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第百四十八夜 カードマスター リムサリアの封印

一つ、ゲームの話でもしようか。



スーパーファミコンからプレイステーションにかけては、RPGの黄金期でもありました。この時代数多くの会社がこぞってRPGを開発、発売しました。

今回ご紹介する「カードマスター リムサリアの封印」もそんな時代に出たRPGの一つです。当時のRPGは今以上に『目新しいシステムを!』という意識が強く、まさに群雄割拠の様相を見せていました。

ではこのゲームは、どのようなシステムで勝負しようとしたのでしょうか。今からそれを、紐解いていきましょう。


本作はスーパーファミコン初期、HAL研究所よりスーパーファミコンにて発売された3DダンジョンRPGです。スーパーファミコンオリジナルの3DダンジョンRPGというのは少なく、それだけでも本作は貴重な作品かもしれません。

以下はストーリー。数々の神話や伝説が残されし島、エレメン島。そこにある王国の一つ、レクスファートである日反乱が起きる。宮廷魔導師ガルネールが国王を殺害し、国を乗っ取ったのだ。特殊なカードを用いて四大精霊の力を行使する事の出来る『カードマスター』の一族の血を受け継ぐ少年ルークスの両親もまた、その時に起きた争いで帰らぬ人となった。それから十数年の時が流れ――。成長したルークスは、生まれ故郷のガーリアの村で幼馴染みのアランと再会する。ルークスの父とアランの父は共にレクスファート三騎士と謳われた人物だったが、ガルネールの起こした反乱の際アランの父はルークスの父を裏切ってガルネール側につき、それがルークスの父の死の原因にもなっていた。そして自らも現在はガルネールの配下として活動しているというアランにルークスは顔を曇らせるが、そんな事はお構いなしにアランはある事を依頼してくる。それはガーリアの村の近くにあるバルニバ神殿で次々と魔物が召喚されている為、自分の部下のティーファと共にそれを止めて欲しいというものだった。本当にアランを信じていいのか戸惑いつつも、結局依頼を受ける事にしたルークス。しかしそれはエレメン全土、いや世界中をも揺るがす戦いの幕開けでもあったのだった――。といった感じになっています。

舞台となる島の名前が多少ツッコミどころではあるものの、ストーリー自体は至ってシリアスであり笑いどころは一切ありません。なら何で肝心の舞台の名前をダジャレにしたのか、そこはちょっと理解に苦しむところではありますが……。


パーティーメンバーは主人公ルークスを合わせて四人。ルークスは常に固定で、四人のうち二人はストーリー進行に応じて様々に入れ替わります。

そして残りの一枠にはルークスが使役する精霊が入り、ルークス達をサポートしてくれます。精霊達は武器防具を一切装備出来ないので直接攻撃力は弱く受けるダメージも大きいですが、代わりにダンジョンを一歩歩くごとにHPとMPが少しずつ回復するという特性を持っています。

ルークスが使役出来る精霊は最初は風の精霊シルフだけですが、ストーリーが進むにつれ新たな精霊のカードが手に入り、最終的には四大精霊全てを召喚する事が出来るようになります。各精霊達はそれぞれ使用出来る魔法が異なり、状況に応じて使い分ける必要があります。

なおルークス達人間キャラは自身のレベルアップにより成長しますが、精霊達は召喚者であるルークスのレベルに合わせて成長していくシステムになっています。極端な話、全く戦わせなくても勝手に強くなっていくので、精霊のHPがピンチの時は自然回復するまで引っ込めておくのも一つの手です。


ルークスや仲間達、精霊、そして出現する敵達はそれぞれ属性をその身に宿しています。属性は全部で五つあり、互いに干渉し合う属性もあれば全ての属性に対して無干渉な属性もあります。

