第百六十九夜 アークススピリッツ
一つ、ゲームの話でもしようか。
前回に引き続き、今回も日本テレネットのゲームのお話。日本テレネットには「ヴァリス」シリーズともう一つ、「アークス」シリーズという看板作品がありました。
こちらは家庭用機での展開はほぼしておらず、当時のパソコンユーザー以外には馴染みの薄い作品であると思います。しかしながらそのパソコンユーザーからの人気は高く、幾つも続編が出たシリーズでもありました。
しかしそんな「アークス」シリーズも日本テレネットの業績悪化に伴い、「ヴァリス」シリーズと同じくアダルトゲーム会社に版権を身売りされアウアウな目に遭う事になってしまうのですが……。まあそれは、ここでは置いておきましょう。
今回ご紹介するのは、そんな「アークス」シリーズの貴重な家庭用機移植版。「アークススピリッツ」です。
本作はスーパーファミコン黎明期、サミーよりスーパーファミコンで発売された画面見下ろし型アクションゲームです。通常画面見下ろし型と言えばモニターに平行な作りになった画面が多いですが、本作では画面全体が斜めに傾いたクォータービュー形式が取られています。
以下はストーリー。物語の舞台である地、アルカサスにはかつて一人の邪悪な悪魔が存在した。その名はカストミラ。自らを神と名乗るカストミラは、その強大な力で世界を支配すべく、配下である魔物達を率いて世界にその魔の手を広げていった――。しかしその時、カストミラの前に立ちはだかった一人の者がいた。光を操る聖なる魔女レアティである。両者の戦いは幾日もに及び、その戦いは山は砕かれ平地に変わり、湖は吹き飛び荒野になるほど激しいものだった。互角とも思えた戦い、それを僅かな差により制したのはレアティだった。レアティは二度とカストミラが蘇らないよう、己の力を一本の宝剣に込めてアルカサスの王に託した。その宝剣は後に『レアティの力』と呼ばれるようになり、アルカサスの平和の象徴となった。それから長い長い時が経ち――。今アルカサスの地に、再びカストミラ配下の魔物の影が蠢き始める。魔物達はカストミラ復活の為、『レアティの力』が安置されている聖域を目指し、途中にある村や町を破壊しながら進んでいった。そんな魔物達の野望を砕く為、今、四人の戦士が立ち上がる。果たして戦士達は、カストミラ復活を阻止する事が出来るのだろうか――? といった感じになっています。
今回もちょっと後半ストーリーは資料が見当たらなかった為、あやふやな記憶のみで書いております。間違ってたらすみません。
ゲームをスタートする前に、プレイヤーは四人のプレイヤーキャラの中から誰か一人を操作キャラに選ぶ事になります。四人はそれぞれ異なる性能を持っており、それぞれに長所と短所が存在します。
ジェダ(剣士)は剣から衝撃波を放ち敵を攻撃します。尖ったところはありませんが、総合的に最も扱いやすい初心者向けのキャラです。
エリン(女戦士)は貫通力のある鉄球で敵を攻撃します。無強化状態でも高い攻撃力と高いライフを持つのが強みですが攻撃判定が鉄球の先にしかなく、更に攻撃を強化しても唯一射程距離が伸びないので若干玄人向けのキャラと言えます。
ディアナ(弓使い)は弓を使い敵を攻撃します。無強化状態でも端まで攻撃が届く射程距離の長さが魅力ですが、代わりに攻撃力は最大強化状態でもあまり伸びません。
ヴィド(魔法使い)は火の玉を飛ばして敵を攻撃します。初期ライフが最も低く最初は苦労しますが、ライフを補強してやり更に攻撃を強化すると高い攻撃力と長い射程距離で敵を殲滅し尽くすようになるという大器晩成型のキャラです。
この他にも、ステージによって一時的にサポートキャラが加わる事があります。サポートキャラはプレイヤーキャラの後を追うように動き、自動的に敵を攻撃します。
一度決めたプレイヤーキャラは途中変更は効かないので、各々使いやすいキャラを選ぶといいでしょう。筆者は全キャラでクリアしましたが、確かキャラによるエンディングの違いはそれほどなかった……気がする。
ちなみに各プレイヤーキャラにはそれぞれ戦いに赴くまでのストーリーがあったりするのですが、ゲーム中でそれらが語られる事は一切ありません。ゲーム中では本当に操作キャラその一からその四でしかないのが少々寂しいところ。
ステージ内には幾つか宝箱が置かれており、中には様々なアイテムが入っています。このうち『命の青き薬』だけは取ったその場で使用され、ライフを回復しますが、他のアイテムはアイテム欄から選択して使用する事で効果を発揮します。
