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第百三十四夜 星をみるひと

一つ、ゲームの話でもしようか。



折角前回名前を出したのだから、ついでに続けて紹介してしまおうか。という訳で今回のご紹介は「星をみるひと」です。

筆者とこのソフトとの出会いは、東京秋葉原に遊びに行き中古屋を覗いた時の事。箱付き説明書付きとあって、当然即決で買いました。値段も安かったですし。

しかしこのソフト、並み居るクソゲーと呼ばれるソフト達の中では攻略法と仕様さえ把握してしまえば意外と『遊べる』ソフトだと思うのです。あくまでクソゲーの中では、という注釈は付きますが。

そんな訳で、今回はどんな理由でこのソフトを『遊べる』と判断したのかをシステムを解剖しながら語っていこうと思います。ある種のカリスマ性さえ持ったRPG版『伝説のクソゲー』とは、果たしてどんなものなのか……。


本作はファミコン黎明期、ホット・ビィよりファミコンにて発売されたRPGです。パスワードコンティニュー制で、パスワードの写し間違えさえなければ今でも問題なく遊べるのが強みです。

以下はストーリー。巨大都市『アークシティ』を治めるコンピューター『クルーIIIスリー』は強いマインドコントロールにより人々の心を統制し、支配下に置いていた。しかし『サイキック』と呼ばれる一部の人間達にはマインドコントロールが効かず、その為『クルーIII』はロボットや自ら改造した人間達を使い『サイキック』狩りを行っていた。記憶喪失の少年みなみも、そうして『クルーIII』に狙われた『サイキック』の一人。彼は目覚めた時から持っていた超能力を使い、『サイキック』狩りを退け生き延びていく――。終わりなき戦いの果て、彼が辿り着く場所とは――。といった感じになっています。

世界観は当時のRPGとしては珍しいSF調で、敵も近未来的なデザインのものが多く見受けられます。終盤には驚きの展開も待っており、本作のストーリーを評価する層は結構多かったりします。


まず本作をプレイした人が最初にツッコむ事と言えば、『何で最初の街が見えないんだよ!』だと思われます。本作で最初に訪れる事になり、以後も冒険の拠点となる『まむすの村』はフィールドからは見えないようになっており、辿り着くまでどこにあるのかさっぱり解りません。

実のところスタート地点をすぐ左に行けばそこがまむすの村な訳ですが、初見でそんな事が解ったらそれこそ超能力者だと思います。そもそも何の説明もなしにフィールドに放り出されるところから始まる事自体が、相当なツッコミどころでもありますが。

無事まむすの村に辿り着けても、苦難はまだまだ終わりません。それが第二のツッコミどころ、『出てくる敵が強すぎる!』です。

本作では最初のエリアに出てくる敵の強さにかなりのばらつきがあり、初期状態では倒せない敵といきなりエンカウントする事もざら。しかも逃走方法はレベルアップ習得であり、それを覚えるまで実質『逃げる』というコマンドは存在しません。

即ち最初に初期状態では倒せない敵と出会ってしまったら、その場で詰み。全滅後はそのままタイトル直行なので、レベル0(本作での初期レベル)で『じゃんく』、『ふらっか』以外と出会ってしまったら潔くリセットボタンを押しましょう。

運良く弱い敵で経験値を稼いでレベルアップし(この時HPが二桁から三桁に跳ね上がるのもやはりツッコミどころ)、ある程度外を安全に歩けるようになったところでまた問題が。それが第三のツッコミどころ、『街の入口と出口が一致しねえ!』です。

例えば最初のエリアの場合、エリアの外れにある洞窟以外の場所のどの場所に入ってもそこから出る時はスタート地点まで戻されてしまいます。どうやら街扱いの場所から出る際の移動地点をエリアごとに統一してあるかららしく、この奇妙な不一致具合は街のあるエリアならどこでも起こります。

それでも本作で唯一の回復施設が存在するまむすの村の近くに飛ばされる最初のエリアはまだマシで、それ以降は街から出たらいきなりダンジョンの通路の中。確かに先に進む為には、必ず来ないといけない場所ではあるのですが……。

ちなみに街から出た時飛ばされる場所は、逃走用ESPを使って失敗した際に飛ばされる場所でもあります。その為運が悪いと、延々同じ場所を行ったり来たりする羽目になります。

先に行っては戻される、そんな事を繰り返してたらお金が貯まった。このお金でとりあえず、一番弱い武器でも買おう……と、ちょっと待った。本作では安易な武器の購入は自殺行為です。

それが次のツッコミどころ、『武器を買ったのに逆に弱くなったぞ!?』です。本作のダメージ算出法は少々特殊で、素手の時は攻撃力に関係なく0~3のダメージをランダムに与えるのですが、武器を装備すると『攻撃力と武器の持つ倍率から計算されたダメージ-敵の防御力=実際のダメージ』という計算式に変わるのです。

つまり敵の防御力が計算されたダメージより上なら、一切ダメージが通らなくなるという事。前述した通り本作は最初は逃げられないので、攻撃が通らない敵に遭ってしまえばESPで攻撃するしかなく、その為のMPもなくなってしまえばこれまた詰みです。

