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第百六十夜 MOTHER2 ギーグの逆襲

一つ、ゲームの話でもしようか。



ファミコンで続々とRPGが出されていた時代。任天堂から、ある一本のRPGが発売されました。

コピーライターの糸井重里氏が中心となって開発されたそのゲームの名は「MOTHER」。1980年代のアメリカを舞台とし、宇宙人と戦いながら各地に残されたメロディを集めていくというRPGとしては独特の世界観とストーリーは熱狂的なファンを生み、群雄割拠のRPG界でヒットを記録するに至りました。

時は流れ、スーパーファミコンをメインとしたRPG黄金時代。長い開発期間を経て、遂にその続編が発売される事になったのです。

その名は「MOTHER2 ギーグの逆襲」。待望の続編は、ハードが変わり果たしてどのように進化したのでしょうか。


本作はスーパーファミコン黎明期、任天堂よりスーパーファミコンにて発売されたRPGです。今回も糸井重里氏主導の元、一風変わった感じの作品に仕上がっています。

以下はストーリー。イーグルランド州にある街、オネット。静かなこの街で、ある夜ちょっとした事件が起こった。街の外れにある山に、隕石が落ちてきたのだ。山のふもとに住んでいる少年ネス(名前変更可)やその隣に住むポーキー・ミンチも隕石を見に行こうとするが、警察が道を塞いでいて通れない。仕方なく家に帰って寝直したネスだったが、更に夜が更けた頃、突然家にポーキーがやって来る。何でも隕石をどうしても見たくてまた外に出たのはいいのだが、途中で弟のピッキーの姿が見えなくなったらしい。仕方なくポーキーと飼い犬のチビ(名前変更可)を連れて、警察のいなくなった山に向かうネス。途中でチビが怯えて逃げ帰ってしまったものの隕石の落下地点で無事にピッキーを発見、皆で帰ろうとしたその時隕石からカブトムシのような小さな生物が現れる。『ブンブーン』と名乗ったその生物は未来からやってきたと言い、『ギーグ』という名の侵略者が近い将来地球を支配してしまうと告げる。そしてネスこそが、それを止められる者として予言された戦士の一人なのだと。突拍子もない話ではあったが、その話に何かを感じたネスは旅立ちを決意。途中現れた未来からの刺客をブンブーンの助力を得て撃退し、まずはポーキーとピッキーを送り届けてからとポーキーの家に向かうがそこでブンブーンがポーキーの母に蝿と間違われて叩き潰されてしまう。瀕死のブンブーンはネスに『音の石』を託し、八つのパワースポットを訪ね音の石にメロディを集めるよう最期に告げると息絶える。ネスは朝日の昇る中、家族に別れを告げ冒険の旅へと旅立つのだった。果たしてネスは、ギーグの地球侵略を阻止する事が出来るのか――? といった感じになっています。

敵がギーグ、八つのメロディを集めるなど前作と共通する部分が幾つかありますが、本作と前作の間に特に繋がりはありません。そもそも前作が1980年代のアメリカの架空の都市が舞台だったのに対し、本作の舞台は1990年代の地球であるという以外は完全に架空の国が舞台な訳で……。


ゲームをスタートし、まず最初にやる事と言ったら名前入力。主人公の名前から始まって、仲間達の名前、飼い犬の名前、好物の名前、カッコイイと思うものの名前……ってちょっと待った。多すぎる。

このうちカッコイイと思うものは主人公専用の攻撃PSIの名前となるのですが、飼い犬はオープニングイベントにちょこっと関わるだけ、好物は自宅に泊まった際に食べられるだけです。でもそんな、一見無駄と思えるところにこだわれるのが本作らしさだったりするのですが。

そういえば仲間の名前を仲間にする時でなく、最初に決めてしまうというのは何気に珍しい気がします。この先こんなキャラが仲間になるのか!とワクワクする要素にはなりますが、あまりに数が多いと却って煩わしいからですかね。