風属性は土属性に強く、火属性には弱いです。空を飛び回る素早い敵がこの属性である事が多いです。

火属性は風属性に強く、水属性には弱いです。攻撃力が高い反面、HPは少々低めに設定されている敵が多いのが特徴です。

水属性は火属性に強く、土属性には弱いです。数は少ないですが能力のバランスが取れた敵が多く、手強いです。

土属性は水属性に強く、風属性には弱いです。力押しでくる敵が多いですがそれでも後半は油断出来ません。

人属性は得意不得意のない、独立した属性です。ルークスや精霊以外の仲間は、全てこれに当たります。

基本的には戦わせる精霊にしか関係しない属性ですが、ルークス達の一部装備や攻撃魔法を使う際は多少関わってきます。属性装備を身に付けている間は攻撃や防御の相性がその装備に準拠したものになりますし、人間の使う攻撃魔法はその殆どが複合属性の為片方が敵の得意属性ならそれだけ威力は落ちてしまいます。

更に人属性以外の属性にはもう一つ、『自分と相手が同属性だった場合は互いのダメージが多少落ちる』という説明書には記載されていないルールがあり、結局精霊の使う単属性攻撃魔法が一番効果があるという結果に……。本作の魔法コストは基本高めという事もあり、人間キャラの使う魔法は回復一辺倒になりがちです。

なお各精霊はパーティー全体をその戦闘の間中自分と同じ属性にするという魔法を身に付けており、これを利用し敵の苦手属性になる事で戦闘を有利に運ぶ事が出来ます。但し人属性に戻る魔法は存在しないので、考えて使わないと却ってピンチに陥る事も……。


『カードマスター』の称号の通り、ルークスは精霊の召喚以外にも様々なカードを使う事が出来ます。カードは街の占い屋で購入出来、戦闘中に使用する事で効果を発揮します。

風火水土の四属性のカードは、使用すると精霊が使うのと同じ単属性の攻撃魔法を敵に放ちます。カードは一度に三枚まで使用出来、一度に使った枚数が多いほど上級の魔法を放つ事が出来ます。価格も一枚10GP(本作の通貨)と安く、多少乱用してもあまり痛くないのが嬉しいところ。

霧のカードは戦闘からの逃亡に必ず成功します。但しすぐ後ろが壁の場合と、ボス戦の時は除きます。

招魔の護符は四属性の中からランダムに一体魔物を呼び、全体攻撃します。非常に強力ですが属性が選べない事と、値段が350GPと気軽に買える値段じゃないのがネック。

血のカードは敵全体を即死させます。但し必ず成功するとは限らず、効かなかった敵には何のダメージもないのでギャンブル性の強いカードです。

カードはそれぞれ九枚ずつを纏めて持つ事が出来、全部で七つの枠はどう埋めるも自由なので数種類の好きなカードだけで枠を全て埋めてしまう事も可能です。今攻略中のダンジョンに出現する敵の属性に合わせて持ち替えるのもいいかも?


さて本作、他のRPGと大きく違う点があります。それは『全てのダンジョンで、辿り着いた最深部から地上に帰る必要がない』という点です。

本作は全部で五章に分かれており、その全てで入れるダンジョンが異なります。そしてダンジョンの最深部でイベントが終わるとそこで章が切り替わり、自動的に次の章の拠点に移動します。

つまり本作におけるダンジョンとは、『スタートからゴールまで一方通行の迷路』なのです。勿論最深部に辿り着くまでは自由にその章の拠点に戻れますし、途中には行き止まりも沢山ありますが、大体こう考えて間違いはありません。

ダンジョンから帰還するという手間を完全に省いたこの形、受け取り方は様々だと思います。楽な反面一度ダンジョンをクリアしてから宝箱探し、というプレイが出来なくなる訳ですからね……。


ここまでは賛否両論あれど本作の『特徴』と言える部分を挙げてきました。ですがここからは、一プレイヤーとして『ここはちょっと……』と思った『欠点』を挙げていこうと思います。

