第百五十二夜 ソード・ワールドSFC2 いにしえの巨人伝説
一つ、ゲームの話でもしようか。
前回はTRPGがコンピューターRPG化した作品、「ソード・ワールドSFC」を題材にお送りしました。これが意外と売上が良かったのか、何とこの企画、第二弾が出る事になったのです。
しかし前作と全く同じ仕様では芸がありません。そこで今回は、決められた地域の中だけで旅をするのではなく街から街へと渡り歩いて長い距離を旅するという手法が取られる事になりました。
それに相応しい原作小説の用意もばっちり。はてさてTRPGのコンピューターRPG化第二弾、「ソード・ワールドSFC2 いにしえの巨人伝説」とは如何なるゲームに仕上がったのやら……。
本作はスーパーファミコン黎明期、T&Eソフトよりスーパーファミコンにて発売されたRPGです。前作と異なり、今回はスーパーファミコンのみで展開した作品となります。
以下はストーリー。古代魔法王国時代の研究が盛んな街オランで仕事を探していた主人公は、意気投合した仲間達と共にオランで最近発見された遺跡調査の依頼を受ける。調査は滞りなく終わり、一行は宿に戻るがそこにオラン王に仕える若き青年騎士アーヴェルが現れる。アーヴェルの話ではある事件の犯人と思われる人物が一行の調べた遺跡に出入りしている姿が目撃されており、それを確かめる為に自分を同行させてもう一度遺跡を調べて欲しいという。何故王に報告しかいのかと問う一行に、アーヴェルは王は今回の事件には沈黙を守っており、仕方なく自分が独断で調査しているのだと語る。アーヴェルを仲間に加え、紆余曲折の末犯人を捕らえる事に成功する一行。しかしその後、王がわざと犯人を泳がせオランを狙う国による更に大きな陰謀を暴こうとしていた事実が判明してしまう。王の意に反したとして、騎士の位を剥奪されるアーヴェル。アーヴェルが騎士に戻る為の条件として王はオランより遥か西、『自由人の街道』の最果てにある村パルマーに赴き、その名の由来となった『自由人の街道』を造り上げた功労者、パルマーの手記を借り受ける事を命じ、その旅にアーヴェルに関わった一行にも同行して欲しいと依頼する。依頼を受け、アーヴェルと共にオランを旅立つ一行。しかしその旅の先には、巨人達を操る謎の集団の暗躍があり――。アーヴェルは無事パルマーの手記をオランに持ち帰り、騎士の名誉を取り戻す事が出来るのか。そして謎の集団の目的とは一体――? 『自由人の街道』を舞台に、大陸を横断する長い長い旅が今始まる――。といった感じになっています。今回は前作と違って、まず前提となる大目標が先にある感じですね。
今回の原作小説は白井英氏著の「自由人の欺き」。固定キャラであるアーヴェルはその主人公で、前作同様同作の登場人物達も仲間として登場します。
ちなみに前作原作の「死せる神の島」登場面子も続投で仲間として出てきますが……他三人はともかく今回の仲間キャラでは唯一のファイター一本槍で、同じく戦闘技能がファイターのみのアーヴェルと完全に役割が被るバートだけは厳しいかも。どちらかに無理矢理プリースト技能を持たせ、神官戦士に変えてしまえばまた違うのかもしれませんが……。
さて今回もキャラクターメイキングから入る訳なんですが、設定の細かい内容は前回に譲るとして、一つ前作から変化した事があります。何と今回は、ステータスを決める際に実際に自分でダイスを振れるようになりました!