本作で仲間になるのは、自分で操作出来ないゲストキャラを除けば全部で三人。女の子一人と男の子二人となっており、それぞれが特徴的な能力の持ち主です。


紅一点のポーラは非力な代わりに強力な攻撃PSIをガンガン覚えます。敵の攻撃PSIを防ぐサイコシールドも張れるなど守りも万全ですが、回復PSIは敵のPPを吸い取るサイマグネットしか使えません。

眼鏡のジェフは仲間内では唯一PSIを使えませんが、機械類のアイテムは彼にしか使いこなせず直接戦闘力もネスの次にあります。また壊れたアイテムを持って宿に泊まると、そのアイテムを修理して使えるようにしてくれる事があります。

弁髪のプーは攻撃PSIと回復PSIをバランス良く覚えますが、彼専用のもの以外の武器防具を装備すると逆にステータスが下がり、更に故郷の料理や水以外の食べ物や飲み物を口にしても回復は殆どしないという尖りきった性能。他にも戦闘中に今戦っている敵に変身し、その敵が持つ能力を使用する事も出来ますが、その間は一切のコマンド入力を受け付けなくなります。


これに直接戦闘力が最も高く、コストは高いが強力な攻撃PSIと充実した回復PSIを覚える主人公が加わっての四人旅となります。但し仲間達は仲間になればいつでも一緒にいる訳ではなく、途中で一時離脱する事もあります。

なお本作では他RPGで言う呪文や魔法の事をPSI、MPの事をPPと言います。PP回復手段は中盤くらいまでは限られているので、PSIのご利用は計画的に。


本作はシンボルエンカウント方式になっており、フィールドをうろついている敵シンボルと接触すると戦闘開始になります。敵シンボルは積極的にこちらを追い掛けてくるので、運が良ければ逃げ切れるとは言え逃げ切るのは少し困難かも。

また敵シンボルとどんな風に接触したかでどう戦闘が始まるかが決まり、敵シンボルと真っ向からぶつかった場合はそのまま普通に戦闘に入りますが敵シンボルの背後から接触した場合は一ターンこちらが先制出来、逆に敵シンボルに背後から接触された場合は敵に一ターン先制されてしまいます。敵から逃げようとして逆に先制を食らう……なんて事がないように気を付けましょう。

またダンジョンの場合、そこのボスを倒す事で敵シンボルが逆にこちらから逃げていくようになります。その上敵よりこちらがかなり強ければ戦闘に入らず勝てる事もあるので、シンボルエンカウント方式のゲームとしてはかなり快適な方に入ります。


戦闘方式は一般的なRPGと大差ないんですが、他と違っている部分に『グループ分けの概念』と『ドラムロール式ステータス』があります。ここでは順に、それらをご紹介していきます。

グループ分けの方は、本作におけるグループ分けが敵の種別ごとではなくざっくり前列グループと後列グループに分かれているのみという事を言います。こちらの攻撃がグループ攻撃だった場合、同じ列にいる敵ならば種別関係なくダメージを与える事が出来ます。

ドラムロール式ステータスは、本作でダメージを受けたり戦闘中にPSIを使ったりした場合一気に消費した数値まで減るのではなくHPやPPの値が回転しながらゆっくり減っていき、消費した数値まで辿り着いたら止まるというシステムです。PP消費は多くても三桁はいかないので大体止められませんが、例えば一気に即死級ダメージを受けた時、HPが完全に減り切るまでは行動が可能なので、その間に回復してしまえばHPは回復した値まで持ち直すという事が可能になっているのです。

また数値の減少は戦闘に勝利したところで自動的に止まるので、上手くやれば表示されたダメージより少ない実ダメージで済む事も……。即死ダメージを受けても、決して諦めない事が肝心です。


ホテルやデパートにある電話では、様々な人に電話をかける事が出来ます。最初はパパにしか電話をかける事が出来ませんが、ストーリーが進行するにつれてかけられる先も増えていきます。


パパはセーブと、最後にパパに電話をかけてから一度でも戦闘に勝利しているとその累計経験値と同額のお金を口座に振り込んだと教えてくれます。実はお金はパパに電話をしなくても経験値を得た時点で振り込まれるので、そんなに頻繁にパパに電話をしなくても良かったりします。

