。ここまで来るといっそ潔い。

本シナリオの戦闘はオーソドックスなターン制なのですが、攻撃方法が何と窃盗。敵を無一文にする事で金の呪縛から解き放たれた敵が改心し、円満にサヨウナラするという訳です。

この時盗んだお金は、自分の所持金としてまるっと懐に納まります。この為本シナリオでは、お金が非常に貯まりやすくなっています。

しかしそう簡単にはお金を溜め込ませてくれないのもこのシナリオ。稼ぎが大きい代わりに出費も多く、道中では何かにつけてお金を消費させられます。

特に顕著なのがぜに王のいる村で、ラスボスぜに王の元に辿り着くまでに多額の出費を強いられる事になります。クリアするのにこんなに金が絡むRPG、「ドラゴンクエスト4」の第三章ぐらいしか知らない。

更にこのシナリオ二周目も用意されておりまして、二周目では人々を救った功績が認められた貧乏神が生まれ変わったという設定で以下の三人のうちどれかに主人公が交代する事になります。


福の神は三人の中では最もバランスが取れたキャラ。素早さは低いものの、バランスの取れた術構成が魅力。

ろっかく仙人は福の神ほどの器用さはないものの、敵全体に会心の一撃を加える超強力な「ろっかくの術」を使い放題という攻撃偏重型キャラ。ある意味最強かも。

あまのじゃくは松竹梅の三種類の攻撃方法から一つを選び、更に選んだ攻撃方法の攻撃手段の中から一つがランダムに選ばれ発動するという変わったキャラ。但しこれがどれを選んでも必ずこちらの為になる攻撃が出るとは限らず、逆に不利益を被る事もあるので、ギャンブル性が非常に高い玄人向けのキャラとなっております。


ちなみに誰が主人公になっても貧乏神時代の装備は一切装備出来なくなるしお金も盗まなくなるので、難易度は一周目より確実に上がっています。ラスボスも若干強化されるし。

なお一周目だろうが二周目だろうが、敵は盗みで攻撃せずに(一部盗みを働く敵もいますが)普通にこちらに殴りかかってきます。ある意味正当防衛。


夜叉姫伝説はこちらも「桃太郎電鉄」シリーズにおける司会の桃太郎のアシスタント役としてお馴染み、夜叉姫を主人公としたシナリオです。基本おとぎ話のキャラクターが多い本シリーズにおいて、彼女は数少ないオリジナルキャラとなっています。

以下はストーリー。桃太郎の手によって、地獄を治める地獄王が懲らしめられて一年。すっかり改心した地獄王とその配下の鬼達は、地獄で穏やかな日々を送っていた。そんなある日、地獄を突如侵略者が襲う。それは地獄王の地獄よりも遥かに格上の地獄、マンダラ地獄からやって来たマンダラ王率いるマンダラ鬼の軍勢だった。自分達より遥かに強いマンダラ鬼達の前に、次々と倒れていく鬼達。遂には鬼達のリーダー格であるえんま大王も倒され、地獄王が絶望しかけたその時、地獄王の娘である夜叉姫が立ち上がる。かつて桃太郎から教わった愛と勇気を胸に、残された鬼達と共にマンダラ王に立ち向かっていく夜叉姫。果たして夜叉姫はマンダラ王を懲らしめ、地獄に再び平和を取り戻す事が出来るのだろうか――? といった感じになっています。

本作に収録されているシナリオの中でもストレートにシリアスな本シナリオですが、実はこれのみシリーズ総括のさくまあきら氏原案ではなく、別の人物がシナリオを執筆しているのだそう。その為か全体的な雰囲気が直接話が繋がっている「桃太郎伝説2」ではなく、そのリメイクである「新・桃太郎伝説」の方に似通っている気がします。

シナリオがスタートすると、まずは共に戦う仲間を五人の候補の中から二人選ぶ事になります。仲間が一人だけ、または全く仲間がいない状態でも旅立てると言えば旅立てますが、主人公の夜叉姫は打たれ弱い魔法使い系キャラなのでドM……もとい求道者ではない方は素直に仲間をフルにしておきましょう。