アイテムを持てる数は『魔力のクリスタル』だけが別枠で六個まで、他は纏めて六個までそれぞれ持つ事が出来た……筈。今回はネットでおさらい出来る情報がほぼない為、八割があやふやな記憶頼みです。
各アイテムは使用出来る回数が決められており、回数分を使い切る事で消滅します。一度手に入れたアイテムは捨てる事が出来ず、アイテム欄に空きがない時に宝箱を開けても中のアイテムは手に入らないので、持ち歩くアイテムはよく吟味しておかないと肝心な時に使いたいアイテムが使えない……なんて事にもなり得ます。
以下に各アイテムの効果を記します。殆ど使わなかったアイテムも多いので効果が間違っている可能性もあります、すみません。
『魔力のクリスタル』はプレイヤーキャラごとに個別に設定された魔法を使用可能にするアイテムです。一度に消費する量によって使用可能になる魔法の種類は変わり、多く消費すればするほどより強力な魔法を使えるようになります。ちなみに最強魔法に必要な個数は決まっていて、それ以上を一気に使っても無駄になるだけなので勢い余って使いすぎない事。
『生命のランプ』は使ったその場でライフを全快にしてくれます。緊急時の為に一つは持っておくと、安心して先に進めます。
『エレメントパーティ』は画面上にいる敵全てに攻撃を加えます。与えるダメージは然程高くないので、頼るにはちょっと心許ないかも……。
『死なずの薬』は一定時間ダメージを受けなくなります。敵の攻撃が激しい時などに効果を発揮するアイテムです。
『清き体の解毒草』は毒などの状態異常を治療してくれます。こちらも常に一つは確保しておくと安心。
『リバースドール』はライフが0になっても一度だけ復活する事が出来ます。本作の最重要アイテム故に数も少なく、後半はこれをどこまで維持しておけるかが鍵となります。
実は今回はスーパーファミコン版ではなくメガドライブ版の攻略記事を参照しながら記憶を掘り起こしている訳なんですが、それによると全く身に覚えのないアイテムがあと二つ存在してるんですよね……。単純に使わなすぎて忘れ去っているだけか、それとも機種によって違いがあるのか……。
ステージ奥にいるボスを倒すと、宝石が現れます。宝石の色は時間経過で青から赤に、赤から青に交互に変化し、どちらの色の宝石を取ったかで強化される部分が変わります。
青い宝石を取ると、ライフの最大値が上がります。とにかく死ににくくしたいならこちらを選びましょう。
赤い宝石を取ると、攻撃が強化され攻撃力や射程距離が上がります。殺られる前に殺る、見敵必殺重視の方はこちらで。
強化の最高段階はライフは八つ、攻撃は三段階です。最高段階に達している方の宝石は取っても意味がないので、無駄のない強化を心掛けましょう。
またライフの方は、スコアを一万点ずつ稼ぐ事でも一つずつ増えていきます。但しこちらはコンティニューしてスコアが0になると元のライフに戻ってしまうので注意が必要。
本作の難易度はと言えば、最初は慣れないクォータービューでの操作に苦戦するもののそれに慣れてしまえばそれほどでもありません。敵の攻撃は少々激しめですがリカバリー手段は多く、時間はかかってもステージ1の時点でスコアを稼いでライフを最高の8にしてしまえばそう簡単には死ななくなります。
アクションゲームが苦手な方の筆者でもノーコンティニュー全員クリアが出来たのですから、実に絶妙な難易度と言えます。と言うかぶっちゃけコンティニューしない方が楽。
一方ストーリーの方はなかなかに重い。道中で出会う人々の殆どは救われず、途中加入のサポートキャラ達もその大半は最後に命を落とします。
そうして生まれた負の感情こそが、何よりもカストミラの力になる……。この辺りの展開は、実に上手く出来ていると思います。
恨み憎しみのままに、敵に武器を向けるか? それとも恨み憎しみを捨て去り、ただ人々の平和の為に敵に戦いを挑むか? この決断が、最終決戦の行方を左右する一因になるとは言っておきます。
タイトルデモ以外で語られるストーリーは断片的とは言え想像力を掻き立てるには十分で、難易度も程良い感じなので、パソコンで本作が人気となったのも納得出来る気がします。こんないいゲームの版権をどうしてドブに捨てるような真似をしたのか、筆者には理解出来ません……。
とりあえず、今回はこれにて。