ママは主人公がホームシックにかかった時に電話すると、ホームシックを克服する事が出来ます。ホームシックは戦闘中行動しない事があるという結構厄介な症状なので、なり次第とっとと治してしまうのが望ましいですがダンジョン奥地だとそうもいかない……。

エスカルゴ運送は荷物預り係である妹のトレイシーに預けるアイテムを送って貰ったり、逆にトレイシーに預けたアイテムを届けて貰ったり出来ます。どちらも一度に三つまで運搬出来ますが、場所によっては配達員が来れない事があります。

マッハピザはSサイズ、通常サイズ、Lサイズの三種類のピザの中から一つを注文出来ます。但しピザが届くまでには現実時間で三分待たねばならず、その間にピザが届かない場所に行ってしまうと受け取る事が出来なくなります。


本当はあと一ヶ所電話をかけられる先があるのですが、ストーリー中一回かける必要があるだけなので紹介は省きます。電話は黒電話なら無料でかけられますが、緑色の公衆電話は使う度に一ドルお金を消費します。


あらすじでも触れた通り、本作では世界各地にある八つのパワースポットを巡り音の石にメロディを集める事が当面の目的となります。このパワースポットは『主人公の場所』と呼ばれていますが、訪れた時点では別の生き物がパワースポットを乗っ取っており、その生き物を倒してパワースポットを奪い返す必要があります。

気を付けなければならないのはストーリー進行上必ず途中で立ち寄る事になるパワースポットとそうでないパワースポットがあるという点で、最終的には全てのパワースポットに立ち寄らなければならない都合上、そうでない方を見逃してしまうと後でまたそこまで行かなくてはならなくなり後々面倒臭い事になってしまいます。というか初回プレイでなった。なのでそれっぽい場所の話が出たら、行けるうちに行っておきましょう。


さて本作の魅力の一つと言えば、実に多彩なアイテム群。回復アイテム一つとってもその種類は多岐に渡り、小味の利いた解説テキストと相まって何だか手に入れるだけで楽しくなってきます。

更に回復アイテムには調味料をトッピングする事も出来、それがピッタリな組み合わせだと通常より回復量が増える仕組みになっています。但し調味料は上から順に、食べ物の回復アイテムを使う際自動的に使われてしまうので、アイテムで回復するタイミングはよく考えた方がいいかもしれません。

個数限定、しかも使ったらなくなるという使うのが勿体無くなるアイテムもありますが、トレイシーに預けられるアイテムもそう多くはないので時には思い切りも必要。アイテムも、使われてこそ本望というところでしょう。


そして本作最大の魅力と言えば、どこかとぼけていて味のある膨大な数のテキスト。世にRPGは数あれど、道行くその辺の一般人との会話まで楽しいRPGなんてなかなかないと思います。

本作におけるテキストとはただの進行のヒントではなく、そこに生きる人々の生活模様を表すものでもあります。それはともすれば無駄にも映りがちなものですが、プレイしているとその一つ一つが興味深く、全く無駄に思えないのです。

そんな本作の個性的なテキストを最も象徴する存在が、ストーリー中盤に訪れる事になるサターンバレーに住む不思議な生き物『どせいさん』。どせいさんの台詞は全て『どせいさん語』という他と違うフォントで綴られ、そのぽえぽえとした感じを遺憾なく発揮してくれています。

このどせいさん、実は高度な科学技術を持っており、ストーリー終盤では重要な役割を担ったりするんですが、そんな事より何より見た目も台詞も可愛い。この味わい深さは、本作でなければ出せなかったと思います。

この「MOTHER2」というゲームの中で、人々は確かに生きているんだなあ……なんて、そんな事を考えてしまったり。この辺は、前作から続く魅力だったりしますね。


作中に敢えて散りばめられた無駄を楽しむ事が出来る人にお勧めの、そんなRPG。任天堂らしい『楽しむ事』に満ちた本作は、ゆとりのなくなりつつある現代にこそ遊んで欲しい作品だと思います。



とりあえず、今回はこれにて。

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