仲間候補は以下の五名。オーソドックスな性能のキャラから風変わりな性能のキャラまで、一通りが揃っています。


あしゅらは術は使えませんが、攻守が共に高めな戦士系キャラ。どんな時でも安定した働きをしてくれるので、彼がいてくれると安心して戦闘が出来ます。その性能に反して素っ裸に薄布を纏っただけの美青年という攻めまくった容姿をしており、時代が進むにつれて流石に問題視されたのか後になってキャラデザそのものが変更されたという時代を感じさせるキャラです。

風神は回復や補助の術を得意とし、直接戦闘力も悪くないという万能キャラ。彼とあしゅらが揃えば、大分楽に戦闘を進める事が出来ます。一度はこれでクリアしてみるのも悪くないかも。

雷神は風神とは対照的に、攻撃の術を得意とします。夜叉姫の攻撃の術と合わせれば素早く敵を殲滅出来ますが、それだけ技(本作のMP)消費が激しくなるのがネック。あしゅら、風神、彼の中から二人を選ぶのがとりあえず鉄板。

はらだしは最初は役立たずと呼んでもいいくらい弱いですが、一定レベルを超えると爆発的な成長を始める超大器晩成型キャラ。そしてシリーズ名物女湯に行く為に必須のキャラでもあります。選ぶなら本作に慣れた頃に。

あまのじゃくは貧乏神伝説に引き続き登場。性能は貧乏神伝説の時と全く一緒で、ギャンブル性の高さも一緒。とはいえこっちは一人旅じゃないだけまだマシかも……。


仲間を決めたら、マンダラ王の待つ地上目指して地獄を上へ上へと登っていく事になります。地下から地上を目指すというのは、当時のRPGとしては珍しい構成だったんじゃないでしょうか。

本シナリオの変わった点として、雑魚敵がよく喋るというのが挙げられます。エンカウントすれば必ず決め台詞を吐き、倒されれば必ず捨て台詞を残します。マンダラ鬼というのは、どうも多弁な種族らしいです。

勿論立ち塞がるボスも個性的。どいつも本作だけで終わらせるのは惜しいキャラをしています。

ストーリーがシリアス気味なのを、こういう部分で和らげようとしたんでしょうか。そこはかとなく漂う緩さとシリアスさとの絶妙な案配が、本シリーズの魅力でもある事ですし。


浦島伝説はシリーズの中ではメイン級のレギュラーキャラと言える、浦島を主人公に据えたシナリオ。心優しい浦島らしく、ストーリーもどこか優しいものになっているのが特徴です。

以下はストーリー。故郷の浦島の村で静かに暮らす浦島の元に、ある日天の仙人がやって来る。何でもタヌキ大王というタヌキの率いるタヌキ軍団が、近頃人々に悪さをしているらしい。タヌキ大王を懲らしめて欲しいという仙人の頼みを、浦島は快諾。そんな浦島に仙人は、タヌキ大王の息子かむろを預けて去っていく。かむろと共に旅立つ浦島だったが、浦島の事が気に入らないかむろは浦島を執拗に妨害してきて……。果たして浦島は、無事にタヌキ大王を懲らしめる事が出来るのだろうか――? といった感じになっています。

本シナリオで存在感を放つのが、何と言っても旅の相棒となるタヌキのかむろ。序盤のかむろの妨害は本当に執拗で、毎ターン浦島を攻撃してくるなんて当たり前。他にも敵に有利になる行動を幾つも取ったりします。

しかしそんなかむろも浦島の持つ優しさに触れるにつれ、徐々に心を開いていきます。そして遂には浦島と共に、父であるタヌキ大王と戦う決意をするのです。

この辺りの流れは実に、敵を倒すのではなく改心させていく本シリーズらしいと感じます。最初は反目していた相手がやがて誰よりも頼れる相棒になっていくというのは、如何にも王道で胸熱な流れです。

ちなみに同じくシリーズのレギュラーキャラである金太郎も、本シナリオで仲間に加わります。本シナリオでも健在のそのパワーは、浦島とかむろ二人の助けになってくれます。

なお内容とは全く関係ない話ですが、桃太郎・金太郎・浦島太郎と三人並ぶと某CMが思い浮かんでしまうのはもう仕方ない。歴史はこっちの方がずっと古いんですけどね。


いわゆる短編集ではあるものの一つ一つのシナリオには十分にボリュームがあり、長く楽しむ事が出来ます。PCエンジン版、ファミコン版も基本的な内容は変わらないので、そちらで遊ぶのも良し。



とりあえず、今回はこれにて。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