第百九十夜 ヒーロー戦記 プロジェクトオリュンポス
一つ、ゲームの話でもしようか。
ガンダム、仮面ライダー、ウルトラマン……。今も昔も、子供の憧れですね。
その昔、そんなヒーロー達が一堂に集結するコンパチヒーローシリーズというものがありました。ガンダム、仮面ライダー、ウルトラマンがそれぞれSDサイズになって、同じくSDサイズになった敵と戦うというものです。
コンパチヒーローシリーズのジャンルは多岐に渡り、アクションの他にもシミュレーションやスポーツゲームも出たりしました。そして……RPGも。
今回はそんな、コンパチヒーローシリーズから出たRPGのお話。今なお続く人気作、「スーパーロボット大戦」シリーズとも関わりを持つ作品をご紹介します。
タイトルは「ヒーロー戦記 プロジェクトオリュンポス」。ヒーローの活躍、とくとご覧あれ!
本作はスーパーファミコン初期、バンプレストよりスーパーファミコンにて発売されたRPGです。後に「スーパーロボット大戦」シリーズに登場する事になるバンプレストオリジナルキャラ、ギリアム・イェーガーと同じくバンプレストオリジナルメカであるゲシュペンストのデビュー作でもあります。
以下はストーリー。舞台は地球とは異なる惑星エルピス。エルピスには三つの大陸があり、各大陸はそれぞれ機械工学が盛んなガンダム大陸、人体強化技術に優れたライダー大陸、超能力者が産まれやすいウルトラ大陸の通称で呼ばれていた。エルピスにはテロリストが多く、各大陸はそれぞれその鎮圧に当たっていたが、増え続けるテロリストに各個の大陸の治安維持組織だけではこれ以上抑えきれないと判断。三つの大陸の力を合わせ、新しい治安維持組織を作る事になった。その名は連邦特別大使、通称ゼウス。そのゼウスの一番最初のメンバーとして選ばれたアムロ・レイ、南光太郎、モロボシ・ダン、ギリアム・イェーガーの四名は互いに協力し合いながらテロリストとの戦いに身を投じていくが――。次第に結束を始めるテロリスト達。その背後にいる謎の人物『アポロン』――。果たしてアポロンの目的とは? ゼウスはエルピスに平和を取り戻す事が出来るのか――? といった感じになっています。
基本的にパイロットだとか変身前だとかいわゆる『中の人』が最初から存在しない事が多いコンパチヒーローシリーズにおいて、本作は中の人を寧ろメインにしているという珍しい構成になっています。但しその性格は原作とかなり異なっている事が多く、原作を知っていると逆に戸惑う事受け合い。特に風見志郎。
あと『中の人がいるんじゃモビルスーツどうなるねん』という疑問を抱く方もおられるでしょうが、本作のモビルスーツを始めとしたロボット系統はパワードスーツという扱いであり、転送装置を使いその場で装着するという変身ヒーローものみたいな感じになってるので本作のモビルスーツその他は人間サイズです。それにしては作中一ヶ所だけその設定と微妙に矛盾する箇所がありますが……。
本作は基本四人パーティーで進行し、固定メンバー三人(アムロ・光太郎・ダン)にスポット参戦の四人目が入れ替わり立ち替わりするという方式になっています。四人目にもきちんと経験値は入りますしレベルアップもしますが、装備の変更は出来ません。
四人目は有名どころは大体入っていると言ってもよく、特にガンダム系からはシャアやハマーンといった原作では敵だったキャラまで仲間キャラとして選出されています。本作は原作とは異なる歴史を辿っているらしく、故に原作で存在した禍根もないという事みたいです。
またパーティーには加わらなくても中の人状態で登場するキャラも多く、彼らも要所要所でストーリーに絡んできます。ライダー系やウルトラ系のキャラだと、光太郎やダンに必殺技を授けてくれたりも。
なお仲間になるキャラの中には開発会社が一緒という繋がりで、「第二次スーパーロボット大戦」初出のオリジナルキャラであるマサキ・アンドー操るサイバスターとシュウ・シラカワ操るグランゾンまで存在しています。通常はスポット参戦のみの彼らですが、ある事をすると最終メンバーとしてどちらかを連れていく事が可能になります。
パーティーキャラ達はガンダム系、ライダー系、ウルトラ系でそれぞれ特徴が分かれており、各々の特徴をよく把握した運用を求められます。それぞれの特徴は以下の通り。
