第百四十九夜 幽☆遊☆白書 特別編
一つ、ゲームの話でもしようか。
「幽☆遊☆白書」と言えば、現在も「HUNTER×HUNTER」を週刊少年ジャンプにて(不定期に)連載中の冨樫義博氏の出世作です。筋金入りの不良中学生、浦飯幽助の辿った数奇な運命を描いたバトル漫画で、今なお多方面でコラボが行われている人気作品でもあります。
当然アニメ化もされ、こちらも大ヒット。現在コラボで使われるのも、このアニメ版のデザインが主のようです。
漫画が大ヒット、アニメも順調……とくれば次に来るのは当然これ。ゲーム化です。
当事漫画やアニメのゲーム化と言えば有名なのはバンダイやタカラでしたが、「幽☆遊☆白書」のゲーム化を担当したのはあのナムコ。数々の名作を世に輩出したナムコ製なだけあり、出来上がったのは一風変わった対戦ゲームでした。
キャラがまるでアニメと同じように動き、熱いバトルを繰り広げるこの作品は多くのファンを生み、当時「ストリートファイターII」を皮切りに人気が急上昇していた格闘ゲームとはまた違った形の初心者にも易しい対戦ゲームとしても注目を集めました。「幽☆遊☆白書」のゲーム化は、単なるキャラゲーに留まらない広がりを見せたのです。
その後に出た「幽☆遊☆白書2」は大規模な格闘ゲームブームの波に乗り普通の格闘ゲームとなったものの、初代のゲーム性に魅せられたファンは、初代と同じシステムでの続編を望みました。そしてその願いは届き、当時のアニメの進行具合に合わせ使用キャラを入れ替えた初代のシステムの続編が発売される事になったのです。
その名は「幽☆遊☆白書 特別編」。果たしてどんな対戦ゲームだったのでしょうか。
本作はスーパーファミコン黎明期、旧ナムコ、現バンダイナムコエンターテインメントよりスーパーファミコンにて発売された対戦シミュレーションゲームです。ジャンルは敢えて当て嵌めるならこれかなと思って当て嵌めただけなので、あまり本気に取らないで下さい。
初代には原作の暗黒武術会編までをモチーフにしたストーリーモードがありましたが本作では削除され、純粋な対戦ツールとなっています。なおスタッフロールは、後述の総当たり戦を難易度A級(他ゲームで言うところのノーマル)以上でクリアした時のみ流れるようになっています。
使用出来るキャラは隠しコマンドで使えるようになるキャラを含めて全部で二十人。原作仙水編までのキャラクターの中からの選出となっています。
各キャラの使用する技は原作で出てきたものもあれば、ゲームオリジナルのものもあり様々です。とは言え原作の技を差し置いてゲームオリジナルの技が枠を食っている、という事だけはないのでその辺はご安心下さい。
キャラの中には原作通り、技を使用する事で姿を変えるキャラもいます。例えば幽助の師匠の幻海というキャラは普段は老婆の姿ですが、霊力を高めたり技の一つである霊光鏡反衝を成功させると一時的に若返り、一定ターン能力が上昇します。こうした原作をリスペクトした部分も、嬉しい要素の一つです。
なお出す技によっては各キャラごとにボイスが入り、当てているのは勿論アニメの担当声優……と言いたいところですが、一部キャラはスケジュールが合わなかったのかそれとも予算の都合か、代役が声を当てているようです。幽助や戸愚呂弟などの主役級、メイン敵級は流石に正規の担当声優が声を当てていますが……。
本作のゲームモードは全部で四つ。それぞれ『タイマン勝負』、『チーム戦』、『トーナメント戦』、『総当たり戦』となっています。
タイマン勝負はその名の通り一対一の一回勝負を行うモードで、コンピューター戦と対人戦両方で遊ぶ事が出来ます。対人戦が出来るモードの中ではこのモードのみ同キャラ対戦が可能で、戦うステージも自由に選択出来ます。
選んだステージによる内容の違いは一切ないので、バトルの背景とBGMを好きに選べるくらいの気持ちでお考え下さい。一回戦うごとに使用キャラとステージを選び直せる、最もお手軽な対戦モードです。
チーム戦もコンピューター戦と対人戦両方で遊べ、こちらは三人一組でチームを組んでの対抗戦となります。戦う順番はAXYのボタン位置に選んだキャラが対応するのでそれに合わせてボタンを順番に押して決め、例え対人戦でも手元を見ない限りは相手には自分がどの順番で決めたか解らないよう配慮がなされています。
勝負は勝ち抜き戦となっており、勝ったキャラは少しだけ体力を回復した後相手の次のキャラと戦う事になります。相手の選んだキャラを全滅させると勝利となり、またキャラを選び直すところから始まります。
トーナメント戦は一人用なら1Pのみ、二人用なら1Pと2Pの使用キャラをそれぞれ選び、コンピューターも含めた十六人で頂点を競い合います。1Pと2Pはそれぞれトーナメント表の両端に配置される為、互いに決勝まで勝ち残らないと当たる事はありません。
コンピューター同士でもきちんとバトルは行われますが、わざわざ見るのが面倒な時はスタートボタンでスキップして結果だけ表示する事が出来ます。このモードでも全試合が終了するまでは一戦ごとの体力回復量は少しなので、あまり体力を減らしすぎないように……。
