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第百三十二夜 夢幻戦士ヴァリス

一つ、ゲームの話でもしようか。



始まりがあれば、いつか必ず終わりが来る。世の中の、不変なる真理です。

ゲーム業界でもそうやって、幾つもの会社が終わっていきました。それは中小企業だけでなく、かつては一世を風靡したような大手の企業でも免れない事でした。

日本テレネットも、そんな会社の一つです。現在のナムコ・テイルズスタジオの前身となった技術者集団ウルフチームを抱え、パソコンにおいて数々の名作を排出してきた日本テレネットですが、時代の流れと共に業績は悪化、遂には倒産してしまいます。

倒産した、もしくは倒産寸前のゲーム会社が決まって行うのが、自社ブランドの身売りです。この手が行えるのは自社ブランドを確立出来るだけの規模があった会社に限られますが、いわゆる『お金になる』ゲームの版権を別会社に買って貰う事により債権を回収、あわよくば会社ごと買い取って貰って子会社として再出発……そうやって、自社だけでは困難となった資金繰りを行おうという訳です。世知辛い話ですね。

日本テレネットでも倒産寸前、そうした身売りが行われました。しかし他会社の行った身売りと少し違ったのは……日本テレネットが版権を売った相手は、何とアダルトゲーム会社だったのです。

昔夢中になって遊んだゲームが、公式にアダルトゲーム化する……。当然昔からのファンは喜ぶどころか猛反発。現代で言えば人気萌えアニメが公式にエロ漫画化するようなもので、そうじゃない、そりゃそういう同人誌は買うけど公式にそうなって欲しい訳じゃない、と大半の人は思う事でしょう。

しかもそのアダルトゲームがせめてそういう役にちゃんと立つ出来ならともかくそういう用途で使う事すら疑問符が沸く出来だった為、最終的に得する人が誰もいないという結末を迎える事に……。日本テレネットが敢えなく倒産したのも、致し方無しといった気分になってきます。

また前置きが長くなりました。今回はそんな悲劇の運命を辿る事になったシリーズの、ファミコン版のお話。

その名は「夢幻戦士ヴァリス」。さあ、新たなる戦いの幕を上げましょう。


本作はファミコン黎明期、徳間書店よりファミコンにて発売された横スクロールアクションゲームです。当時日本ファルコムのようにパソコンを主戦場としていたゲーム会社はファミコン市場に参入している会社に販売権を与える形で自社ゲームをファミコン移植する例が多く、本作も同様に日本テレネットが徳間書店に販売権を与える形での発売となりました。

以下はストーリー。我々の住む現実世界を含めた数々の世界は、大いなる力を持つエネルギー体『ヴァリス』によって支えられていた。『ヴァリス』は夢幻界の王女ヴァリアの助けによって各世界を維持し続けていたが、ある時夢幻界に現れた夢幻魔王ログレスにヴァリアは捕らえられ、『ヴァリス』の宿る器であった『ファンタズム・ジュエリー』も五つに砕け散り、同様にログレスの手に落ちてしまった。『ヴァリス』の力を制御するコントローラーであるヴァリアが捕らえられ『ヴァリス』も顕現出来なくなった今、何らかの手を打たなければ全ての世界が崩壊してしまう。『ヴァリス』は新たなるコントローラーの資質を持つ者を探す為、資質を持つ者だけが扱える五本の剣を各世界に送り込む。その剣を手にしたのは、現実世界の女子高生、麻生優子。剣によりログレスの支配する夢幻界へと導かれた優子の運命は――。といった感じになっています。

パソコン版のストーリーを知っている人なら解ると思いますが、本作のストーリーはパソコン版から大幅な改変がなされています。正直同じなのは登場人物の名前だけと言ってもよく、続編とも繋がらない形となっています。

実際のところ優子の辿った正史(アダルトゲーム版の事に非ず)にいまいち納得がいかない筆者としては、本作の結末は割と好みだったりするのですが……やっぱり少数派なのかなあ?


改変がなされているのはストーリーだけではなく、ゲームシステムも純粋なアクションゲームだったパソコン版と比べると探索要素が強くなっています。プレイヤーは優子となり広大なマップを探索し、自身を強化するアイテムを集めながら先に進む事になります。

基本操作は十字キーの左右で移動、上下でマップ移動。上は建物の中に入るのにも、下はしゃがむのにもそれぞれ使います。

後はAボタンでジャンプ、Bボタンで攻撃、スタートボタンでアイテムの装備や使用。アイテムには持っているだけで効果を発揮するものと装備しなければ効果がないものがあり、装備しなければならないものは手に入れた後スタートボタンで装備する必要があります。