まず本作、無駄にダンジョンが広いです。一章の時点で、その辺のRPGのダンジョンが二個は入るんじゃないかというぐらいのボリュームを誇ります。

それでいて仕掛けは何もなく、先に進むのに必要なイベントアイテムもない。妨害は敵だけ、手に入るのは消費アイテムと装備品だけ……。ストレートに言ってしまえば、単調で飽きやすい構成です。

幸いオートマッピング機能は搭載されていますが、筆者のようにオートマッピングを全部埋めたい病のプレイヤーには罠がないのはプラスとは言え広すぎるダンジョン構造のせいで却って足枷が増える事に……。普通はこういう場合広さは程々にして仕掛けを増やすものですが、本作は敢えて逆を突っ走ったようです。

エンカウント率が高めなのも問題で、本作では歩いていると頻繁に敵が出現します。それだけならまだ個性で済む問題なのですが、何が更なる問題なのかというと、本作、その場に立ち止まってただ右を向いたり左を向いたりするだけでもエンカウントが発生してしまうのです。

他の3DダンジョンRPGの例に漏れず、本作もまた逃亡した際は背後のスペースに一歩下がる形となります。よって、敵とエンカウントした際後ろが壁になってしまうと、その戦闘は逃亡不可能になります。

そして本作に、いっぺんに後ろを振り返る事の出来る機能はありません。振り返りたい時は右を向いてからもう一度右、または左を向いてからもう一度左を押すしかないのです。

つまり、振り返る途中で敵とエンカウントしてしまうと……? もうお分かりですね。その戦闘は逃亡不可、殺るか殺られるかの戦いを強制される羽目になってしまうのです。

こんな事態に陥っても対処出来るよう、常に戦えるようなコンディションを保っておきましょう。まめな回復は、事故死を防ぐ第一歩です。

それに輪をかけて問題なのが仲間関連。本作では仲間は必ず何も装備をしていない状態で加入し、抜ける時も装備一色を全て置いて離脱します。

この仕様で一番困るのがダンジョンの途中で加入してくるキャラで、プレイが二周目以降でそこで仲間が加わるのが解っているとかでない限りいちいち街に戻って装備を整えるか、装備を何も着けない足手纏いのまま最深部まで連れ回すかの二択を迫られる事になります。

特に酷いのが四章。この章では最初に仲間が二人いたかと思えば早々に離脱し、その後ダンジョンをかなり進んだところで新たな仲間その一が、更にダンジョンが終盤近くになったところで新たな仲間その二が順に加わるという嫌がらせのような展開が味わえます。

このうち後に仲間になる方は最初の仲間が置いていった装備をある程度流用出来るし、最深部も目前なので無理に装備を整えてやる必要はないのですが、そうはいかないのが先に仲間になる方。ダンジョンのかなり奧で仲間になるとはいえまだまだ先は長く、敵もかなり強いので役立たずをそのまま養う余裕などこちらにはありません。

しかも精霊以外のパーティーメンバーが一人でも死んでしまえば挑戦失敗となり自動的に街まで戻されてしまう為、死んだまま放っておくという手も使えません。この、『一つ一つなら大した事はないのに全部揃ったら辛くなる』システム、何故採用した。

ちなみにこの仲間達、各章最後のボス戦など肝心な時に限って離脱し、ルークスと精霊だけの戦いを強制されます。足を引っ張るだけ引っ張って、最後は協力してくれない仲間達……仲間とは一体……。


色々ときつい事も書きましたが、最後に、「星のカービィ」シリーズの作曲も手掛ける石川淳、安藤浩和両氏によるBGMは素直に美しいの一言。これだけの為に本作を周回プレイしたと言っても過言ではないです。


新しい事をやろう!という工夫こそ見られるものの、欠点の方も多く目に付いてしまう本作。RPG黄金期の作品らしい、試行錯誤の一作と言えるでしょう。



とりあえず、今回はこれにて。

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