第百八十三夜 カービィボウル
一つ、ゲームの話でもしようか。
ブランド買い、という言葉があります。見た目や実際の使いやすさよりも、自分が気に入ったブランドの品である事を重視して商品を購入する手法の事です。
ゲーム業界でも、しばしばこういう買い方が行われます。この会社のこのシリーズならば安心だ、と安定した面白さを求めてゲームを購入する層は多いと思われます。
しかしブランド買いは時に裏切られるもの。安牌だと思って手を出したらとんでもない核地雷だった……なんてケースも、近年では増えてきています。
今回はそんなブランド買いをして、筆者が痛い目に遭ったゲームのお話。一応断っておきますと、決してクソゲーではないんです。ただ筆者には難しすぎたというだけで。
そのゲームの名は「カービィボウル」。それではいってみましょう。
本作はスーパーファミコン黎明期、任天堂よりスーパーファミコンにて発売された……これジャンル何て言えばいいんだろう。一応公式ジャンルはテーブルゲームになっているみたいです。
以下はストーリー。プププランドに夜がきました。今夜も満天の星空を見ながら、眠りに就こうとしたカービィ。けれどどうした事でしょう。今夜の夜空には、星がたった一つしかありません。心配になったカービィが一つ残った星を見ていると、やって来たのはデデデ大王。デデデ大王は一つだけ夜空に輝く星を奪い取ると、そのまま去っていってしまいました。どうやらデデデ大王が、夜空の星を奪った張本人のようです。カービィはデデデ大王から星を奪い返し満天の星空を取り戻す為、デデデ大王の後を追います。果たしてカービィは、プププランドの夜空を元に戻す事が出来るのでしょうか――? といった感じになっています。
本作、実は元はカービィとは何ら関係のないゲームの企画だったのですが、人気のあるカービィキャラを使って出そうという話になり「星のカービィ」シリーズの一つとして出る事になったという経緯があります。シリーズブランドを利用して新作ゲームの売上を伸ばそうというのはこの業界ではよくある話で、特に「星のカービィ」シリーズ開発担当のHAL研究所は『何か考えたらとりあえずカービィで出してみる』という傾向が強い気がします。
ちなみにこんな状態なのでどの作品がいわゆる『正史』として数えられるかは本シリーズは結構曖昧で、後のシリーズ作品に思わぬ形で設定が再利用される作品もあれば、その作品きりのキャラや設定に終わってしまう作品もありまちまちです。本作はどちらかと言うと後者の方。
本作の操作を簡単に言うとゴルフ+ビリヤード÷2で、プレイヤーはボールとなったカービィを打ち出しステージ上の敵を倒していく事になります。敵が最後の一体になるとその敵はホールに変わり、ホールの中にカービィをチップインさせるとそのステージはクリアです。
カービィにはステージ毎にバイタリティが設定されており、一打打つ度にバイタリティは減っていきます。バイタリティが0になるとミスとなり、残機を一つ減らしてステージ最初からとなります。
バイタリティは敵を倒す事で、一ずつ回復していきます。更にホールインワンを出すと、残機も一増えます。
またステージ上には、触れるとバイタリティが減る障害物が設置されている事があります。これらを上手く避けてチップインを目指すのも、攻略のポイントの一つです。
なお何らかの形でステージ外に出てしまうとOBとなり、バイタリティが残っていても即ミスと見なされます。ステージは基本バンパーに覆われているとは言え、十分注意する事。
肝心のカービィの打ち出し方法を説明します。まずは軌道を、ビリヤードのように転がすのとゴルフのように打ち上げるののどちらかから選びます。
軌道を選ぶと同時に、カービィのボディのどの辺りを打つかも選びます。これにより転がした場合は軌道がカーブを描いたり、また打ち上げた場合はトップスピン(より前に跳ねる)やバックスピン(落ちた地点から後ろに戻る)をかけたりする事が出来ます。
自分の打とうとしているショットがどのような軌道になるのかは、事前にガイドで確認する事が出来ます。但し見れるのは常に最大威力でのショットの軌道だけで、威力を弱めて打つ場合は自分で軌道を予測するしかありません。
ショットの軌道を全て設定し終えたら、自動で移動する威力ゲージを好きなところで止めてカービィをショット! ちなみにゲージは一旦最大に近付いてからまた最小に戻り、その後は動かなくなるので思い切りが肝心。
なおガイドはステージ内の地形はカービィを跳ね返す系しか加味してくれないので、最大で打ったのにガイドと軌道が違う、なんて事も。結局一番頼れるのは自分の予測。
もう一つ豆知識。ショットを放った後Aボタンをタイミング良く連打すると、カービィが頑張ってショットの飛距離が伸びる事があります。あとちょっと狙いの場所に届かないかも、なんて時は連打すれば、信じる者は救われるかも?