本作のアイテムは幅広く、特定の地形を歩けるようになったり暗い場所を明るくしてくれるといった移動に役立つものから、使用する事でライフを回復してくれたり攻撃の軌道が変化する戦闘に役立つものまで様々です。ここでは使用する事で効果を表すアイテムと取ったその場で効果が出るアイテムのみをご紹介させて頂きます。


地図は使用すると今いるエリアの現在地が解ります。複数に分かれたエリアごとに地図があるので、新しいエリアに辿り着いたら早めに入手してしまいたいものです。

水筒は使用するとライフが一定値回復します。回復はハートの数だけ行え、新しく水筒を入手するか夢幻界の森エリアにある滝で水筒を使う事でハートの数がフルまで回復します。

ボムは使用すると一定時間の間攻撃が山なりに飛ぶようになります。攻撃の飛距離は短くなりますが代わりに攻撃力が高く、耐久力のある敵に有効です。

ブーメランは使用すると一定時間の間途中で攻撃が戻って来るようになります。一発の威力は変わらないのでボムより印象が薄い武器……。

ドリンクは取ったその場でライフを2回復します。何回取ってもなくならないので、これがある建物を見つけたらそこを拠点にしてエリア探索するのがセオリー。

バリアは取ったその場で一定時間の間敵の攻撃を受け付けなくなります。普通には存在せず、重要アイテムを取った後の建物にもう一度入るとある事が多いです。

猫は見つけたその場でライフが全快します。ある場所に行っても必ず見つかるとは限らず、見つけるには何度も建物を出入りする必要があります。


敵には無限に沸いてくる雑魚敵、一度倒せば二度と出てこない大型敵、特定の地点に行くと出てくるファンタズム・ジュエリーの欠片を守るエリアボスの三種類がいます。雑魚敵と大型敵からは自由に逃げられますが、エリアボスは一度遭遇したら倒すか死んでゲームオーバーになるかしか逃れる術はありません。

エリアボスは各エリアを繋ぐ境目にいる事が多いですが、倒さなければ必ずエリア間を移動出来ない訳ではないので、エリアボスを無視して探索を優先する事も可能です。まあそうやって探索を優先した結果、意図せずいきなりエリアボス戦に突入して泡を食う事になったりもしますが。

大型敵は後半に大量に出現するようになりますが大抵は無視可能で、とっとと片付けてスッキリした状態で探索に臨むか多少のダメージは覚悟の上で完全に無視するかはプレイヤーによって分かれるところだと思います。なお筆者は敢えてのジェノサイドルートを取らせて頂きました。


さて本作の難易度ですが、ハッキリ言ってかなり高めです。理由としましては、コンティニューの再開地点が絶望的に少ない!

本作での再開地点はスタート直後(実質ニューゲームと変わりない)と夢幻界に突入した直後のみ。しかもアイテムは何もない状態から始まります。それもうコンティニューじゃなくて単なるやり直しだから!

本作に残機の概念はなく、一度死んだらそれっきりです。にもかかわらず自重しない敵の数、やたらと多い即死穴、ダメージ半減アイテムのシールドを取るまでは五発しかもたない優子の脆さ……。

この条件で、夢幻界に突入してからは完全に通しクリアを要求されるからたまらない。根性で何とかエンディングまで辿り着きましたけどね……。

その夢幻界に突入するまでも問題で、夢幻界に辿り着くには現実世界にいる大型敵三体を全て倒した上である場所に行かなければならないのですが、その事についてゲーム中に一切ヒントがない。ここで詰まり、何をすればいいゲームかさっぱり解らないまま売ってしまった、そんなお子様も多かったのではないかと思います。

また本作はマルチエンディングであり、最後の選択肢を間違えたりその前後の戦いに破れてしまうとバッドエンドになってしまう訳ですが、そうなるともうコンティニューすら出来ません。最初からやり直すしか道はないのです。

そりゃバッドとは言え一応エンディングを迎えたのですから、その扱いで正しいのでしょうが……。本作に限っては、パスワードコンティニューでもいいから他に再開方式が欲しかったと切実にそう思います……。


そんな本作ですが元がパソコンゲームだけあり重要な場面ではビジュアルシーンが挿入され、その出来は時代を考えると相当良いです。難しいゲームだけど優子が可愛いから頑張った、そんな現金なファミコン少年ももしかしたらいたかもしれません。

特に優子より先にログレスに夢幻界に召喚されていたクラスメイト、麗子との悲しき戦いは、容量の都合上短い会話にはなっていますがなかなか見応えがあります。筆者もこのイベントは大好きで、ここだけは何回やり直しても苦になりませんでした。


元のパソコン版の事は解りませんが本作をやる限りではシビアな難易度ながらも見るべきところはあり、このような形でシリーズが終焉してしまったのは惜しいと思わせるものがあります。一度アダルトゲーム化してしまった以上無理なのかもしれませんが、是非何らかの形でリメイクを……駄目かな?



とりあえず、今回はこれにて。

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