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第百九十八夜 人生ゲーム伝説

一つ、ゲームの話でもしようか。



ゲームボーイで人生ゲーム。『大人数で遊ぶパーティーゲーム』という人生ゲームのコンセプトを、真っ向から否定するような取り合わせです。

しかし過去に、これをやってしまった会社があるのです。それは人生ゲームの元祖販売元、タカラ。

しかもただの人生ゲームではパンチが弱いと思ったのか、題材はファンタジーときた。その名も「人生ゲーム伝説」。はてさて一体、どんなゲームになった事やら……。


本作はゲームボーイ初期、旧タカラ、現タカラトミー(但し現在はゲーム事業より撤退)よりゲームボーイにて発売されたボードゲームです。前置き通り、道中のイベントやプレイヤーの就ける職業にファンタジー要素が盛り込まれているのが特徴です。

以下はストーリー。昔々あるところに、とてもお金が大好きな王様がおりました。先祖代々受け継いだ豊富な財産に加えお金稼ぎもとても上手かった王様の元には、いつも沢山のお金が溢れ返っておりました。王様はそのお金を使い毎日贅沢三昧我が儘三昧の日々を送っておりましたが、いつしかそんな毎日に飽き飽きするようになっていました。そんなある日、王様はとんでもない事を思い付きます。お金を沢山持ってお城を訪れた人に、自分の治めている数々の国を分け与えようというのです。家臣達は勿論大慌て。しかし王様には逆らえず、結局お触れは出されてしまいます。さてお触れを見た国民達は大騒ぎ。我先にとお金を稼ぎながら、お城へと殺到します。そしてお城を目指す者が、ここにまた一人。果たして『あなた』は王様が満足するだけのお金を稼ぎ、見事一国の主となる事が出来るのでしょうか――? といった感じになっています。

基本的にストーリーのない事の多いボードゲームで、ここまでちゃんとストーリーがあるというのも珍しいと思います。それが面白さに繋がっているかは置いといて。


本作はゲームボーイソフトですので、基本的には一人用となります。複数人で遊ぶ事も出来ますが、その場合は人数分の本体とソフトと通信ケーブルと三人以上で遊ぶ場合には人数分の通信ケーブルを繋ぐ用の四人用アダプタが必要となります。

本作を皆で遊びたいが為に、そこまで買い揃えた人が当時本当にいたのでしょうか。ぶっちゃけファミコンのボードゲームを皆で遊んだ方が、よっぽど経済的で安上がりだったと思います。

一人で遊ぶ場合は、コンピューターの参加人数を決めます。コンピューターは一人から三人まで参加させる事が出来ますが、個人的にはタイマン勝負のみで遊ぶのをお勧めします。理由は後述。

参加人数を決めたら、コンピューターの分も含め全員の性別と名前を登録します。性別による差はステータス画面やモンスターとの対戦時に出てくるグラフィックのみなので、基本的に好きな方を選んでOKです。しかしコンピューターの名前までこっちで決めないといけないのは少々面倒臭いような……。

全てのプレイヤーの登録が終わったらルーレットを回し、出た目の大きいプレイヤーからターン開始です。次の項目からは、ゲームの流れをご紹介しようと思います。


本作の進め方はとっても簡単、ひたすらルーレットを回す、これだけ。カードやアイテムなどの進行を助ける要素、他プレイヤーを妨害する要素は一切存在しません。

ルーレットの数字は1から10まであり、止めるタイミングは任意ですが止めた後慣性がかかるので思い通りの数字にはなかなか止められないかも。マップに分かれ道などはなく、完全な一本道になっております。

プラスマス、マイナスマスの区別もなく、あるのはプラスイベントとマイナスイベントどちらかがランダムで起こる白マス、モンスターとの戦闘などが起こるアクシデントマス、ミニゲームが出来るカジノマス、後は各種換金アイテムが買えたり貰えたりするショップマスのみ。戦略性も何もあったもんじゃない。

またマップ上には、必ず止まる事になるチェックポイントが幾つか存在します。最後のチェックポイント以外はいわゆる職安となっており、ここで転職を行うか選べるようになっています。最後のチェックポイントは精算所で、持っている換金アイテムが全てお金に還元されます。

