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第百七十六夜 ザ・ブルークリスタルロッド

一つ、ゲームの話でもしようか。



ナムコがアーケードで一世を風靡していた頃の作品の一つに、「ドルアーガの塔」があります。騎士ギルガメスが囚われた恋人のカイを救い奪われたブルークリスタルロッドを取り戻す為に悪魔ドルアーガの支配する塔に挑む、RPG要素を持つアクションゲームです。

アーケードで稼働開始するや否や、全六十階のフロアを誰よりも早く踏破してやろうと挑戦するものが続出。全国的な大ヒットとなったのです。

その後シリーズはアーケードゲームの「イシターの復活」、ファミコンの「カイの冒険」と続きます。ジャンルは全て謎解きを絡めたアクションで、高難度であるところも統一されていました。

しかし、「ドルアーガの塔」から始まった一連の物語の最終章とされるゲームがアドベンチャーゲームである事を知るユーザーはそう多くありません。大作ゲームが次々とスーパーファミコンで発売される中、そのゲームは大々的な宣伝をされる事もなくひっそりと発売されました。

その名は「ザ・ブルークリスタルロッド」。今回のテーマとなります。


本作はスーパーファミコン黎明期、旧ナムコ、現バンダイナムコエンターテインメントよりスーパーファミコンにて発売されたアドベンチャーゲームです。但し「ザ・ブルークリスタルロッド」はゲームとしてのタイトルで、シリーズの系譜としてのタイトルは「ギルガメスの道」となります。

以下はストーリー。今とは違う時間、こことは別の世界で――。ユーフレート川のもたらす恵みにより繁栄する、バビリムという国がありました。バビリムの民は信仰厚く、神々もまたそんなバビリムの民を優しく見守っていました。しかしある時、ユーフレート川の下流に位置するスーマール帝国がバビリムに攻め入ります。戦いを知らないバビリムは瞬く間にスーマールに制圧され国王マーダックも死亡、バビリムはスーマールに支配されてしまう事になります。バビリムを支配したスーマールはバビリムの民を使い、バビリムに高い高い塔を作らせます。それは遥か天界よりバビリムを照らす天界の至宝、ブルークリスタルロッドを奪う為でした。それに気付いた神々の王、天空神アヌは急いで塔に雷を落としこれを破壊しましたが、ロッドの光が塔により遮られてしまっていた事で、それに封じられていた悪魔ドルアーガが復活してしまったのです。ドルアーガはその強大な力で直ぐ様塔を修復し天界からロッドを強奪、塔の中に隠してしまいました。ロッドの光を失い、闇に包まれる世界。塔の建築に駆り出されそこで大怪我を負い、眠り続ける王子ギルガメス(以下ギル)を看病するギルの恋人にしてバビリムの巫女でもあるカイも、そんな世界を憂う者の一人でした。カイは神々に、毎日のように祈り続けます。その祈りは神々の元へ届き、カイは愛と戦いの女神イシターから勇気を身軽さに変えるティアラを授かります。ティアラの力を借り、ロッドをドルアーガから取り戻すべく単身塔に挑むカイ。しかし力及ばず、カイは囚われの身となってしまいます。更に二度と侵入者が塔を登って来れないよう、ますます塔の警備を固めてしまったのです。一方その頃長き眠りから目覚めたギルは、謎の男からカイの身に起こった出来事を知らされます。カイを救いロッドを取り戻す力が欲しいと、神々に祈りを捧げるギル。その祈りは再び神々の元へ届き、ギルは女神イシターから勇気を力に変える剣を授かります。神々から授かった剣を手に、黄金の鎧を身に纏いギルはドルアーガの待つ塔へと挑みます。途中ドルアーガの手下でありながらドルアーガを裏切ったサキュバスにロッドを託されながら、幾多の敵を切り抜けて、遂にギルはドルアーガを打ち倒し、カイを救い出したのです。しかし、それで終わりではありませんでした。主を失った塔は崩壊を始め、しかも行きとは大きく構造が変わった中を二人は降りていかねばならなくなったのです。力を合わせ、ドルアーガの配下の生き残り達を退けながら脱出を目指す二人の前に、アキンドナイトという強敵が立ち塞がります。このアキンドナイトはドルアーガ亡き後世界を我が物にしようとする悪魔アンシャーが差し向けた刺客で、元はと言えばこのアンシャーがスーマールの皇帝バララントを唆したが為にバビリムは攻め込まれたのです。しかしそれによりドルアーガが復活してしまい、ドルアーガより格下のアンシャーは好き勝手が出来なくなりました。そこでギルを使ってドルアーガを倒させ、更に塔から降りてきた二人を始末しロッドも奪うという漁夫の利を狙ったのです。しかし強敵アキンドナイトも、力をつけた二人の敵ではありませんでした。見事アキンドナイトを打ち倒した二人は、やっと塔の外へと脱出します。後はロッドを神々に返し再びバビリムをロッドの光で照らす為、天界を目指すだけ――。果たして二人はロッドを天界に戻し、バビリムに本当の平和を取り戻す事が出来るのでしょうか? 二人の新しい旅が、今幕を開けます――。といった感じになっています。

