第百六夜 モンスターメーカー 七つの秘宝
一つ、ゲームの話でもしようか。
日本に古くからある和製TRPGの一つに、「モンスターメーカー」というものがあります。元は同名のTCGから生まれたこのゲームはふわふわとした愛らしいキャラクターデザインから好評を得、世界観やキャラクターを使った漫画やテレビゲームが幾つも世に送り出されました。
ですがTRPGをやる層は最低でも中学生以上。当時小学生がメインユーザーだったテレビゲームとは客層が合わず、テレビゲーム版をプレイした大半のユーザーは恐らく原作の存在を知らずにプレイしていたものと思われます。
この「モンスターメーカー」のテレビゲーム。後期のものは普通のRPGとなりましたが、初期のものはTCG版やTRPG版のシステムも一緒に盛り込んだ一風変わったRPGという扱いでした。
(悪い意味で)話題に上りやすいのは後期のシリーズですが、初期のシリーズの方はその独特のシステムにハマった人もけして少なくはなく、名作とまでは言わないが佳作ではあるという評価が多い気もします。今回ご紹介するソフトも、そんな初期の佳作のうちの一つです。
その名は「モンスターメーカー 七つの秘宝」。TCGやTRPG由来のシステムとは、一体どんなものなのでしょうか。
本作はファミコン後期、ソフエルよりファミコンにて発売されたRPGです。前述のように原作付きの本作ではありますが、ストーリーは完全なオリジナルで主人公も新規にデザインされたキャラとなっています。
以下はストーリー。様々な種族とそれを守護する神々の住まう大陸、ウルフレンド。その中央、火山島ブルガンディの地下神殿に眠るかつて人間を守護していた神ゾールは、ウルフレンドを手中に収める為自らの配下である闇の軍団に神々が地上に残した『秘宝』と呼ばれる七つの宝石の捜索と、世界を救う者と予言されたブルガンディに産まれたという『光の子』の抹殺を命じる。一方その南西にある『予言の塔』では、ゾールの動きを察知した予言者タリエシンが弟子であるルフィーアに『光の子』を探し出し、自分の元まで連れてくるよう指示していた。早速ブルガンディに向かおうとするルフィーアに、タリエシンは『光の子』はブルガンディではなく東のベングにおり歳も十三であると告げる。師の言葉を信じベングに旅立ったルフィーアは、途中行方不明になった王女探しに巻き込まれながらもダンシネインの森にて遂に『光の子』に遭遇する。ここから『光の子』――『あなた』の物語が、幕を開ける――。といった感じになっています。
主人公である光の子は性別の選択が可能で、性別によるストーリーの違いはありませんがグラフィックが大きく異なってきます。「ドラゴンクエスト」型の主人公で台詞もないので、どちらの性別にするかは完全に好みで決めてしまって良いでしょう。
本作ではキャラやアイテムは皆カードとして表示され、一つ一つイラストが用意されています。全部のアイテムのイラストがゲーム内で見られるというのは、当時としてはなかなか珍しかったのではないでしょうか。
それだけではなくフィールドの建物やダンジョンマップもカードになっていて、裏になっている場所は素通り出来ないようになっています。フィールドの建物はストーリー進行によって表になったり裏になったりし、ダンジョンマップは敷き詰められたカードを一枚一枚表にしていく事によって先へと進んでいきます。
ダンジョンマップの中では、宝箱が落ちていたり罠が仕掛けられていたりと様々なイベントが発生します。イベントの有無は回転する平行四辺形のマークで表され、宝箱や魔法の泉などプラスになる事の多いイベントは明るい色、罠や固定敵出現などマイナスになる事の多いイベントは暗い色と分かれているのでどちらのイベントに当たったかカードをめくった段階ですぐ解るようになっています。
基本的にはしらみ潰しにカードをめくってダンジョンの構造を暴いていく事になる訳ですが、折角表にしたカードをまた裏にし直してしまうトラップや、中盤以降になるとめくった側からいま来た道のカードが裏に戻ってしまうダンジョンなども現れ、正直捜索難易度はかなり高めです。フィールドで表になった建物のダンジョンマップは全てカードが表になった状態になるという要素はありますが、めくったカードがまた裏になっていくダンジョンだとこれも一回戦闘に突入してしまうと表になっていたカードが全部裏に戻る為、これらのダンジョンには正直クリア後は近寄らない方がいいです。
ちなみに本作、一度別のダンジョンに入ってから前来たダンジョンに戻るとストーリーに関わる重要イベント以外のイベントが全てリセットされ、宝箱の中身も復活します。これを利用し、高く売れるアイテムのあるダンジョンに何度も出入りしてお金を稼ぐのが本作における金策の基本となります。
本作でパーティーに入れられるのは計五人。そのうち固定メンバーとなるのは光の子、ルフィーアと中盤に加入するあと一人で、残りは好きなキャラを任意で選んでいく事になります。
キャラは通常酒場におり、昼間に酒場を訪れる事でその酒場にいるキャラを仲間に入れる事が出来ます。キャラを仲間にするには賃金がかかり、手持ちのお金が必要賃金に足りないとキャラは仲間になってくれません。
