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第百四十七夜 かまいたちの夜

一つ、ゲームの話でもしようか。



新しいアドベンチャーゲームの形、サウンドノベル。その第一弾である「弟切草」は、発売されるや否やユーザーに大注目される事となりました。

これに手応えを感じたチュンソフトは、早速サウンドノベル第二弾を計画します。それが今回のテーマ「かまいたちの夜」です。

ホラーからミステリーへ。今なお根強いファンを持つサウンドノベル界の金字塔とは、如何なるゲームだったのでしょうか。


本作はスーパーファミコン黎明期、チュンソフトよりスーパーファミコンにて発売されたサウンドノベルです。今回のシナリオ原案は人気推理小説家、我孫子武丸氏が担当し、軸となるのもホラーからミステリーになりました。

以下はストーリー。大学生の透(名前変更化)は同じ大学に通う、密かに想いを寄せる女性である真理(こちらも名前変更化)に誘われ、真理の叔父が経営するペンション『シュプール』にスキー旅行にやって来ていた。この旅行で真理との距離を少しでも近付けようと気合いを入れる透だったが、楽しい一時も束の間、別の宿泊客の部屋の前に不気味なメッセージが残される。『こんや、12じ、だれかが、しぬ』。その時はただの悪戯という事で片付けられ、新たにやって来た宿泊客も交えて楽しい時間が戻ってきたが、そんな一同の団欒を遮るように何かが割れる音が談話室に響く。何が起きたのかと警戒しながら、音の出所を確かめに行く一同。そして辿り着いた部屋で一同が目にしたものは、開いたままになっている窓と、部屋に無惨に転がるバラバラにされた死体だった――。外を覆う猛吹雪により電話も通じなくなり、外界から完全に隔絶されたペンション。犯人はこのペンションの宿泊客なのか、そして何故殺人は起こったのか。長い長い悪夢の夜が、今幕を開けようとしていた――。といった感じになっています。

メインとなるのは今お伝えしたあらすじのミステリーですが、本作ではそれだけに留まらず、登場人物と冒頭以外まるで異なるあらすじのシナリオが複数用意されています。これらのシナリオはメインのミステリー編を無事解決に導いたり、その時点で用意された結末を全て見たりする事で順番に開放されていきます。

なお前作「弟切草」のように複数のシナリオがちゃんぽんになったりはしないので、そこはご安心下さい。結末が一つしかないシナリオもありますが、今回は各シナリオごとにそれぞれ複数の結末が用意されている形となっております。


処女作という事もありまだ荒削りな部分も多かった前作と比べると、本作は大分ゲームとして洗練された形になっています。以下に、本作と前作の違いをご紹介させて頂きます。

まず前作で表示されるグラフィックは全てドット絵によるイラストでしたが、本作では一部シナリオを除いて実在するペンションを撮影した実写の取り込み画像が使われており、より臨場感のある背景に仕上がっています。一方で前作はなかった人物画の方はシルエットという形で組み込まれ、人物と背景を合わせやすくすると同時にプレイヤーに想像の余地を残す役にも立っています。

次に結末を見た直後のみとなりますが、章分けされたストーリーの好きな部分から再開出来るようになった点も快適性を向上させています。これにより結末を見る度にいちいち最初からやり直す手間が省け、結末集めもしやすくなりました。但し選択肢が存在せず、巻き戻す意味がない章も時にはあったりしますが……。

そして、初期サウンドノベルに多かったホラーではなくミステリーである本作だから出来た事。犯人当てです。

本作では推理も大詰めになると犯人を指名する事になり、その指名は犯人の名前を直接入力する事で行われます。つまり、プレイヤーが本当に犯人が誰なのか解っていないと駄目だという事です。

これは推理小説によくある『読者への挑戦』が、ゲームとして形になったようなものと思えばいいでしょう。それまで受け身であった読者が、能動的に物語に関わる事が出来るのです。

ただ推理小説と違うのは、プレイヤー側が実際に犯人が誰だか解らないと解答編を読む事が出来ないという事。何種類かバッドエンドに辿り着いていれば、誰が犯人か推理が可能な範疇ではありますが……。

なお犯人を指名出来る機会はミステリー編内で三回用意されていますが、そのうち簡単に辿り着けるのは二回目の指名だけで、一回目と三回目は正しい選択肢を選んでいかないと犯人指名の段階まで辿り着けないようになっています。この為犯人は解っているのにそれを指名出来るところまでいけない、という事にもなりがちで、本作の難易度を上げている要因になっていたりします。一見突拍子もない選択肢が正しい推理に繋がったりもするので尚更。


さて初期サウンドノベルではこれも重要だった恐怖度に関しては、本作はホラーではなくミステリー主体という事もありそれほどではないという印象です。一部のプレイヤーにはトラウマになったらしい最悪の結末、『サバイバル・ゲーム』も衝撃的ではありますが怖いかというとうーん……?と首を捻ってしまうのが正直なところ。

敢えて怖かったシナリオを挙げるなら猛吹雪の中遭難し、山道をさ迷う事になってしまうシナリオですね。このシナリオはバックログが使えず手探りで出口を探さなくてはならない上、辿り着く唯一の結末も絶望的であるなど短いながらガチで怖がらせにきていると思います。


本職推理小説家を起用しただけあり洗練されたシナリオはサウンドノベル界では他の追随を許さないものであり、これを超えられないと思ったからこそ後発のサウンドノベル達は「弟切草」のようなホラー方面に傾いていったような気がします。単発のものが多いサウンドノベルの中でその人気故に数少ないナンバリング持ちとなった本作ですが、そちらの評価はというと……この辺りの話は、またの機会に致しましょう。



とりあえず、今回はこれにて。

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