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第百二十夜 山村美紗サスペンス 京都龍の寺殺人事件

一つ、ゲームの話でもしようか。



……と言っておきながら、今回のサブタイトル。読者様の中には、筆者が二時間サスペンスにまで手を出したのかとお思いになられた方もいるかもしれません。

違います。れっきとしたゲーム名です。

山村美紗氏と言えば京都を舞台に数多くのミステリーを手掛け、その殆どが二時間サスペンスとしてドラマ化されたという西村京太郎氏と並ぶ日本ミステリー界の大御所です。二時間サスペンスの名脇役としてお馴染みの女優、山村紅葉氏の実の母でもあります。

そんな山村美紗氏、ファミコンのアドベンチャーゲームの原作も何本か手掛けた事があるのです。事件は勿論完全オリジナルで、著書からの使い回しは一切行っておりません。

今回ご紹介するのは、山村美紗氏原作でお送りするアドベンチャーシリーズの第一弾。「山村美紗サスペンス 京都龍の寺殺人事件」です。


本作はファミコン最盛期、タイトーよりファミコンにて発売されたコマンド選択型アドベンチャーゲームです。メインとなる調査画面が通常のアドベンチャーゲームより大きく、登場人物も大きく写実的に描かれているのが特徴です。

以下はストーリー。ゲームデザイナーの主人公は、新作ゲームのイベントに出席する為京都の龍安寺を訪れていた。そこで主人公は、桜の花びらの下に埋もれていた変死体の第一発見者となってしまう。折しも丁度龍安寺を始めとした京都の龍に纏わる寺を舞台に殺人事件が起こるというゲームを企画していた主人公は、その為に警察にマークされてしまう事に。自らにかかった容疑を晴らす為独自に事件の調査を開始する主人公だったが、そんな主人公を嘲笑うかのように企画していたゲーム通りに第二、第三の殺人が起こっていき……。唯一の手掛かりは最初の被害者『尾沢百合子』が残した、桜のダイイングメッセージ。京都龍の寺を舞台にした、恐ろしくも悲しい連続殺人の行方や如何に……。といった感じになっています。

本作には山村美紗氏の著書に登場する名探偵の一人、キャサリンが友情出演しており、事件捜査に関しては素人の主人公をサポートしてくれます。当時名探偵キャサリンシリーズのドラマは諸般の事情から全て主役を日本人に差し替えられており、そんなキャサリンを紙媒体以外で活躍させてあげたいという理由から白羽の矢が立ったのかもしれません。


さて本作は非常にオーソドックスなコマンド選択型アドベンチャーゲームなんですが、その中で目を引くのが……コマンドアイコン。これがまた異常にリアル。

『見る』のアイコンなんて、気が弱い子が見たら泣くんじゃないでしょうか。何故そこでリアルな目を描いた……。

詰みになるパターンや途中ゲームオーバーもなく、ファミコンのアドベンチャーゲームとしては難易度は易しい方に入ります。但しパスワードを取れるタイミングが限られているので、自由な中断が出来ないのがネックです。

ただ進行の一部にプレイヤーのリアル知識が要求される場面があり、そこはちょっと詰まりポイントかもしれません。実際筆者もそこで詰まり、そこだけ攻略サイトを参照した経験が……。


日本ミステリー界の大御所、山村美紗氏が原作を手掛けただけあってストーリーは実に筋道立っています。容疑者候補の人物が次々と殺されていく展開なんかは、本当に二時間サスペンスを見ているかのようです。

ただその容疑者候補、ちょっと多すぎやしませんか。主人公達は最初の犠牲者が残したダイイングメッセージを元に容疑者を絞り込んでいく事になるのですが、その数何と五人。全然絞り込めていません。

しかもこれ、捜査開始の時点ですでに三人ダイイングメッセージ該当者がいたのに、絞られるどころか後から更に該当者が二人増えるというまさに雪だるま式。一体何人のプレイヤーが、『もうちょっと役に立つダイイングメッセージを残してくれ……』と思った事でしょうか。

一応このダイイングメッセージには二重の意味があり、そのもう一つの意味は物語終盤に明らかになる為全く意味がない訳ではないのですが……。それにしてもこれだけ大勢ダイイングメッセージに引っ掛かるようにするのは、かなり大変だったと思います。そこの辺りは流石大御所。


余談ですが本作のパスワード、当然入力した名前も記録されるのですが付けた名前が四文字に満たないとパスワードにも空欄が出来てしまいます。しかしこの状態でパスワードを入力すると、空欄部分にちゃんとスペースを入力もしているのにパスワードを受け付けないというバグが起こる事があります。

どうやら未入力によって出来た空欄とスペースを入れて作った空欄がそれぞれ別の文字として認識されている事によって起こるバグらしく、パスワード入力の際はスペースを入れる事でしか空欄が作れないので、そのパスワードを正しく入力する事は実質不可能という事態に……。バグを完全に回避するには四文字きっちり名前を詰め込むしかなく、少々厄介なバグと言えます。


多少強引な部分はあるもののストーリーに矛盾点はなく、推理アドベンチャーゲームのお手本とでも言うべき本作。山村美紗氏、特に名探偵キャサリンシリーズのファンならやって損はない内容だと思います。



とりあえず、今回はこれにて。

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