第百六十七夜 サンサーラ・ナーガ2
一つ、ゲームの話でもしようか。
世にゲームは数あれど、続編発売まで漕ぎ着けたゲームというと結構限られてきます。任天堂やスクウェアエニックス、カプコンやバンダイナムコエンターテインメントといった大手の会社が出したゲームならよく続編が出たりしますが、そうでないあまりメジャーでない会社が自社ゲームの続編を出すというのはあまり聞かない話です。
今回はそんな、あまりメジャーでない会社から出た続編ゲームのお話。ファミコン~スーファミ世代のRPG好きなら、もしかしたら名前くらいは知ってるかもしれませんね。
今回のテーマ「サンサーラ・ナーガ2」、どうぞお楽しみ下さい。
本作はスーパーファミコン黎明期、ビクターエンタテインメントよりスーパーファミコンにて発売されたRPGです。監督(プロデューサーやディレクターではない)として押井守氏が参加しているなど豪華スタッフを謳って発売された本作は、ストーリー面で言えば正直言うだけの事はあったと思います。
以下はストーリー。竜と共に生きる『竜使い』達を纏め上げる『竜使いギルド』、その総本山である『竜苑』で、ある日竜の卵を抱いた赤ん坊が捨てられているのが見つかった。竜苑の住人に拾われた赤ん坊はすくすくと育ったが、卵の方は一向に孵らない。それでも赤ん坊から成長した子供は卵を抱き続け、周りの者はそんな子供を馬鹿にした。ただ一人、天才と言われた竜使いの少女アムリタ以外は。次第に心を通わせるようになる、子供とアムリタ。『大人になったら、一緒にこの卵の秘密を解き明かそう』。まだ幼い二人はそう心に誓い合った。やがて時が経ち、子供が少年(または少女)に、アムリタが大人へと成長した頃、突如アムリタが竜苑の倉庫に火を放ち自分の竜と共に逃亡するという事件が起こる。その直後に孵った少年(または少女)の卵から産まれたのは、千年に一度産まれるという生まれながらに人の言葉を話す事の出来る竜、白竜だった。竜苑の長老は少年(または少女)に竜使いの資格を与え、お尋ね者となったアムリタを追うよう指令を下す。このタイミングで少年(または少女)の卵が孵ったのは、果たしてただの偶然なのか。そしてアムリタの行動の真意とは? 答えはアムリタが向かった、階層世界の先にある――。といった感じになっています。
本作では主人公の性別が選べるようになっており、それによるステータスの変化はないものの装備品のアクセサリーの装備可能な種類が大きく変わってきます。女の子は豊富な種類のアクセサリーを装備出来ますが、男の子は『ファールカップ』というアクセサリーを装備出来るのみとなっております。
なお主人公と主人公の使役する竜達の名前は自分で付けるようになっています。デフォルト名は存在しないので、皆様是非素敵な名前を付けてあげて下さい。
さて上で竜『達』と言ったように、主人公が使役する竜は白竜一匹ではありません。ストーリーが進むと白竜は双子を身籠り、やがて産まれた子供達が一緒に戦ってくれるようになるのです。
仔竜の種類には蒼竜、赤竜、緑竜の三種類があり、産まれた仔竜がどの種類になるかは事前に買った安産のお守りの色で決まります。お守りは必ず二種類買う必要があり、また同じ種類を二つ買う事は出来ません。
一緒に旅立てるようになったばかりの仔竜はまだ色の区別も出来ない、本当に幼い状態です。しかしレベルを上げ成長する事でだんだん色がハッキリし、体も大きくなり、やがては母である白竜よりも大きくなるのです。立派に成長した仔竜達を見ると、何だか感慨深い気持ちになります。
以下に白竜を含めた、竜達の色別の特徴を挙げます。パーティー編成の参考にして下さい。
白竜は万能型で、直接攻撃もそこそこでマントラ(本作の魔法)も使えるオールマイティな性能。出産時を除けば最初から最後までずっと一緒にいてくれる、頼もしい相棒です。
蒼竜は特殊能力は一切持ちませんが、強い力による直接攻撃で敵を粉砕してくれます。後半になると、直接攻撃は蒼竜のものでないとまともにダメージが出ない、なんて事も……。
赤竜は直接攻撃は一番弱いですが、代わりにMPを消費して敵全体に様々な種類のブレスを吐く事が出来ます。ブレスは非常に強力ですが、MPが切れるとやる事がなくなりがちなのでMP管理は念入りに。
緑竜は白竜と同じく、そこそこの直接攻撃力を持ちマントラを使います。死ににくいパーティーを作るなら必須の存在ですが、他の仔竜達と比べて成長が遅いのがネック。
なお注意しなければならないのは、竜達は死んでもアイテムやマントラで復活出来ますが、主人公が死ぬとその場でゲームオーバーになってしまうという点です。竜達は確かに頼れる味方ですが、いざとなったら主人公を生き残らせる事を最優先で。