以上を全て巡った後、お城に辿り着けばゴールです。先にゴールしたプレイヤーは、残り全てのプレイヤーがゴールし終わるまで待機する事になります。

全てのプレイヤーがゴールした後は結果発表。最終的に稼いだ金額によって各々がどのような結末を迎えたかが表示され、エンディングの後また最初からとなります。


各マスの詳しいご説明。まず最も多い白マスは、止まる事で何かしらのイベントが起こり持ち金が増減します。

イベントは多くは共通イベントですが、時々今就いている職業にちなんだイベントが発生します。その場合増減額は通常よりも増え、プラスイベントなら大儲けになりますがマイナスイベントだと大損失になってしまいます。

また稀にですがイベントが起こらず、アクシデントが起こって強制的に一回休みにされてしまう事があります。このアクシデントは一部換金アイテムを持っていればそれを失う代わりに防げますが、この時失うアイテムはどれも高額換金されるものばかりなので逆にアイテムを失わない代わりに一回休みにして欲しくなる事受け合い。


アクシデントマスで起こるイベントは三種類あり、止まるとそのどれかがランダムで起こります。イベントの種類は以下の通り。


モンスターとの戦闘は自分の前にある三つの宝箱の中から一つを選び、出てきた数の大きさをモンスターと競い合います。勝てば高額収入が見込めますが負ければ大量のお金を奪われる、ハイリスクハイリターンなイベントです。

災害は自分を含めた全てのプレイヤーに悪い出来事が起こります。時にはマス目を大幅に戻されてしまったりも……。

仕返しは任意で選んだプレイヤーを五マス戻せます。但し本作は、先にゴールしたプレイヤーが有利になるといった要素は特にありません。


とは言うものの戦闘以外の効果は滅多に起こらないので参考程度に。特に仕返しなんて実プレイで一度も見た事ない。


カジノマスで行えるミニゲームは三種類。お金を支払い実際に始めるまでは、どのミニゲームに当たるかは解らないようになっています。


お金袋の掴み取りは唯一運が絡まないミニゲーム。下に並んだ五つの宝箱からお金袋が出てくるので、上の手を動かしひたすら叩きましょう。制限時間内に幾つ叩けたかで、手に入るお金の総額が決まります。ちなみに一個につき200ゴールド。

カードめくりは早い話が神経衰弱。一発勝負で、八枚のカードの中から二枚を選んで絵柄が同じなら掛け金の倍額が支払われます。まあまず当たらない。

ルーレットは上下二つに分かれた絵を順番に止めて、正しい絵柄が完成すれば掛け金の倍額が支払われます。目押しは一応可能ですが、まあまず揃わない。


上記の説明を見れば解りますが、安定して稼げるのはお金袋の掴み取りだけで後は難しい癖にリターンは少ないときています。ぶっちゃけお金の無駄。

しかし実はこのカジノ、ある法則がありまして、お金袋の掴み取りは掛け金200ゴールドの時しか出ないようになっていたりします。つまり掛け金が200ゴールドの時だけやって、それ以外の金額だったらサヨウナラすればいい訳です。

ちなみにこのマスに止まった時のみ、移動せずに引き続きミニゲームに挑む事も出来ます。その場合はその場でルーレットを回し、奇数が出たら再び掛け金を払うところから始められますが偶数が出たらその分だけマス目を進まなくてはなりません。


ショップマスでは精算所で換金出来る、様々なアイテムを売っています。どの店で何が手に入るかはあらかじめ決まっており、購入金額は一律500ゴールドですが中にはタダで手に入るものもあります。


不動産屋では土地を購入出来ます。土地は全部で九個まで所持出来、精算の際は一個5000ゴールドになります。

道場ではタダで弟子を取る事が出来ます。弟子は九人まで取る事が出来、精算の際は一人2000ゴールドになります。……人身売買?