カービィと言えばコピー能力。本作でも様々なコピー能力が登場し、カービィを手助けしてくれます。
スパークは障害物のウィスピーウッズ(カービィを通せんぼする)とクラッコ(カービィのバイタリティを減らしてくる)を破壊する事が出来ます。またクラッコの放つ雷の影響を受けなくなります。
トルネードはショットの最中、多少左右に蛇行する事が出来るようになります。また跳ね上がっている最中に使うと、飛距離が少し伸びます。
ハイジャンプはその場で高く飛び上がります。空中でも使用出来、その場合の高度は更に高くなります。
フリーズは転がした時の飛距離が伸び、池を凍らせて上を渡れるようになります。但し池の上で止まった場合は、氷が溶けてそのまま下へ沈みます。
パラソルは転がっている時なら傘を差して減速し、空中にいる時なら落下速度を和らげます。更に落下中はある程度上下左右に移動出来、上手く使えば着地点を自分で操作出来ます。
ストーンは使ったその場で停止し、空中で使うと真下に落下します。但し坂の途中で使った場合は、そのまま下へずり落ちていきます。
ニードルはストーンと同じくその場停止ですが、こちらは坂の途中でもピタリと止まります。その代わり空中ではすぐには静止せず、落下してから止まります。
ホイールは壁、障害物、バンパーなど転がって通れないものにぶつかるまで一直線に走り続けます。地形も完全に無視して走れますが、一旦使うと止まるまで解除出来ないのが難点。
バーニングはホイールと同じく一直線に飛んでいきますが、こちらは空中でも出せぶつからなくてもそのうち止まるのが差別点。但しホイールほど地形には強くありません。
UFOは使った高さ、使った時の速さで十秒間自由に方向転換が出来るようになります。十秒経たなくても任意解除や、壁などにぶつかる事でも解除されます。
これらコピー能力は、対象の敵を倒す事で得る事が出来ます。一度得たコピー能力はステージが変わっても継続し、ミスをするか別のコピー能力を得るまで使い続ける事が可能です。
ステージ内には実際のゴルフよろしく、様々な地形が存在します。まあゴルフにはない地形も多いですが、これらの性質をよく把握する事も攻略の第一歩です。
池は落ちるとショットの威力が大幅に落ちます。フリーズかホイールで落ちずに渡れる他、強いスピンが掛かっていると水切り出来る場合もあります。
芝は細かい矢印状の模様が描かれ、上を通ると模様の方向にショットが流されていきます。打ち上げている時は、着地の瞬間に軽く方向転換がかかります。
バンカーは転がって通ろうとすると急速に減速し、打ち上げた状態で飛び込むと即止まります。脱出するには打ち上げ必須。
トゲは触れるとバイタリティが一つ減ります。キャラとして動いているトゲ(ゴルドー)もいます。
黄色い矢印のマークはキックパネル。上に乗ると矢印の方向にショットが方向転換します。
赤い連続した矢印はダッシュ板。上に乗るとショットが矢印の方向に逸れ、更に加速します。
ベルトコンベアーは転がって通ると上に乗っている間だけ移動方向にショットが軽く流されます。そして上で止まると、そのまま終点まで運ばれていきます。
WARP板は二つで一つ。片方の上に乗ると、もう片方の上へとワープします。色によってワープ後の軌道が変わり、青は矢印の向きに方向転換、赤は上に乗った時のままの方向に移動します。
トランポリンは打ち上げて着地させると、いつもより高くバウンドします。転がして通した時は普通の床と同じ。
バンパーは転がって触れると跳ね返り、その際ちょっとだけ跳ね返った力も加わります。打ち上げれば越える事が出来ますが、その先がステージ外だとOBまっ逆さま……。
回転床は絶えず回転していて、上に乗るとショットが回転方向に流されます。ステージによっては、回転のオンオフを切り替えられるスイッチがある場合もあります。
エアカーテンは上を通ると、カービィがふわふわと宙に浮き上がります。打ち上げた状態でも高さ次第では浮きます。
存在するエリアは全部で七つ。一つのエリアに八つのステージがあり、残機が全てなくなる前に八ステージ全てを制覇する事でそのエリアはクリアとなります。
各ステージのクリアにかかった打数の合計がそのエリアの総合スコアとなり、そのスコアによって銅、銀、金のメダルがそれぞれ与えられます。
最高の金メダルを得るのは至難の業で、実質全ステージを最低打数でクリアしていく事が求められます。というか自分のプレイでまだ一回もお目にかかった事ない。
ちなみに全エリアで金メダルを取るとどれでも好きなステージで遊べるように……って出来るか! 極めようと思うと途端に難しくなるのが本シリーズのお約束とは言え……。
余談ですが本作でのセーブデータは、自分で用意されたツールを使って絵を描く事で表現されます。この絵はベストスコアのネーム代わりにも使われるので、複数人でセーブデータを使い分けている時なんかは誰が一番いいスコアを取ったかが一目瞭然でちょっといい感じ。
『カービィなら安牌』と思って買ったはいいものの、実質ゴルフゲームのような本作はゴルフゲームをやった事がない筆者とはとことん相性が悪かった。とはいえ完成度の高さは折り紙つきなので、ゴルフゲームが得意なら是非。
とりあえず、今回はこれにて。