本作では人型の敵を除き、敵を倒してもお金は手に入りません。ではどうやってお金を稼ぐのかと言うと、倒した敵を捕獲して売らなければいけないのです。
敵を全滅させると、その場で竜達に食べさせるかそれとも捕獲するかの選択肢が出ます。食べさせるを選ぶと餌となった敵の持つ経験値によって竜達の経験値が更に増え、捕獲するを選ぶとそのまま敵を捕獲して持ち歩く事になります。
捕獲した敵は世界各地にある『はらたま』という立ち食いそば屋で売る事が出来ます。この時強い敵ほど高く売れるとは限らず、強い割に売値はそうでもない敵もいれば強さは大した事がないのに売値が高めというボーナスキャラも存在します。
また仔竜達がまだ生まれたての時は、これら捕獲した敵を食べさせて旅が出来るレベルになるまで育てる事になります。ここで与えられる経験値は餌にした時と同じく敵の持つ経験値に依存するので、経験値の高い敵を多く食べさせてやれば成長するのも早くなります。
ちなみにはらたまでは敵を売る他、メニューから好きな品を選んで食べる事も出来ます。はらたまで食事をすると主人公のHPが少し回復し、戦闘中の様々な行動に関わるLUCの状態がランダムで変化します。
はらたまのメニューは無駄に豊富で、選んだメニューの値段が高ければ良いLUCの状態になる訳ではないのが面白いところ。メニューの内容は店舗によってそれぞれ異なるので、いっそ全メニュー制覇でも目指してみる?
本作の装備品の種類は武器、兜、鎧、籠手、靴、マント、アクセサリーと実に多いですが、それら装備品の大半には耐久値が設定されています。戦闘後に装備中の品の耐久値が0になっているとその品は壊れ、何も装備していない状態に戻ってしまいます。
現在どれぐらい耐久値が残っているかを確認する事は出来ませんが、耐久値が残り少なくなると戦闘後にそれを伝えるメッセージが出るようにはなっています。メッセージが出るようになったら、替えの装備がちゃんと用意してあるか確認すべし。
また一部装備品はアイテムとして使っても効果がありますが、そちらでも耐久値は消費されます。便利だからといって調子に乗って使ってたらすぐに壊れた……というケースもあるので注意する事。
街やダンジョンを歩いていると、時折青や黄色の円形の模様が床に描かれているのが目に入ります。これは『タオ』といい、中央に乗る事で色に応じた様々な効果が表れるようになっています。
青いタオはエリア間の移動に使います。基本何度でも使えますが、中にはイベントが進行しないと使えないものや一方通行のものもあります。
黄色いタオはセーブポイントです。また、お金を払う事で死んだ竜を復活させる事が出来ます。
緑のタオはパーティーのHPとMPをその場で全快にしてくれます。長いダンジョンの先にこれがあったりするとホッとします。
赤いタオはイベント用の特別なタオです。その為数も少なく、目立たない存在でもあります。
白いタオは何も効果がない、力を失ったタオです。またある条件で、青いタオがこれに変わる事もあります。
各タオの色と効果をしっかりと覚え、有効活用していきましょう。クリアの為には、タオの効果はなくてはならないものなのですから。
本作の世界は八つの階層に分かれており、それぞれが独自の世界を築き上げています。一度階層の移動を行うと二度と前の階層に戻る事は出来ず、主人公は上の階層へと進み続ける事を余儀なくされます。
この時後戻り不可能になるのは実はゲーム的な都合というだけではなく、実はきちんとストーリー的な理由があるのです。その理由はストーリー後半、ある階層を訪れた時に明らかになり、そこまで辿り着いたプレイヤーに衝撃を与えてくれます。
その衝撃を乗り越えて、それでも主人公は前に進まなければなりません。ただ一つ、アムリタを追うという目的の為に……。
もう一つ、本作の全てのキャラクター・敵デザインを担当しているのはかつてファミ通で「しあわせのかたち」などを連載していた桜玉吉氏なのですが、個人的に氏のデザインした竜が物凄く好みなのです。荒々しさよりは神秘性を強く感じるデザインで、一般的なドラゴンのデザインとは一線を画しています。
桜玉吉氏と言えばギャグ漫画のイメージが強かった筆者は、この氏のデザインセンスに大いに驚かされたものです。興味のある方は、是非本作の竜のイラストだけでも拝見なされて下さい。
ちなみにアムリタも氏のイラストでは物凄く美女なんですが……ドット絵に上手く起こせなかったのか、ゲーム内では何だかえらく顔が潰れた感じになってしまっています。それだけが残念。
耐久値システムなど面倒臭い部分はありますが自分の手で仔竜達を育てていくのは純粋に楽しく、それだけでも本作を買った価値があるかなと思います。今からやるならゲームボーイアドバンスの、前作とセットになった移植版の方がいいかも。
とりあえず、今回はこれにて。




