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第百八十六夜 学校であった怖い話

一つ、ゲームの話でもしようか。



学校の怪談。実に懐かしい響きです。

何故か昔から、学校というのは怪異の舞台になりやすい場所です。トイレの花子さん、ひとりでになるピアノ、動く人体模型……。

七つ全てを知ってしまうと恐ろしい事が起きるという、学校の七不思議なんてものもありましたね。まあ筆者の学校にはなかったんですけども。

今回のテーマは、そんな学校の怪談をモチーフにしたゲーム。今なお根強い人気を誇る、チュンソフト製以外では最も知名度があるのではないかと思われるサウンドノベル。「学校であった怖い話」です。


本作はスーパーファミコン全盛期、バンプレストよりスーパーファミコンにて発売されたサウンドノベルです。開発は飯島健男(現飯島多紀哉)氏率いるパンドラボックスで、以降本作の登場人物達は飯島氏の作品によくゲスト出演するようになります。

以下はストーリー。舞台はとある大きな高校。新聞部に所属する一年生の坂上修一(名前変更可)は先輩の日野から、新聞部で行う七不思議特集の担当記者に任命される。取材当日、取材を受けるメンバーを集めた日野が急用で来れなくなり、気が乗らないながらも取材を行う為一人新聞部の部室に向かう坂上。そこには既に六人のメンバーが揃っており、坂上も自己紹介をして席に着くが、いくら待てども最後の一人は一向に現れる気配がない。無言で七人目を待ち続ける気まずさに耐えかね、坂上が今いるメンバーだけで先に話を始める事を提案すると、六人はそれに了承した。こうしてまだ見ぬ七人目を待ちながら、七不思議の取材が始まった――。といった感じになっています。


本作最大の特徴と言えば、何と言ってもそのシナリオのボリューム。一本一本はそう長くないとは言え、その数何と42本。しかもこれに、隠しシナリオまでついてくる豪華さ。

本作では主人公以外の六人のメンバー(以下語り部)から一人ずつ順番に話をして貰う、という形式でゲームが進み、同じ語り部でも選んだ順番によって話の内容はまるで違うものになります。そして最後に選んだ語り部によって、最終七話目がどういう展開になるかも決まります。

そして当然一つ一つのシナリオにも分岐による変化はあるので、全てのシナリオの全ての展開を見ようと思うとかなりの回数やり込む事になります。更にやり直しの煩わしさを軽減させる為一ページを一気に表示出来る機能に話を最初から聞き直せる機能、前の語り部まで遡れる機能まで完備。

ここまでやり直しに優しいサウンドノベルも、そうそうないと思います。もっとも、一ページを一気に表示出来る機能以外は本作のみの搭載となってしまいましたが……。

セーブ方式も本作の場合特殊で、この頃のサウンドノベルと言えば常時オートセーブが当たり前でしたが、本作ではシナリオを一話終える毎に任意でセーブするかを問い掛ける方式になっています。セーブされるのはこの時のみで、シナリオ中のセーブは行われません。

但しシナリオの展開次第では次のシナリオに繋がらずに終わる、いわゆるバッドエンドになる事もあるので注意。本作では七話目以外のバッドエンドは周回終了扱いにならず、最後にセーブした地点からまたやり直す事になります。

なお本作の隠しシナリオ出現条件も他サウンドノベルとは違い、『特定の語り部の特定の順番の話で特定の結末を迎え、更にその状況で特定の語り部を次に指名する』というかなり難易度の高いもの。中には七話目になるまで隠しシナリオのフラグが立ったのか解らないものもあり、更に難易度を上げています。


本作のもう一つの特徴と言えば背景、人物全てが実写取り込み映像である事。背景が実写取り込みは「かまいたちの夜」でもありましたが、人物まで実写は本作が初となります。

本作の語り部やその他登場人物を演じるのは、当時のパンドラボックスの社員達。登場人物の殆どが高校生なのに、一部どう見ても高校生に見えない人もいますが気にしてはいけない。