ガンダム系は個別コマンドでビーム攻撃が出来、中盤以降出てくるビーム攻撃しか効かない敵にもダメージを与える事が出来ます。必殺技は全体攻撃出来るものが多いものの、TP(本作のMP)消費が総じて高めで燃費はイマイチ。なおガンダム系でないロボットも必殺技傾向は便宜上これ。
ライダー系は攻撃力が高く、必殺技も威力の割にはTP消費が少なく燃費がいいのが特徴。しかしHPが低めの上、ビーム攻撃しか効かない敵には手も足も出なくなるのが欠点。あ、HPに関してはV3にだけは当て嵌まらないです、はい。
ウルトラ系は唯一回復技が使え、必殺技の威力も高め。ビーム攻撃しか効かない敵には、もっぱら彼らの必殺技にお世話になる事になります。但し通常攻撃は弱めな上行動も遅く、なかなか敵にトドメが刺せず苦労する事も……。
本作の戦闘では、敵にダメージを与えるとTPが微量回復し、敵にトドメをさすとTPが多めに回復します。同様に防御を行えばHPが微量回復しますが、まあこちらを使う機会はあまりないでしょう。
TPはアイテムを使う事でも回復しますがそう多く手に入るものでもないので、基本は敵にトドメを刺すのをメインに賄っていく事になります。従って、誰にトドメを刺させるかというのも本作では結構重要になってくる訳です。
必殺技を使う比重的には、ウルトラ系にトドメを刺させたい。しかしウルトラ系は通常攻撃が弱く行動も遅いので、なかなか敵にトドメを刺せない……このジレンマ。
何も考えずに戦っているとライダー系ばかりがトドメを刺す事になりがちなので、全体の状態を見て戦略を練る事が大事です。一応レベルアップでもHPTPは全快しますけどね。
またストーリー中、固定メンバーがバラバラになり単独行動になる場面も存在します。この時回復が使えるダンは案外困らないのですが、問題はアムロと光太郎。
回復役のダンがいない為回復はアイテム任せとなり、また単独行動なので攻撃が一人に集中。アムロに至ってはスポット参戦キャラがついてくれるのはいいものの、それでも敵の強さがキツい有り様。アムロ・光太郎共に事前にアイテムを出来るだけ手に入れておかないと最悪詰む。
この一人旅編さえなければまだ本作のバランス良かったかな……。ここだけは辛かった。ホントに。
本作は都市間の移動は自動で行われ、その間は敵は出てくる事はありません。その代わり都市が敵に占領されているような場合は、街中だろうが容赦なく敵は出てきます。
都市を繋ぐルートは最初は敵の手により遮断され、その殆どが使用不能となっています。ストーリーが進むにつれてルートが復旧し、行ける場所も増えてきますが、時には一度繋がったルートがまた潰される事も……。
また一度行った都市に一瞬で行ける、いわゆるルーラ的な移動手段は一切存在せず、目的地に行くには一つ一つ都市を移動していくしかありません。ここはちょっと面倒な点かも。
ちなみにストーリー中には、正規ルートではない裏道を通って都市に侵入するようなシーンも存在します。この時は移動シーンにならず、ダンジョンを辿って進んでいく形になります。
ストーリーはまさに、王道ヒーローものといった感じ。ラスボスの意外な正体など、単純な勧善懲悪とは言えないのも○。
敵も悪い奴はとことん悪く、カッコいい奴はひたすらカッコいい。原作通りかどうかはこの際置いといて。
勿論シリアスなだけでなく、時にはコミカルさで笑いも誘ってくれます。バルタン語しか喋れないバルタン星人の必死のジェスチャー→翻訳機登場の流れは今でも忘れられない。
それと前述のジェスチャーもそうなんですが、グラフィックパターンが非常に細かい。小さいキャラながらライダー系キャラの変身ポーズなんかも完全再現されており、見比べてみるとちゃんと全員ポーズが違う細かさ。
ちなみに後に本作に関わったスタッフが明かした裏話によると、開発期間はかなり短かったようです。それでこのクオリティなら、十分上出来だと思います。
RPGとしては正直粗い部分もありつつも、ヒーローものの王道を往くストーリーと散りばめられた細かいネタ、当時としては細かいキャラのフィールドや戦闘時の動きは多くのプレイヤーを魅了し、復刻を強く望まれるまでに至りました。しかしそこは版権ものの悲しい定め、近年限定復刻はなされたものの、正式な復刻は未だなされないのが現実です……。
とりあえず、今回はこれにて。