本作はESPを使った戦闘をメインにしている節があり(その為か戦闘コマンド表の一番上にあるコマンドがたたかうではなくESP)、終盤まで来ると最も強い武器を装備してすらダメージは微々たるものになるとは言え、それでも通常攻撃はなくてはならないもの。パーティーの中で誰か一人だけは素手のままにしておくと、攻撃が通らなくて詰み……という状況だけはひとまず回避出来ます。その代わり、ESPなしで戦うとなると一戦闘ごとに膨大なターン数がかかる事になりますが。

そして、これらの仕様に耐え、パスワードを取って中断したプレイヤーに襲い掛かる悲劇……。それが最大のツッコミどころ、『パスワードで再開したらお金が減った上レベルも下がったんだけど!?』です。

本作は最大四人でパーティーを組む事になりますが、それに対してパスワードは20文字です。初代「ドラゴンクエスト」よりも短い。

ゲームに詳しくない方は、『パスワードなんて短い方が間違えなくていいんじゃない?』と思うかもしれませんが、それは大きな誤り。パスワードの長さは、再開時に引き継がれる情報の多さでもあるからです。

引き継がれるべき情報が多いほど、パスワードはより長く難解になっていきます。つまりどういう事かというと、本作ではパスワードで引き継がれる情報が異様に少ないのです。

本作でパスワード再開しても正しく継続される情報は仲間の数、それぞれの装備、所持しているアイテム、持っているそれぞれの薬の数のみ。お金は256ごーるどずつでしか管理されず、経験値も4ずつでの記録となり、端数は全て切り捨てられてしまいます。

経験値の方は纏まりが小さいのでそのうち誤差になりますが、問題はお金の方で、この仕様のせいで本作ではお金が物凄く貯まりにくくなっています。しかも無駄にお金が個別管理で、「ウルティマ 恐怖のエクソダス」のように仲間間でお金をやり取りするようなシステムもないので……。

他にもツッコミどころには事欠かないのですが、大半のプレイヤーはここまで来る前にまずプレイを止めてしまうであろう為省略。街の人達はスイスイ動くのに主人公達の移動は何故かすっとろいとか、本当に色々あるんですけどね……。


ここまでだとどこも褒めるところが存在しない、正真正銘のクソゲーであるかのように思えます。しかし筆者が本作を実際に遊んで思ったのは『あれ? これ意外と面白いんじゃない?』という事でした。

まず問題となっている敵の強さのばらつきですが、筆者の運がたまたま良かった説も否定はしないものの実際のところ一番弱い『じゃんく』と『ふらっか』の出現率が一番高くなるよう一応の調整はしてあるらしく、いきなり強い敵とエンカウントしてなぶり殺される状況は言うほど起きなかったりします。それでも運次第で起きる時は起きるので、どうせ出ないとタカを括るのもそれはそれで危険ですが。

戦闘自体もレベルが上がり、こちらのパーティーメンバーも揃ってくると余程下手を打たない限りはなかなか全滅しなくなります。但し仲間のしばのESPでしか戦闘中の治療が不可能な状態異常を引き起こす『かりう』を投げてくる敵には、十分な注意が必要です。

また主人公みなみかしばのレベルを上げると壁を飛び越えられるようになり、いちいち入口まで回り込まなくていい分移動がグッと楽になります。勿論全ての壁を飛び越えられる訳ではありませんが、地形を無視してピョンピョン飛び回れるのは爽快感があります。

他にもみなみが移動中に使えるESP『ぶれいく』をダンジョンの壁に使う事で、壁を破壊出来る事があります。壁のあった場所ではエンカウントが起きないという仕様もあり、戦闘が面倒な時は壁を突き崩しまくりその跡地を歩いていく、なんて手も使えます。

全部で四人のパーティーメンバー達はそれぞれに得意分野が異なり、戦闘中に使用出来るESPの他にも様々な個性を発揮してくれます。みなみは前述通り壁越えと壁崩し、しばは壁越えと移動先をあらかじめ登録する事で行うテレポート、みさはダメージゾーンに入ってもダメージを受けないようシールドを張り、あいねは他者の心を自在に読み取る事が出来ます。みさだけちょっと得意分野が地味な上、一人だけ仲間にするのに複雑な手順がいりそもそも仲間にしなくてもクリア出来るという不遇っぷりですが。

戦闘中の敵や仲間のグラフィックが良いのも地味に評価点。敵グラフィックの緻密さはかの「ファイナルファンタジー」にも負けない出来だし、レベルの上昇によって徐々に成長していく仲間達の姿を見るのは育てるのに苦労するだけあって感慨深いものがあります。

確かに最初のうちは色々と苦労するけど、それさえ乗り越えればそれほど遊べないという訳ではない。筆者はそう感じました。超重要アイテムである『さんそぱいぷ』の入手方法だけは擁護出来ませんけどね!


クソゲーと呼ばれる一方で、有志による同人リメイクが何作も作られるなど一部で愛されてもいる本作。確かにクソゲーと言われても仕方のない本作ですがそこには意欲的な試みも幾つか見られ、一生懸命に作られた事が伝わるが故に愛される、そんなゲームでもあると個人的には思うのです。



とりあえず、今回はこれにて。

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