第十九夜 バイナリィランド
一つ、ゲームの話でもしようか。
ファミコンが発売されてから今日に至るまで、各メーカーは色んな層に合わせたゲームを開発してきました。例えば大人向けに将棋や麻雀であったり、メインターゲットの子供以外でも楽しめるハードを目指していたのです。
そんな中に、女の子向けゲームというものがあります。これは設定上、どうしても男の子の好みに合わせた見た目のものが多くなってしまうゲームに女の子の好む可愛いキャラクターを取り入れる事で、男の子だけでなく女の子にもゲームを遊んで貰おうとしたんですね。
しかし、見た目は可愛らしい女の子向けなのに難易度がガチという場合、一体どこに分類すればいいのでしょうか?
今回はそんなゲームの一つ、ファミコンソフト「バイナリィランド」をテーマにお送りしようと思います。
本作は、今は亡きハドソンから発売された一画面型のアクションゲームです。プレイヤーは離れ離れになった二匹のペンギンを同時に操り、ステージ中央上部にあるハートの前で会わせる事が目的となります。
プレイヤーはまず最初に青とピンク、どちらのペンギンをメインで使うか選択します。選択しなかった方のペンギンは、メインのペンギンと鏡写しになるように同時に動きます。まずはこの操作に慣れないと、クリアは難しいと思われます。
各ステージは簡単な迷路状となっており、また、あちこちにクモの巣が張り巡らされています。このクモの巣にメインのペンギンが引っ掛かってしまうとミスになりますが、相棒のペンギンが引っ掛かってしまった場合はメインのペンギンに助け出されるまでその場に囚われの身となるだけでゲームは続行します。
またステージにはお邪魔キャラとなるクモ本体がうろついており、クモの巣が増える事こそありませんがクモ本体に触ってしまうとメイン、相棒どちらのペンギンであってもミスとなってしまいます。メインのペンギンだけでなく、相棒のペンギンに気を配る事も重要です。
そんなか弱いペンギン達にも、ちゃんと対抗手段は存在します。ペンギン達は各自スプレーを持っており、これを使う事でクモ本体やクモの巣を消す事が出来るのです。
スプレーに使用制限はありませんが、後半の面になると新たにスプレーが効かない別のお邪魔キャラが出現するようになるので完全に安心は出来ません。なお、スプレーはボタン一回で二匹同時に発射出来ます。
さて本作が出た時代、アクションゲームには隠しアイテムが付き物でした。中身は単なるスコアアップアイテムから攻略の助けになるアイテム、お得なものだと1upアイテムまで様々なものがステージ内に散りばめられていました。
その例に漏れず、本作にも隠しアイテムはありました。しかし本作の隠しアイテムは場所は各ステージ毎に決まっているものの何が出るかは完全にランダムで、運が良ければ1upアイテムばかり出ますが運が悪ければ延々スコアアップするだけという事になりがちでした。本作にはスコアアップによる1up要素はない為、スコアは完全に趣味の領域です。
……もっとも、隠しアイテムの事を知ったのはネットが普及してからの話で、リアルタイム当時の幼い筆者はそんな事知らずにプレイしていた訳ですが。
本作のキャラクターやアイテムはお邪魔キャラのクモ本体を除けば非常に可愛らしく、見た目には楽しいゲームです。ですがその難易度はと言うと、お世辞にも子供向けとは言えません。
始めのうちはクモの巣やお邪魔キャラの数も少なく、さくさくと進める事が出来ます。しかし、ステージが進むにつれて迷路は複雑になっていき、クモの巣やお邪魔キャラもその数を増していきます。
本作が地味に厄介なのが、ステージ毎に制限時間がある事です。これにより、じっくりクモの巣やお邪魔キャラを潰してクリアしよう……という事が出来なくなっています。
一定ステージ毎に挿入される、ボーナスステージも過酷です。ここでは最初から捕まっている相棒のペンギンを助け、ステージ内に散らばっているハートパネルを集めてゴールするのが目的なのですが二番目のボーナスステージの時点でもうパーフェクトは難しくなっています。
時間内にゴールさえ出来ればクリアボーナスは入るので無理にパーフェクトを狙う必要はないのですが、やるからにはパーフェクトを目指したくなるのが人情というもの。幸い時間切れになっても残機が減る事はないので、敢えてパーフェクトを目指すか地道にクリアボーナスを稼ぐかは各自の好みに任される事になるでしょう。どうせ本作では、スコアは趣味の領域なのですから。
なお本作はこの時代には珍しくないループゲーであり、例え最終面までクリアしたとしてもまた1面から再スタートとなります。これは筆者も以前プレイ動画で確認(現在は削除済み)したので間違いありません。当時どれだけの人が最終面までクリア出来たかはともかく、報われない話ではあります。
見た目は女の子向け、中身はガチンコ。当時なかなか女の子にゲームが普及しなかった理由も、本作を見ていると何だか解る気がします。筆者は難しいなりに、割とプレイしてたんですけどね。
とりあえず、今回はこれにて。