と言っても内部処理的には前作のランダムと然程違いはないんですが、やはり決定に自分の手が加わってくるとなると気合が違うもの。ボタンを押す長さによってダイスの勢いも変わってくるので、そりゃいい目が出てくれと願いを込めてボタンを長押ししてしまうというものです。
あまりいい目が出なくても、今回も何度でも振り直しは可能なのでご安心下さい。また、いちいちダイスを振るのは面倒臭い!という方の為に前作同様のランダム決めも続投し、初めにどちらを選ぶか選択出来るようになっています。
また本作は前作経験者をプレイの対象としている節があり、ある程度技能レベルが高い状態から始められるよう最初に貰える経験点が前作より多めになっています。技能によっては初めからレベル3くらいには出来ますが、その分敵も最初から容赦がないのでそうそう楽はさせては貰えません。
キャラを作成しゲームを開始したら、やっぱり最初にやる事は買い物と仲間集め。なお今回はオランを遠く離れる為、前作で『奇跡の店』でしか買えなかったアイテム群は各地にいる行商人から購入する事になります。
今回も五人パーティー+時々六人目のゲストキャラ、という流れは変わらないのですが、そのうち一枠には固定キャラとしてアーヴェルが入る為、登場する仲間キャラのうち実際に仲間に選べるのは三人までです。しかも仲間キャラは最初から全員オランにいる訳ではなく、中にはゲーム中盤になってやっとパーティーに加えられるキャラまでいます。
育ってないキャラを途中加入させても意味がないんじゃ……とお思いでしょうが、そこら辺は抜かりなく融通を利かせてあります。前作はどうだったかちょっと記憶にないのですが、本作ではパーティーに加えていない仲間キャラにもイベントクリア時の経験点が入るようになっており、仲間に加えてすぐに宿屋に行けば一気に技能をレベルアップさせる事が出来るのです。
但し別れた仲間が別れた街に留まってくれるとは限らない為、仲間を替えてみたけどやっぱり前の仲間がいいなあ……となった時、どこを探しても前の仲間がいない!という事態に陥る事もあります。仲間選びはくれぐれも慎重に。
なお前作においてプリースト技能持ちの仲間がマイリー信者しかいなかった事を反省してか、今回はマーファ以外の全ての神の信者を仲間にする事が出来ます。マーファは自衛以外で戦っては駄目!という教義の神であり、マーファ信者の冒険者自体少ないので、マーファだけ抜かされたのは世界観的には自然な措置ではあります。
本作でのイベントは街から街への旅の途中に事件に巻き込まれるという導入が多く、前作と比べると一本道の色が濃いです。分岐もあるにはあるのですが二回ほどしかなく、分岐の仕方もイベントAを断ったので自動的にイベントBに……という風に前作ほど自由に決められる感じではありません。
序盤から中盤にかけてはやらなくていいイベントも幾つかあるのですが、イベントをやらないメリットは何もないので、縛りプレイでもない限りは出来るイベントは片っ端からやってしまいましょう。今回は技能レベル制限が原作TRPGで最高の10までなので、経験点はいくらあっても困るものではないです。
また前作は知識の判定が全くなく知識に関わる技能、特にセージ技能が空気だったのですが、今回は知識をフル活用するイベントも用意されておりセージ技能の面目躍如となっております。それだけでなく世にも珍しいオプション機能を利用するイベントまであり、強制イベントが多い分イベントの種類には幅を持たせています。
ちなみに前作では途中どんな行動を取っても全滅さえしなければイベントをクリア出来ましたが今回はイベント失敗という概念が加わり、下手な行動ばかり取っているとイベント失敗となり得られる経験点が大幅に経る上お金も一切貰えません。注意深くイベントを進め、正解を導き出していきましょう。
イベント中、罠関連や鍵開けなどの探索系の判定は前作と同じく結果のみが表示されますが、戦闘の判定は今回3パターンの中から選ぶ事が出来ます。一つは、探索系同様結果だけを文章で知らせる方法。
残り二つが極端で、一つは文章すら排除し与えた、受けたダメージだけを表示していく方法。もう一つは判定が発生する度自分でダイスを振り、その値を判定に使う方法です。
前者は大変テンポ良く戦闘が進みますが、敵の名前すらも表示されなくなるので戦闘がどこか味気ないものになってしまいます。後者は自分が戦闘に直接介入している気分が味わえ臨場感はバリバリですが、言うまでもなく物凄く時間がかかります。
自分のプレイスタイルに合わせ、よりやりやすい方を選びましょう。ちなみに筆者はダイス派でした。
今回小説から登場のキャラは、原作小説や前作の原作からだけではありません。仲間キャラではありませんが、他にも小説からのゲストキャラが多数出演しています。
例えば刺客達に追われる元暗殺者シャドーニードルは、短編小説で主役を務めたキャラです。現在は別の人物が新シャドーニードルになってたりしますが。
そして中盤に訪れるある街では、亡霊に囚われてしまった仲間達の代わりに「ソード・ワールド」リプレイの記念すべき初代プレイヤーキャラ、スチャラカ冒険隊の面々を代打の仲間にして囚われの仲間達を助けに行くというイベントが待っています。彼ら彼女らはその時点での仲間達より遥かに弱いのですが、合間合間にワイワイ喋っては一人になった孤独感を癒してくれます。
今回の冒険の舞台にリプレイ当時のスチャラカ冒険隊の活動範囲が入っていた事により実現した客演でしょう。……但しキャライラストは本作の妙にバタ臭いデザインのものになっている為、スチャラカ冒険隊を知っているプレイヤーですら『誰だお前』状態になった事は想像に難くありません……。
ちなみに本作はマルチエンディング制であり、中盤のあるイベントをやったかどうかでエンディングが分岐するようになっています。原作小説と同じ結末を迎えられるかは、あなた次第……かも。
前作と比べストーリーの自由度は下がったものの、それ以外の部分はより原作TRPGに近くなった本作。本作をもって「ソード・ワールド」のコンピューターRPG化は一旦幕を下ろすものの、当時の雰囲気を知る資料としてはいいかも。
とりあえず、今回はこれにて。