実写を元にしているだけあり、本作の視覚的恐怖の度合いはかなり高いです。ぶっちゃけサウンドノベル界随一と言ってもいい。

本作は実写取り込みと言ってもスーパーファミコンの作品ですので、その画像はかなり粗めです。しかしその粗さが逆に、恐怖感を引き立たせているのです。

よく視覚的に『怖い』と言われるのは、逆さ女の画像ですね。上から顔半分だけを覗かせてこちらを睨み付ける、髪の長い女の画像。理不尽な話の内容も相まって、恐怖が更に倍増されたものと思われます。

ちなみに筆者一番の恐怖映像は、ロッカーから出てくる水死した女子生徒の霊。あれだけは未だに直視出来ません。


本作のシナリオは基本的に、語り部達が主人公に怖い話を聞かせるという形で進行していきます。語り部達は全員一癖も二癖もある人物で、時にはこちらを心理的に追い詰めるような言動も取ってきます。

ここではそんな特徴的な語り部達をご紹介していきます。なおこれら性格その他はあくまでスーパーファミコン版のものであり、本作のプレイステーション移植版である「学校であった怖い話S」及びリメイクである「アパシー」シリーズとは異なる場合もございます。


新堂誠、三年生。語り部達の中では最も癖が少なく、語る話もオーソドックスなものが多いです。男らしい兄貴分といった性格で、スポーツが好きだったり、賭け事に纏わる話をしたりと勝負事を好む部分が時に見え隠れする事も。彼の七話目は特に人気が高いですが、グッドエンドに持ち込むのは至難の業。

荒井昭二、二年生。語り部達の中で、特に陰気さが目立つ人物です。彼の話は人間の心の闇に纏わるものが多く、残酷度も高めとなっています。彼の七話目は全シナリオの中でも最恐との評判。

風間望、三年生。自称ウイットに富んだ二枚目で、主人公をおちょくるような発言多し。彼の話はいわゆる箸休め的な意味合いが強く、大抵が下らない話ですが、時にその下らない話が現実になってしまう事も……。なおこんな性格ですが喧嘩は意外と出来る方らしく、一部バッドエンドではその腕前を見られる事もあります。

細田友晴、二年生。名は体を表さないを地でいく、いわゆるピザ。話す内容全てがトイレに纏わる話という、無類のトイレマニアでもあります。性格はやや粘着質で、事ある毎に主人公を友達にしようとしてくるある意味怖い人。

岩下明美、三年生。見た目は美人ですが、その実本作トップクラスの危険人物。彼女の話は主人公自身にまで関わってくる話が多く、バッドエンドも多めになっています。時には主人公に気のある素振りも見せてきますが……。

福沢玲子、一年生。唯一主人公と同じ学年で、怪談の会というイメージにそぐわない明るい性格の持ち主。しかしそのあっけらかんとした口調のままどんな残酷な話でも語るという、一種の狂気も持ち合わせます。語る話の内容には一貫性がなく、時には途中で全然違う話を語り出す事も。


注意しなければいけないのは、語り部達の機嫌はなるべく損ねない事。話をそれ以上聞けなくなってしまったり、最悪死人が出る可能性もあるからです。

話が聞けなくなるのはそのままシナリオが終了するだけですが、死人が出た場合は当然バッドエンド一直線。死人は語り部達だけでなく、主人公がなる場合もあるのでくれぐれも気を付けましょう。


ちなみに学校の怪談がモチーフとはいうもののタイトルの意味は別にあり、『学校で怖い話を聞いていたら怖い目に遭った』というのが本来の意味だそうです。そう言われれば七話目は主人公自身に怪異が及ぶ話ばかりなので、何だか納得。


一つの一貫した長いシナリオを見せるのではなく短いシナリオを沢山入れるという発想は見事に当たり、また語り部達の強烈なキャラ性もあって本作は一定の人気を獲得する事になります。パンドラボックスはこの後も同じ方式のゲームを世に出す事になりますが……それはまた次回に。



とりあえず、今回はこれにて。

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