表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/239

第百二十四夜 スウィートホーム

一つ、ゲームの話でもしようか。



ファミコンからスーパーファミコンにかけて、幾つもの映画がゲーム化しました。クソゲーレビューを取り扱った海外の人気動画「The Angry VideoGame Nard」辺りでも言及されていますが、こういった映画原作ゲームは原作が旬な内に出してその人気にあやかろうとする為内容が練りきれていない事が多く、クソゲー化する確率が高いものだったりします。

中には「スパルタンX」のように、原作映画の内容を全く知らない状態でイメージだけで作られたゲームまで存在していたりします。まあ「スパルタンX」は奇跡的に名作になりましたが。

しかし『映画原作は大抵クソゲー』はあくまで海外での話。日本においてはクソゲーもある一方、しっかり遊べる面白いゲームもちゃんと存在するのです。

今回は、そんな映画原作名作ゲームをテーマにお届けします。そのソフトの名は「スウィートホーム」。それではようこそ、間宮邸へ……。


本作はファミコン全盛期、カプコンよりファミコンにて発売されたRPGです。原作がホラー映画なだけあり、本作もRPGとしては珍しくホラー要素の強いものとなっています。

以下はストーリー。三十年前に一家が死に絶え今は廃墟となったフレスコ画家、間宮一郎邸。星野和夫率いる五人の取材班は、今も屋敷に残っているという間宮一郎のフレスコ画の取材をする為間宮邸を訪れていた。しかし撮影を開始したその時、突然の揺れと共に落ちてきた瓦礫が屋敷の出入口を塞いでしまう。パニックに陥る取材班の前に、間宮夫人の亡霊が現れる。『屋敷を荒らす愚か者共、生きて帰れると思うな!』果たして五人の取材班は、生きて間宮邸を脱出する事が出来るのか……!? といった感じになっています。

始めに言っておくと、名作とはしていますが本作の内容は原作映画からはかなりかけ離れています。三十年間無人であった筈の間宮邸には普通に使用人が生き残っていますし、原作で間宮夫人が目覚めた理由もカメラマンの田口が入口にあった供養塔を知らずに壊してしまったからで、和夫達が訪れる前に供養塔を荒らされ目を覚まし、訪れた者を無差別に襲っていた本作とはこれも異なっています。

それでも本作が名作と呼ばれるのは、ホラーとして、そしてRPGとして優れていたからに他なりません。……序文の「スパルタンX」といい、原作無視した方がいいゲームになるというのも皮肉な話な気もしますが。

ちなみに原作映画も、本作とはストーリーの方向性が異なるというだけでこちらも名作です。権利関係が宙に浮いたままどうにも出来ない状態の為、DVD・ブルーレイ化が絶望的なのが実に残念であります……。


ホラーRPGと言うだけあり、本作のシステムは他RPGと比べかなり独特なものとなっています。以下に、その一部をご紹介します。

まず本作は個別アイテム管理となっておりますが、一人の持てるアイテムの数が非常に少なく、内訳としては『絶対外す事の出来ない専用アイテム』一つ、『武器アイテム』一つ、『任意で持ち歩けるアイテム』二つの計四つとなっています。つまり邸内で何か拾っても、武器なら一つ、それ以外なら二つしか持ち歩けないという事です。

アイテムを持ち替えたい時は、落ちているアイテムと交換という形で行います。一見不便ですが、重要アイテム以外は割とそこかしこに落ちていたりするので言うほど困らなかったりします。

次にプレイヤーキャラは全部で五人いますが五人全員でパーティーを組む事は出来ず、一度にパーティーを組める人数は最大で三人までです。五人のうち誰をメインにして操作するかは戦闘中以外ならいつでも切り替えが出来、複数パーティーを使い分けながら進んでいく事を求められます。

但し戦闘中だけは例外で、戦闘中に仲間を呼ぶ事で戦闘に参加していないパーティーに操作が切り替わり、時間内に戦闘中のパーティーと接触する事でそのパーティーも戦闘に加勢する事が出来ます。本作では戦闘に参加した仲間にしか経験値が入らないので、戦闘に参加させる人数は割と重要だったりします。

パーティーの組み合わせはいつでも変更可能で、別れた仲間は自分で動かさない限りその場に残り続けます。持っているアイテムとも相談しつつ、状況に応じたパーティー作りを心掛けましょう。

