第百二十一夜 スペランカー
一つ、ゲームの話でもしようか。
ここで一つ質問。アイレムの代表的なゲームと言えば?
大半の答え『そもそもアイレムという会社を聞いた事がない』
シューター(シューティングゲーム愛好家)の答え『やっぱ「R-TYPE」シリーズでしょ!』
レトロゲーマニア及びクソゲーハンターの答え『「スペランカー」一択』
予想される一通りの答えを書き出してみましたが、皆様はどれに当て嵌まったでしょうか。筆者の場合は……本エッセイの主旨を考えれば、自ずと見えてくると思います。
という訳で今回のテーマは「スペランカー」です。やった事のないユーザーにも、主人公の虚弱体質ぶりですっかり有名になってしまったこのゲーム。
じゃあ具体的にどんなゲームなのか?と聞かれると、知らない人も案外多いのではないかと思います。そこで今回は、「スペランカー」が具体的にどんなゲームなのか紐解いてみようと思います。
それではようこそ、「スペランカー」の世界へ!
本作はファミコン黎明期、アイレムよりファミコンにて発売された横スクロールアクションゲームです。実はアイレムが一から作った訳ではなく、海外のパソコンゲームとして「ロードランナー」などの原作も手掛けたブローダーバンド社が開発したものをファミコンに移植したものだったりします。
昔のアクションゲームらしくストーリーらしいストーリーは特になく、プレイヤーは自機を操り最下層にある財宝の間を目指す事になります。以下に、本作の操作方法やシステムを解説していきます。
まず本作の基本操作は十字キーの左右で移動、Aボタンでジャンプ、Bボタンでブラスターの発射です。ここは普通のアクションゲームとそんなに変わりません。
また十字キーの上を押しながらBでフラッシュの発射、十字キーの下を押しながらBでダイナマイトの設置をそれぞれ行います。但しこの二つを使うには、事前にそれぞれのアイテムを入手している必要があります。
十字キーの上下は他にも、ロープを登り降りするのにも使います。以上が、本作の操作方法の全てとなります。
ここまでだと、シンプルな割に意外と出来る事が多くそんなに難しくなさそうにも感じます。ところが、本作がクソゲーとして有名になった所以は次にご紹介するシステムの数々にあるのです。
一番の語り草になる点としては、落下死判定の厳しさです。本作では一定距離を落下すると死亡判定が入るのですが、その高さは何と自機の身長の半分。現実ならば、自分の腰ぐらいの高さから落ちて死亡した事になります。
他のゲームで言えば任天堂の「ドンキーコング」が同様の落下死判定を持っていますが、「ドンキーコング」はファミコンと同時に発売されたソフト。対して本作は、「スーパーマリオブラザーズ」を始めとした落下死判定自体が底無し穴に落ちない限りないゲームが一般化した頃に発売されたソフトです。本作の自機が特別貧弱に見えても仕方ないでしょう。
しかもこの落下死、例え仕様を理解していたとしてもロープから足を踏み外す事で割と頻繁に見る事になります。本作のロープからジャンプするタイミングは非常にシビアで、慣れないうちはタイミングが合わなかった事によるロープからの落下死で残機を減らしてしまいがちです。
落下死だけでなく、自機を助けてくれる筈のアイテム群も時として悲劇を呼びます。まずブラスター。これは時々BGMの変化と共に画面端から現れ、徐々にこちらに近付いてくる幽霊を退治する為に使うものなのですが、使う度にエネルギーが減っていきます。そしてこのエネルギーが0になると、自機は死亡してしまいます。
幸いエネルギーを回復出来るアイテムは至る所にありますが、このエネルギー、例えブラスターを使わなくても時間経過でじわじわ減っていくのが困り者。攻略に時間をかけすぎて、いつの間にかエネルギーが残り少なく……なんて事にならないよう気を付けましょう。
次にフラッシュ。これは上空を飛んでいるコウモリを消す為に使うものですが、発射した後ゆっくり落ちてくるフラッシュに触れるとやっぱり死にます。
ならフラッシュを使わなければいいだけの話と思っても、使わなかったら使わなかったでコウモリの落とす糞に触れればそれだけで死にます。どんな死因だと思わなくもないですが、「アトランチスの謎」でも糞一発で自機が死にますし、死なないまでも糞でダメージを受けるゲームはこの時代幾らでもあるので、ゲーム界の糞は特別毒性が強いんだと思っておきましょう。
最後にダイナマイト。これは前二つとは違い、敵を倒す為ではなく道を塞ぐ大きな岩を破壊する為に使うのですが、爆破時ダイナマイトとの距離が近いと問答無用で死にます。これはまだ他と比べたら納得のいく死因ですが、爆発の影響する範囲が見た目より遥かに広いので設置したら即かなりの距離を置かないとあっさり爆発に巻き込まれます。
また本作では常に画面がスクロールするのではなく、画面端まで行く事で次の一画面に切り替わるというスクロール方式を取っています。この為行く手がどうなっているか常に見渡す事が出来ず、これも難易度上昇の要因になっていると言えます。
これら仕様を乗り越え最後までクリアしたとしても、本作はエンディング後すぐに二周目が始まるループゲー。ちゃんとしたエンディングがある方が少ない時代の作品故仕方がないとは言え、報われない話ではあります……。
以上の点から長年クソゲーと呼ばれ続けてきた本作ですが、いざ実際に遊んでみると意外にも操作性は軽快かつ快適、ロープの判定の厳しささえ除けば割とすんなり先に行ける絶妙な作りだったりもします。ただロープ、ここだけはクソゲー呼ばわりもやむを得ない。それくらい事故る。
ロープの判定がもうちょっと緩くなるだけでも、本作をクリア出来る人は格段に増えて、今ほどクソゲー呼ばわりされなかったんじゃないかなと思います。だって筆者の本作での死因、九分九厘ロープ……。
余談ですが、本作と言えば発光ダイオード付きのカセットが有名です。この発光ダイオードはカセットをファミコンに挿し込み電源を入れると光るという、何の為に存在しているのかよく解らない役割を持っています。
しかし実は、発光ダイオードが始めから付いていないカセットも存在していたりします。筆者の持っているのはこちらのカセットで、どうやら後期型のカセットには発光ダイオードを付けなくなったらしいです。
どちらの方がレアなのか筆者には判別出来ませんが、きっと一番レアなのは、今も発光ダイオードが点灯するカセットだろうなとは思います。発光ダイオードの寿命ってどれくらいなんですかね?
笑えるクソゲーか、それとも悲運の名作か。遊んだ人によって、評価が分かれやすい本作。
一つだけ言えるのは、もしもクソゲーとして扱われなかったら、本作が現在の知名度を誇る事はなかったであろうという事です。
とりあえず、今回はこれにて。