剣屋では剣を購入出来ます。一本しか所持出来ず、モンスターの襲撃(アクシデントマスのとは別)を受けると失われてしまいます。精算の際は一本10000ゴールドになります。高いなおい。

宝石屋では宝石を購入出来ます。一個しか所持出来ず、役人に捕らえられると失われてしまいます。精算の際は一個10000ゴールドになります。

薬屋では薬を購入出来ます。一個しか所持出来ず、モンスターから毒を受ける(アクシデントマスのモンスターからは受けない)と失われてしまいます。精算の際は一個10000ゴールドになります。宝石並の価値の薬とは一体……。


一個しか持てないものはともかく複数持てるものを限界まで所持するのはかなり大変で、マップに存在する全ての不動産屋・道場に止まらないと最大値にはなりません。普通は二、三個手に入ればいい方。


職安で転職を選ぶと、四つの職業の中からなりたいものを選択する事になります。職業の種類は職業イベントで増減する金額の少ない順に剣士、盗賊、魔法使い、商人となっております。

なりたい職業を選ぶと、まず各職業に応じたミニマップに移動します。そのマップのゴールに辿り着くまでに指定の金額を稼ぐ事が出来れば晴れて転職、稼げなければ元の職業のまま先に進む事になります。

転職に必要な金額は、職業イベントの増減金額が多いほど多く設定されています。ただ本作の職業による違いはその職業イベントとグラフィックのみな為、無理してなるのが大変な職業になる必要があるかは微妙……。

なおミニマップには『さあここで金を稼げ』と言わんばかりに大量のカジノマスが配置されています。もっとも上手く止まれるかどうかは運ですが。


精算所ではアイテムを全て換金した後、賭けを行うかの選択が出ます。この賭けは勝てば持ち金が倍になりますが負ければ持ち金が一気に0になるという、ハイリスクハイリターンの極地をいった大勝負となっています。

賭けの内容は丁半賭博になっており、行う場合、プレイヤーはダイスの目の合計が偶数の丁になるか奇数の半になるかを予想して選択します。そして出た目が選んだ通りなら勝ち、選んだ方と違っていたら負けというシンプルなルールです。

強制ではないので無一文になりたくないならやらなければいいだけの話なんですが、本作でよりよいエンディングを迎えようとした場合この賭けに勝つ事がほぼ必須となっている部分もあり、そうも言ってられなかったりします。でもやったらやったで負ける確率がやたら高いような気がするのは筆者だけ?


さてここまでは本作の流れやルールに触れてきた訳なんですが、実際のところ、本作は色んな意味で問題しかない代物です。その一つが、一回のプレイ時間の異様な長さです。

本作の一回のプレイ時間は、同時代の据え置き機で出たボードゲームと比較してもかなり長めの方に入ります。と言うのも、マップが携帯機で出ている事を全く考慮していない長さなのです。

おまけに本作のコンピューターは頭が大変悪く、職安では必ず転職を希望します。しかも自分が既に就いている職業を何度も選んでは、その都度拒否されるを繰り返す始末。

この為自分が転職せず最速でゴールしたとしても、その後コンピューターがちまちま進んでくるのを延々と待つ羽目になります。もしその間に、電池が切れでもした日には……。

本作のもう一つの大きな問題点として、イベントのバリエーションが非常に少ない事が挙げられます。プラス、マイナス合わせても共通は二十程度、職業イベントに至っては四つ程度しかなく、ただでさえ長いマップも相まってプレイ中は同じイベントを何度も繰り返し見る羽目になります。

その少ないイベント群も全て文字で説明されるのみで、表示されるグラフィックはプラスを表すお金袋の落下とマイナスを表すモンスターがお金袋を運び去る様子だけ。ゲームボーイである事を考慮しても味気なさすぎる。

この二つの問題点が合わさった結果、時間はかかるのに飽きやすいというゲームとして駄目なパターンになってしまっているのです。ハッキリ言えばクソゲー。

そもそも前置きにも書いた通り、パーティーゲームである人生ゲームと一人プレイが主だったゲームボーイの相性そのものが微妙です。正直企画段階で既に間違ってたとしか言えません。

本作以外にゲームボーイで人生ゲーム的なゲームが出ていないのが、いい証拠と言えるでしょう。誰もやらなかった事=斬新で面白い事ではないという一例。


ファンタジーの世界でボードゲームという発想自体は、後の「ドカポン」シリーズの人気が示すように悪くなかったのだと思います。しかし本作にはそれを良ゲーにする為の何もかもが足りなかったというのを、今回の総評とさせて頂きます。



とりあえず、今回はこれにて。

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