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第百三十九夜 イース

一つ、ゲームの話でもしようか。



ファミコンで「ドラゴンクエスト」が発売され、RPGというジャンルが一般的に注目され始めていた時代。この時代、パソコンゲーム業界ではRPGは難しければ難しいほど良作だとされていました。

各ゲーム会社はこぞってRPGの難易度を吊り上げ、難解な謎解きを有するRPGが幾つも生まれました。当時のRPGがどれだけ難しかったかは、後にファミコンにも移植された「ロマンシア」をやった人なら痛いほど痛感した事でしょう。

しかしそんな中、『今、RPGは優しさの時代へ』をキャッチコピーにある一本のRPGが生み出されます。それが今回のテーマ、後に日本ファルコムの看板作品の一つとなる「イース」です。

複雑な操作を必要とせず、行動の失敗による詰みもなく、時間をかければ誰でもクリア出来る。これらの要素は当時としては画期的であり、難しくなっていくばかりのRPGに辟易していた層にもウケて大ヒットを記録。パソコンゲームのRPG界に、大革命を起こす事となったのです。

そんな「イース」、勿論ファミコンにも移植される事となりました。パソコンを主戦場としていた会社の中では日本ファルコムは積極的に家庭用機への移植を行っていた方で、この「イース」もファミコンの他、PCエンジンなど多機種に渡り移植されていたりします。

各バージョンでそれぞれ違いがあるとされる「イース」。そのファミコン版は、果たして如何なるものだったのでしょうか。


本作はファミコン黎明期、ビクター音楽産業よりファミコンにて発売されたRPGです。この時代、日本ファルコムは自らの手では家庭用ゲームの販売は行わず、家庭用機に参入しているメーカーに販売権を与える事で自社ゲームを家庭用機に向けて売り出していました。

以下はストーリー。後世に名を残す事になる偉大なる冒険家、アドル=クリスティンの人生初の冒険は彼が十七歳の時、呪われし島『エステリア』の存在を耳にした事から始まった。この『エステリア』は銀の産出地として有名だったのだが、ある時から島に近付く船を嵐が襲い、行き来が出来なくなってしまったのだという。周囲の制止の声も聞かず、一人小舟で『エステリア』に向かうアドルだったが、やはり巻き起こった嵐に小舟が耐えられる筈もなく、小舟は沈みアドルは海に投げ出されてしまう――。次にアドルが目覚めると、そこは見も知らぬ土地。幸運にも目的地である、『エステリア』へと流れ着いたのだった。助けてくれた親子から『エステリア』に起こっている異変の話を聞いたアドルは、まずは近くにあるというミネアの町を目指す。そこでアドルを待ち受けているものとは、果たして――。といった感じになっています。

前述通り本作は出ている機種によってそれぞれ微妙に流れが異なっており、中でも特にこのファミコン版はオリジナルと違った流れで進んでいきます。オリジナルの重要人物の一人である吟遊詩人の少女レア関連のイベントがごっそり削られ、代わりに中盤に行く事になる廃坑に入る為に必要なイベントが追加されるなど、オリジナルを知っているプレイヤーからすれば誰得?と言いたくなる事にもなっていたりします。


本作の操作は実に簡潔で、メインで使うのは十字キーとメニューを呼び出すセレクトボタンだけ。Aボタン、Bボタンはメッセージ送りや、メニューや店での決定、キャンセルにしか使用しません。

敵との戦闘はアクション方式になっており、敵に体当たりをする事でダメージを与えます。勿論真正面からだとこちらもダメージを受けてしまうので、側面や背後を狙うなどダメージを受けない工夫が必要です。

HPの回復はアイテムや病院などでも行えますが、序盤に行く事になる神殿を除いたダンジョン以外の場所なら立ち止まっている事で徐々にHPが回復していきます。中盤以降は『ヒールリング』というアイテムを見つけ、装備する事でダンジョン内でも自然回復が可能になります。


さて優しさをキャッチコピーに売り出された本作ですが、ではその通り難易度も易しいのかというと全くそんな事はありません。寧ろファミコンのRPGとしては、高い部類に入ります。

追加された廃坑に入る為の謎解き以外、謎解きで詰まるような箇所はそれほどないのですが、問題はボス戦。ボス戦では一切の回復行動が取れず、完全一発勝負な上どれも手強い!

ならレベルを上げてごり押ししようと思っても本作ではかなり早い段階でレベルがカンストしてしまうので、後は完全に自分の技量勝負。これでも同時期のパソコンのRPGと比べたらかなり易しくなった方なのですから、当時のパソコンゲーム業界か如何に人外魔境であったか解ろうというものです。

もっともオリジナルはファミコン版ほどボス戦がシビアではなく、ファミコン版の高難度は調整不足によるものという説もありますが……。それが本当だとしたら、移植担当はどこまで余計な事をしてくれたんだと思いたくなってしまいます。


なお本作は元々2の発売を前提に作られた為、本作内では未回収の伏線が幾つか存在します。それでも後に同じ作りで発売された「アークザラッド」のような不満が目立たなかったのは、一応の話がきちんと一作内で終わっているかの違いもあったのでしょう。


直系の続編「イース2」と共にパソコンのRPG界に革命を起こした本作は多くのプレイヤーに愛され、長く続くシリーズへと発展していく事になります。アドル=クリスティンの冒険は、まだ始まったばかりなのです。



とりあえず、今回はこれにて。

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