以下にそれぞれのキャラクターの特徴と専用アイテムを述べます。パーティーを組む際の参考にして下さい。


和夫は最もHPと攻撃力が高く、防御力も全体の二番目です。専用アイテムは通路を塞ぐロープを焼き切るライター。

秋子は平均的な能力の持ち主です。専用アイテムは死亡以外の全状態異常を治す薬箱。

田口は最も防御力が高く、HPと攻撃力も全体の二番目です。専用アイテムはフレスコ画からメッセージを映し出すカメラ。

アスカも秋子同様、平均的な能力の持ち主です。専用アイテムは床のガラス片やフレスコ画の埃を取り除く掃除機。

エミは防御力が最も低く、HPには常に気を使う必要があります。専用アイテムは特殊な鍵が必要な扉以外全ての部屋の扉の鍵を開ける鍵。


本作では他のRPGにおける魔法にあたる『心の力』というものが存在し、戦闘に探索にと様々な場面で活用する事になります。心の力の初期値やレベルアップによる上昇値は全員同一で、差はありません。

心の力を使う時は自動的に上下するメーターを使いたい大体の量に合わせて止め、全体のうちのその量だけを一気に使用します。沢山の量を一気に使った方が当然効果は高くなりますが、本作の心の力回復手段は今組んでいるパーティーメンバーのHPと心の力を一気に全快させる効果の『薬瓶』しかなく、しかも薬瓶が置いてある数は少なくないとは言え有限なので無闇な乱用は控えるべきでしょう。

またレベルアップで上昇するのはHPと心の力の上限、それから一気に使える心の力の量だけで、攻撃力は武器装備で上げるしかなく、防御力に至っては上げる手段が一切存在しません。これにより先に進むほど敵から受けるダメージが上昇し続ける事になり、状態異常を使ってくる敵も増える事からどれだけレベルを上げ、HPを増やしても油断出来ない事になっています。

そして本作の一番の特徴。それは罠に嵌まったり敵の攻撃を受けたりしてHPが0になった仲間は、その場で死亡し二度と復活しないという事です。

この時代、「ミネルバトンサーガ」の傭兵達のようにストーリーに直接関わらないおまけ要素的な仲間や「ファイナルファンタジー2」の四人目の仲間のようにイベントで死亡し永久離脱するゲストキャラなどはいましたが、メインキャラが自分のプレイの結果死亡したなら必ず復活方法があるというのが普通でした。本作の『死んだらそれまで』というシステムは本作の難易度をそれだけシビアなものにすると共に、ホラーゲームとして命の重みを表現する事にも成功しているのです。

死亡した仲間の死体は穴に落ちたのでない限りはその場に残り続け、嫌でも『仲間の死』という現実をプレイヤーに突き付けてくれます。アイテムの交換は死体とも可能で、死んだ仲間が重要アイテムを持っていた場合も回収出来るようになっているのでただ仲間が死んだだけではそう簡単には詰みません。

専用アイテムを使わなければならない場面もそれぞれ携帯可能な代用アイテムがあるので、それを使えば専用アイテムの代わりになってくれます。とは言え仲間がいなくなった事によって減少した持ち歩けるアイテム欄が更に圧迫される事にもなるので、先が厳しくなるのには違いありません。

ちなみに本作はマルチエンディングになっており、最終的な生存人数でエンディングが分岐するようになっています。ベストは勿論全員生還ですが、その内容は……。


さてストーリーの紹介では本作が原作とかけ離れていると書きましたが、それはストーリー面の話で、グラフィック面や小ネタは充分原作を意識したものとなっています。例えば下半身を失った男や骸骨のグラフィックは原作のワンシーンをドット絵で忠実に再現したものですし、本作で最強の威力を持つ武器『三又の矛』は原作で間宮夫人と秋子が対決した際に秋子が武器にしていた三又の農具に由来します。

中でも圧巻なのが間宮夫人との最終決戦時のグラフィックで、怨念により醜くおどろおどろしい姿に変貌してしまった原作の間宮夫人を実に鮮やかにドット絵に取り込んでいます。ぶっちゃけ子供が見たらトラウマになりかねないレベル。

本作の全ての戦闘の中でこの間宮夫人戦だけは単純な力押しでは勝てないようになっており、そういう意味でも間宮夫人戦が本作で一番印象に残ったという人も多いのではないでしょうか。本作のグラフィックはどれも恐怖を煽るものばかりですが、間宮夫人は特にピカ一です……。


本作で使用されたシステムの一部は、その後ジャンルを越え「バイオハザード」へと受け継がれていく事になります。ただでさえ原作もの、それも原作の権利関係の問題によって今後何らかの形で配信される事が極めて絶望的なのがただただ惜しい逸品であります……。



とりあえず、今回はこれにて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