各キャラには職業や種族が設定されており、それぞれの職業や種族の得意分野のバランスを考えてパーティーを組まないとクリアは困難となります。以下にそれぞれの職業や種族の特徴を上げていくので、参考にしてみて下さい。
戦士は物理攻撃に長け、重い武器や防具も装備出来ます。レベルが上がってもMPは0のままで、魔法は一切使えません。
盗賊は罠の発見や解除が得意で、装備出来る武器防具は少ないもののいるといないとでは生存率が大きく変わってきます。戦士と同じくMPは0固定で、魔法は使えません。
神官は唯一回復魔法を自力習得します。ですが後衛キャラなのに後列からの攻撃手段を持たないなど扱いはかなり不遇で、本作随一のいらない子でもあります……。
魔術士は物理攻撃が一切出来ない代わりにそれぞれ自己魔法というものが設定されており、通常攻撃はその魔法を用いて行いMPも消費しません。勿論レベルアップする事でも様々な魔法を覚え、そちらはMPを消費して発動します。
エルフは鼻が利き、魔法の泉の正しい効果を見抜く事に長けています。また他の種族では扱えないような高性能の弓も装備出来、魔法も使います。
ドワーフは戦士と同一の性能で、MPが0なのも一緒。仲間に出来るようになる頃には戦士が固定メンバーとして常駐している事もあり、神官と同じくらい不遇な立ち位置と言えます……。
シャーズ(猫の獣人の一族)は攻撃力そこそこ、鼻が利いて罠にも強い、おまけに魔法まで使えるという万能キャラクター。唯一の欠点は、中盤以降にならないと登場しないという事でしょうか。
隊列は前列三人まで、後列二人までと決まっており、後列のキャラは回避率が上がる代わりに弓か魔法を使わないと敵に攻撃する事は出来ません。また前列のキャラより後列のキャラを多くする事は出来ず、例えば前列一人、後列二人といった編成は不可能になっています。
なお死亡したキャラを町に連れていくと自動的に寺院に引き取られ、提示された金額を支払わないと再び仲間に出来なくなるのですが、例外的に光の子やルフィーアなどの固定メンバーだけは手持ちが必要金額に満たなくてもその時の手持ちを全額支払う事で復帰させられます。固定メンバーの三人は戦闘でも要になる事が多いので、ありがたい措置ではあります。
本作では一人が覚える事の出来る魔法は三つまで。特に回復魔法を覚えるのは僧侶だけで、戦闘中は常に回復の手が足りないなんて事になりがちです。
そこで利用する事になるのが魔法ギルドです。魔法ギルドではMPを好きな魔法カードと交換し、本来そのキャラが覚えない魔法を使う事を可能にするのです。
各魔法カードには使用レベルがあり、キャラがそのレベルに達していないとMPがいくらあっても交換は出来ません。交換したMPは魔法カードを使った後で宿屋に泊まるなどすると回復しますが、魔法カードを所持している状態だといくら宿屋に泊まっても回復はしません。
このシステムの恩恵を最も受けているのが光の子で、光の子は手に入れた秘宝の力を魔法として使いますが秘宝の利用にはMPは使用しませんし普通の魔法も覚えません。即ち限界までMPを魔法カードにしてしまっても問題がないので、必要な魔法カードをいつでも手元に置いておく事が出来ます。
本作では敵と戦っても経験値は得られず、戦闘でのレベルアップが出来ません。ではどうやってレベルを上げるのかと言うと、ストーリー間に設けられたクエストをクリアする事でレベルアップするというTRPGのようなシステムになっているのです。
ここで気を付けなければならないのは、レベルが上がるのはその時パーティーにいるキャラだけだという事。後で仲間に出来るキャラほどステータスが優秀という傾向はあるものの、それならばそのキャラを仲間に出来るようになったらすぐに入れ替えるなどしないと限られたレベルアップの機会を無駄にしてしまいます。
またクエストによっては特定のキャラをパーティーに入れていないと先に進めない場合もあり、そこも悩みどころ。各ダンジョンのどこかにいる『ウルの御使い』の元を訪れる事でレベルがあまりに足りないキャラのレベルを引き上げて貰えるという救済策はあるものの、弱いキャラを連れてそこまで行く手間を考えるとやはり取捨選択は早め早めに行った方がいい気はします。
本作ではモンスターを仲間にし、戦闘に参加させる事も出来ます。仲間のモンスターは光の子の所持アイテムとして同行し、戦闘中に使う事でその戦闘の間のみ一体だけが六人目のメンバーとして参戦します。
モンスターを仲間にするには戦闘中に交渉して仲間に引き入れるか、各ダンジョンにいる魔物使いから購入する必要があります。魔物使いから購入する事でしか仲間に出来ないモンスターも多く、そこが先達である「女神転生」シリーズとの差別点となっています。
モンスターからは時に情報を聞き出す事も出来、攻略の役に立つとは言い難いものの本作の世界観をより深く知る手掛かりにはなります。人間型や亜人型など話が通じそうなモンスターが出たら、とりあえず話しかけてみるのもいいかも。
合わない人には合わないが合う人にはとことん合う、そんな言葉を体現したような本作。可愛いキャラが好きな方、古き良きTRPGが好きな方。そんな方ならハマれるかも?
とりあえず、今回はこれにて。




