第百八十七夜 晦-つきこもり
一つ、ゲームの話でもしようか。
皆様は、親戚付き合いはよくされている方ですか。筆者は全くしていない方です。
最後に親戚に会ったのは、もう数年前になりますか。正直この歳になるともう、誰かの葬儀の時くらいしか親戚となんか会わないです。
とは言うものの筆者の家の親戚は殆どが同じ県内なのですが、それでも会わないってもしかして変? まあ筆者の家庭事情はこの辺にしておきましょう。
今回ご紹介するゲームは、そんな親戚付き合いから物語が始まります。タイトルは「晦-つきこもり」、どうぞお楽しみ下さい。
本作はスーパーファミコン全盛期、バンプレストよりスーパーファミコンにて発売されたサウンドノベルです。ストーリー的な繋がりはないものの、同社より発売されたサウンドノベル「学校であった怖い話」の実質的続編に当たります。
以下はストーリー。四月で高校生になる十五歳の前田葉子(名前変更可)は春休み、祖母の七回忌で久しぶりに父の実家を訪れる。久々に出会う、父の親戚一同。七回忌も無事終わったその夜、集まった一同はいつしか幾つかのグループに分かれ、話に華を咲かせる。そんな中、葉子のグループにいた親戚の泰明が言った。『七回忌の夜に怖い話をすると、死者が蘇るって言うよな』その一言から自然と怖い話をしようという流れになり、葉子のグループは使われていない空き室に移動する事に。途中で叔母の和子も加わり、参加人数は全部で七人になった。『それにしても皆、この部屋がどうして使われてないのか知ってるの? ……ここって出るのよ』和子のその一言を皮切りに、七回忌の夜は更けていく――。といった感じになっています。
全員が初対面だった前作とは打って変わって、本作では全員が顔見知り、どころか親戚関係となっております。だからと言って侮るなかれ、メンバー(以下語り部)達の危険度は正直前作以上となっております。
基本的システムは前作と変わらず、基本シナリオの総数も同じく42本となっています。但し前作にあった話を最初から聞き直せる機能と前の語り部に戻れる機能は、何故か削除されています。
隠しシナリオの出し方も概ね一緒ですが、前作にあった『特定の順番で語り部を選びそれぞれ次に話が繋がるように結末を迎えさせ、七話目までいくと通常の七話目とは違う七話目が始まる』連作シナリオが二本に増えており、更に難易度が上がっています。その上でこれまた前作にあった特定シナリオの後日談的シナリオは今回は入っていない為、ちょっとボリューム感は下がった気分……。
また前作では七話目までいけば例えバッドエンドを迎えてもそのままスタッフロールに移行したのですが、本作では七話目であってもバッドエンドはシナリオ終了扱いにはならず、最後にセーブしたところからやり直さなくてはならなくなりました。例えそれが、バッドエンドでない結末がたった一つしか用意されていないシナリオであっても……。
そうでなくても今回はバッドエンドがないシナリオを探す方が難しいので、シナリオクリア自体の難易度も急上昇しています。クリアに苦労するサウンドノベルって何だよ……。
その割に分岐なしの七話目は前作の二本から倍の四本に増加しているので、これまたボリューム感は下がった気分。まさか難易度を上げてボリュームを誤魔化す作戦では……。
とはいえ学校の話限定だった前作と比べると、シナリオの幅は広がったのは確か。今回は語り部に大人が多い為か、語り部の職場関係のシナリオが主となっております。
背景、人物全実写は今回も健在。但し前作よりも、目に見えて怖い映像は減ったように感じます。
人物は学生役が減った事で前作より違和感のない感じに。年配の方や子供もいますが、そういう人物は社員の身内を総動員しているそうです。
語り部達の表情パターンも前作の二種類から増え、より目の前で実際に語られているかのような臨場感が味わえます。中にはあまり出てこないレアな表情も……。
ちなみに前作の語り部役の方々も何人か出演してますが……。前作と大分イメージが違う感じなので、初見ではもしかしたら気付かないかも。
本作の語り部達は、その殆どが危険人物。例え子供相手でも侮るなかれ、きっちりとこちらをバッドエンドに引きずり込んできます。
今回もそんな危険な語り部達をご紹介。というかこんな親戚に囲まれた主人公の将来が心配……。
前田和子、五十三歳。本家の嫁で、主人公の叔母に当たります。基本的には友好的な人物ですが一人息子の良夫の事を溺愛しており、それ故に良夫が絡むと狂気の片鱗を見せる事も……。語る話は土着の話が多く、七話目は評価が高い半面本作で一、二を争う難易度。
前田良夫、十一歳。語り部の中では最年少の小学生。実は主人公の事が好きなのですがそこはこの年頃の少年、ついついからかってしまう為主人公からは嫌われています。語る話は子供ならではの視点の話が主ですが、例え子供だろうと本作ではバンバン死にます。
真田泰明、三十三歳。テレビ局のプロデューサーを務めています。主人公の憧れの人ですが、業界人らしく裏表の激しい面も……。語る話はやはり業界の裏話ばかりで、彼自身が直接関与している事も少なくありません。
山崎哲夫、二十八歳。自称冒険家ですが、主人公に言わせるとフリーター。基本的に善人なので、主人公に危害を加えてくる事は稀。語る話は自分が山などで体験した出来事が主。
藤村正美、二十六歳。看護師(当時の表記は看護婦)を務めています。本作の危険人物筆頭で、一見献身的ですがその言動には歪な部分が散見されます。語る話はやはり病院での怪談ばかりで、彼女の六話目は最難と評判。
鈴木由香里、二十歳。花嫁修行と称してアルバイトに明け暮れる、いわゆるフリーター。性格はドライで、時に理不尽な理由で主人公に危害を加えてくる事も……。語る話は彼女がアルバイト中に遭遇した体験談が中心ですが、こんな体験ばかりしててよく生きてたな……となる事受け合い。
語り部のうち和子と良夫の苗字は、主人公の苗字をデフォルト以外にすれば一緒にそれに変更されます。主人公だけでなく他の登場人物の名前まで変えられるというのは珍しいかも。
さて本作を語る上で欠かせないのがこの人物、風間の存在。前作である種のインパクトを放った風間が、演者もそのままに、本作でも猛威を奮っているのです。
その様足るや語り部でもないのに全ての語り部の話に顔を出し、更に彼専用の特殊な七話目まで用意されているほど。話の下らなさにも、更に磨きがかかっています。
とはいえきちんと怖いバッドエンドも今回は用意されていたりするのですが……。この風間祭りに関しては、賛否両論みたいです。
シナリオのバラエティ感を広げる為の努力は見えるものの、不親切になったシステムと高騰した難易度が評価を下げている点は否めません。そして学生ではない分使いづらいのか、前作のように本作の登場人物達が再利用される事もまたないのでした……。
とりあえず、今回はこれにて。