またえらく長くなりましたが、作中でこれ全部予備知識として持っている事を要求されるんだから仕方ない。実際シリーズ過去作をプレイ済みでもゲーム本編しか知らないと、登場人物全員『これ誰?』となる事受け合い。まあゲームが開始してからいきなり出てくるキャラもかなーり多いんですが。


本作はアドベンチャーゲームと言っても探索要素はあまりなく、進行も四つの地域を順番に巡り時々出てくる選択肢を選ぶだけと実に簡単なものになっています。誤った選択肢を選ぶ事による途中バッドエンドなどもなく、必ずいずれかのエンディングには辿り着く仕組みです。

本作で迎える事になるエンディングの種類は全部で48種類。地域を三つだけ巡ったか四つ全て巡ったか、そしてそれら地域をどの順番で巡ったかでエンディングの種類は変わるようになっています。

とはいえ実際のところ、三つしか地域を巡らないエンディングはどれも順当にギルはバビリムの王になりました、で終わり、そこに付け足される補足がちょっと異なるだけみたいな感じなので、ぶっちゃけ水増しと言われても仕方ない気はします。48あるエンディングの都合半分がこれなので……。

それでも本作のストーリーを手掛けたシリーズの生みの親、遠藤雅伸氏によれば本作のエンディングは全て等価値であり優劣は存在しない、という事になっているようです。うん、半分がほぼ同じじゃなかったら信じた、その話。

まあそうは言っても、四つの地域を全て巡った方のエンディングが多彩かつ衝撃的なものが多いのは確か。旅の中多くの仲間達に恵まれ彼らと共により良い国を作るという王道なものから力こそ全てと確信したギルの手によってバビリムが軍事国家として生まれ変わる、ギルが女神イシターの夫として無理矢理神の座につかされる、果てはギルがドルアーガに替わる最強最悪の悪魔となって世界に君臨するなんていうエンディングまで用意されています。

中でも実在の神話と同じく神の傲慢さ、身勝手さを感じられるエンディングが幾つかあるのが興味深いところ。神は人の為にいるのではなく、あくまで神自身の都合で動いているというのが実に人間臭くていいと思います。


本作に存在する地域は大きく分けて、『バビリム国』、『嵐の山』、『炎の崖』、『スーマール帝国』、『死の砂漠』となっております。各地域はバビリム国を中心に東西南北に分かれ、バビリム国以外の地域を訪れる事でストーリーは進行していきます。

バビリム国では行動の指針となるヒントを得られたり、後述のステータスを上下させる事が出来ます。天界に行く条件が揃った時は、このバビリム国から行く事になります。

嵐の山はバビリム国の北に位置する迷いの森を抜ける事で辿り着けます。奥には嵐の神ラマンかサキュバスのどちらかがおり、ギル達を手助けしてくれます。

炎の崖はバビリム国の東に位置するラビリンスを抜ける事で辿り着けます。上空には空中庭園があり、そこにいる正義の神ガールーはギル達に道を示してくれます。

スーマール帝国にはバビリム国南の船着き場から船に乗って向かいます。城には皇帝バララントか悪魔アンシャーが……。

死の砂漠はバビリム国の西に広がっています。どこかに黄泉への入口があり、中でギル達は黄泉の神ナーガルか悪魔ドルアーガとの邂逅を果たす事になります。

地域を担当している者が二人いる場合はそこまでのストーリー進行によりどちらが、或いは両方が出てくるかが変わります。また役割自体もストーリー進行によって細かく変わり、徹頭徹尾ブレないのは小悪党アンシャーぐらいのものです。