総当たり戦はやはりその名の通り、隠しキャラを含めた全二十人と連続で戦う唯一の一人用専用モードです。対戦順は最後の一人を除いて完全にランダムで決まり、一度でも負ければまた一人目からやり直しになってしまいます。
体力は一番易しい難易度のB級(他ゲームで言うところのイージー)のみ一戦ごとに完全回復しますが、それより上の難易度ではやはり一戦ごとの回復量は少しだけ。本作にかなり慣れた人用の、上級者向けモードだと言えます。
バトル時の操作方法を説明します。まず中央から左右二つに分かれた画面の左側が1P、右側が2Pもしくはコンピューターの状態を表しています。
バトルが始まってすぐは、何もコマンドが入力されていないニュートラル状態です。この状態で十字キーのいずれかの方向を押しっ放しにすると、キャラが表示されているすぐ下の行動ゲージが少しずつ溜まっていきます。
ゲージが十分溜まったと思ったら、十字キーはそのままにABXYのいずれかのボタンを押します。すると十字キーを押した方向と同時に押したボタンの組み合わせに沿った行動をキャラが取り、ターンが開始されます。
以下は1Pの場合の十字キーのコマンド表です。2Pの場合は左右が逆になりますが、ABXYボタンの方は反転せずそのままなのでご注意下さい。
右方向は相手に向かってパンチを繰り出します。パンチは格闘ゲームのように強弱を変えたり上下に打ち分けたりする事が出来、それぞれ与えるダメージや命中率に関わってきます。
霊気を消費せずに行える唯一の攻撃手段ですがその分威力や命中率、回避率に乏しく、相手に霊撃を使われればひとたまりもありません。あくまで霊気が切れた際の非常用としてお考え下さい。
左方向は相手の行動に備えてガードを行います。非常に行動ゲージが速く溜まりますが、相手がコマンドを入力し終えるまでコマンド入力を受け付けないようになっています。
成功すれば受けるダメージを軽減したり、上手くいけば攻撃を完全に回避する事も出来ますがこちらからは攻撃は一切出来ません。これもやはり霊気がない時に行うくらいでしょうか。
上方向は主に自分の能力を底上げする事の出来る技や、ジャンプを繰り出します。成功すれば後の戦いを有利に運べますが、ジャンプ以外はあまり回避率が高いとは言えません。
相手がダウンし行動不能の時などに行い、畳み掛けていくのがいいでしょう。またキャラによっては技を使う事で姿が変わり、全ての能力が大幅にアップする事があります。
下方向はいわゆる必殺技となる霊撃を繰り出し、バトルにおいてはこの霊撃の応酬がメインとなります。霊撃の種類は様々で、遠隔攻撃であるほど相手と同時行動した際順序が優先されるシステムとなっています。
また互いに遠距離攻撃を行ったさいはぶつかり合いが発生し、片方、または両方が掻き消されたり、どちらも突き抜けた代わりに威力や命中率が弱まったりします。使用キャラの持っている霊撃の効果をよく把握し、状況に応じて使い分ける事が勝利への第一歩です。
コマンドのうち技とジャンプ、霊撃は使用に霊気を必要とします。霊気のゲージは画面の一番下に表示され、これらの行動を取る度行動に応じた量の霊気を消費していきます。
消費した霊気は、何でもいいので自分の行動を成功させる事で回復出来ます。回復量は一定ではなく、画面全体の中央下にある水晶玉の中に表示された人魂の数とコマンドの種類、その成功具合によって細かく変わってきます。
また時々、人魂の代わりにアイテムが表示される事があり、この場合はより完璧にコマンドを成功させた方のみアイテムを手に入れる事が出来ます。アイテムはニュートラル状態でAボタンかYボタンを押す事で使用出来、様々な良い効果をもたらしますが、使った際の回避率は技とどっこいなので使うタイミングはよく考えましょう。
バトルにおいてもう一つ大切な要素に、バランスがあります。バランスは行動ゲージの下の青いゲージで表され、攻撃を受ける度に減少していきます。
このバランスゲージが少なくなるにつれて回避率が全体的に下がっていき、0になるとダウンして一定時間行動不能になります。霊撃の中には威力が低い代わりにバランスを大きく崩せるものなどもある為、まずはバランスを崩してそれから攻撃を当てにいくなどのテクニックも有効です。
以上の点を踏まえ、相手の体力バーを先になくした方が勝ち。体力バーは画面上部にあり、ダメージを受けるごとに黄色→赤→黒の順に移り変わっていきます。
技やアイテムの中には体力を回復させるものもあるので、相手より体力が低くても諦めない事が肝心。ちょっとの切欠で大逆転……なんて、対戦ゲームにはよくある話ですしね。
キャラゲーにしておくには惜しい出来だなあと思いつつ、同時にキャラゲーだからこそ生まれたシステムなのかなと思ったりもする本作。条件が合わないと見れないかなり細かいネタなどもあったりするので、原作が好きなら是非お勧めしたい一作です。
とりあえず、今回はこれにて。