中でもストーリーによって最も立ち位置が変わるのが、かつてのラスボスドルアーガ。ある時はすっかり改心してギル達にも協力的だったり、またある時はギル達に復讐する機会を虎視眈々と狙っていたり。そしてある時は神とはまた異なる視点で人の世を見据える、ある意味もう一人の神であるかのような存在だったり。

どれがドルアーガの本当の姿という訳でもなく、恐らくどれもドルアーガという悪魔の側面の一つであるのでしょう。流石ラスボスだっただけあり、なかなか味な役回りを与えられたなあと思います。


さて本作には前述の通り、ステータスが存在します。ステータスは全部で十六の項目に分かれており、そのうち進行に大きく影響するのは力、知力、運、正義、心、意志、愛、経験の八つとなります。

ステータスを上げるにはバビリム国では『マハールの家』でクイズに全問正解する、『ドルアーガの塔跡地』に行く、『エルブルズの洞穴』を利用する。またはスーマール帝国でイベントをこなすなどがあります。但しドルアーガの塔跡地では逆にステータスが下がる事もあります。

ステータスを下げるにはバビリム国にある『ジグラッド』を利用する必要があります。但し狙いのステータスを下げるには質問による分岐を全て把握しておく必要有り。

各地域にはストーリー進行によってその地域のイベントを行うのに相応しいステータスであるかどうかという審査があり、相応しければ楽に先に進む事が出来ますが相応しくなければ最悪その地域に行く事すら出来なくなります。どの地域がどのステータスをどのくらい要求しているかは完全にマスクデータなので、プレイヤーは四苦八苦しながらステータスを上げ下げしていくしかありません。

ならば全てのステータスを高く保てばいいのでは?とお思いかもしれませんが、そこが本作の嫌らしいところ。要求されるステータス幅は必ずしも高いとは限らず、時にはステータスを低めにしないとその地域に行くには相応しくないと判断されてしまうのです。

これで困るのがスーマール帝国行き。他はまだ行くのに苦労するようになるというだけで行ける事は行けるんですが、ここだけはステータスが相応しくないと船自体が出航しなくなります。

下手するとストーリーを進めている時間よりも、ステータスを上げ下げしている時間の方が長いなんて事にも……。せめて『どこに行くにはどのステータスがどのくらい必要』の大まかな方針だけでも教えて貰えたらもっと遊びやすかったのに……と思います。


ところで本作、開発が結構難航したのでしょうか。説明書に載っていない仕様も、結構多かったりします。

その一つが前述のエルブルズの洞穴。ここはステータスを上げる為には頻繁に利用する事になる施設なのですが、説明書にはその存在は全く記されていません。

他にも『完成直前に急に言われたから説明書には載せられなかった』と作中で名指しでそれを入れるよう言った人物を挙げた上である仕様を紹介する一幕があったりなど、本作の開発環境はかなりハードであったのかもしれません。とはいえやってる方としては凄く助かる追加仕様だったのには違いないんですが。


ちなみに本作は基本3Dマップを操作していく事になるんですが、視点は常に北向きとなっています。つまり、左右に何がある、後ろに何があるという確認がパッと見出来ない訳です。

一応、行ける方向を確認出来るボタンは付いているのですが……。やっぱり容量節約の為の策だったのかな?


シリーズ最終章と銘打たれた本作は確かに見るべき部分はあるものの、ゲームとして楽しかったかというと少し首を傾げずにはいられません。ちょっと変わったアドベンチャーゲームがやってみたい、程度の興味なら、止めておいた方が賢明かもしれません。



とりあえず、今回はこれにて。

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