第百五夜 ファイナルファンタジー6
一つ、ゲームの話でもしようか。
いよいよこのスクウェアエニックス大特集も、残すところあと一作品となりました。大トリを務めますのはこの作品、スーパーファミコン最後の「ファイナルファンタジー」。「ファイナルファンタジー6」です。
「ファイナルファンタジー」シリーズの世界観が完全に切り替わる前の、過渡期的存在でもある本作。じっくりたっぷり、お届けしようと思います。
本作はスーパーファミコン黎明期、旧スクウェア、現スクウェアエニックスよりスーパーファミコンにて発売されたRPGです。ここで「ファイナルファンタジー」シリーズの発売は一旦止まり、次作「ファイナルファンタジー7」がプレイステーションで出るまでには約三年の歳月がかかる事となります。
以下はストーリー。かつて『魔大戦』と呼ばれる激しい戦いが起こり、その末に魔法を操る魔導の力が失われた世界。魔導の力をこの世に復活させ、その力で世界征服を企むガストラ帝国の兵士達が、帝国の最新兵器『魔導アーマー』に搭乗し中立を掲げる炭鉱都市ナルシェへと向かう。帝国の狙いは、ナルシェで見つかったという氷漬けの幻獣。帝国はこの幻獣を手に入れ、更なる力を得ようとしていたのだ。しかし目当ての幻獣の元まで辿り着いた時、兵士達に同行していた、今は洗脳され操られている生まれつき強い魔導の力を宿す少女ティナと幻獣が共鳴し、それによって生まれた光が兵士達を消し去りティナの意識をも奪う。次に意識が戻った時、ティナの洗脳は解けていたがその代償として記憶を失っていた。反帝国組織リターナーの一員である青年ロックの助けもあり何とかナルシェから脱出したティナは、紆余曲折の果てに自らもリターナーの一員となり帝国との戦いに身を投じていく事となる。何故自分が魔導の力を持つのか、その理由も知らないままに……。といった感じになっています。
本作のコンセプトは、『パーティーキャラ全員が主人公』。序盤こそこのあらすじ通りティナが中心となって話が進みますが、ストーリーが進行していくにつれ物語の中心人物はどんどん変わり、一貫した固定メンバーというものが最後まで存在しない群像劇的な作りになっています。
終盤必ずパーティーに加入するキャラは現れるもののそのキャラを戦闘メンバーとして選ぶ必要は必ずしもなく、実に自由な編成が可能です。物理攻撃が得意なメンバーで固めるも良し、面白い固有コマンドを持つキャラを集めたトリッキーな編成にするも良し。是非自分だけのお気に入りメンバーを作ってみて下さい。
本作は魔法の覚え方が少々特殊で、一部キャラのみレベルアップでも少量の魔法を覚えますがそれ以外のキャラはいくらレベルアップしても魔法を覚えませんし店売りもしていません。ではどうやって魔法を覚えるのかというと、中盤から登場する『魔石』というアイテムを装備する必要があるのです。
魔石とは幻獣の力の結晶で、装備したものに魔導の力を与えてくれるという代物です。魔石に宿る幻獣によって覚えられる魔法は異なり、後に手に入れる魔石ほど強力な魔法が習得可能になります。
但しただ魔石を装備しただけでは、魔法を使う事は出来ません。魔法を覚えるには魔石を装備して敵と戦い、魔導経験値というポイントを溜める必要があるのです。
魔石で覚えられる各魔法にはそれぞれ、戦闘で入手した魔導経験値が最終的に幾つになるかという倍率と個々のゲージが付いています。倍率によって増えた魔導経験値はゲージに加算され、ゲージが100になった魔法から順に使えるようになります。
一度習得した魔法はその魔石を外した後も使用可能になるので、時間をかければ全てのキャラに全ての魔法を覚えさせる事も可能です。ただ強力な魔法ほど勿論倍率は低くなるので、一人に全ての魔法を覚えさせるだけでも膨大な数の戦闘をこなさなければならないのですが。
また少々玄人向けの恩恵ではありますが各魔石にはそれぞれレベルアップボーナスがついており、通常完全に決まっているレベルアップによるステータス上昇にプラスして装備している魔石によるボーナス分更にステータスが上昇する仕組みになっています。これを利用する事である程度ステータスを自由にカスタマイズする事が出来、例えば魔法使いキャラのHPをボーナスで増やして死ににくくしたり、逆に魔力を更に上げて魔法の威力を底上げするといった育成も可能になるのです。
早い内に魔法を沢山覚えさせてどんな場面にも対応出来るようにするか、それともステータスアップを重視し素の戦闘力を鍛えていくか。プレイヤーによって、プレイスタイルが分かれそうな点であります。
なお戦闘中は魔石に宿っている幻獣を一回だけ召喚出来、宿屋に泊まる事によって使用回数は回復します。使用制限もありあまり使う機会のない召喚ですが、本作の召喚は歴代に比べてトリッキーな効果が多く各幻獣達のドット絵もどれも気合いが入っているので、たまには召喚して日の目を見せてあげるのもいいのではないでしょうか。
その他のシステム面ではお馴染みATBが進化し、ATBバーが溜まったキャラが複数いた場合に誰から先に行動させるかを任意で選べるようになりました。更に味方の行動が必ずコマンドを入力した順に行われるようになり、キャラ間の連携も取りやすくなっています。
全部で十四人いるパーティーキャラ達は全員必ず一つは固有のコマンドを持っており、それらを上手く活用する事で戦闘がより有利になります。専用アクセサリを装備する事でコマンドの種類が変化する場合もあり、戦略の幅を更に広げてくれます。
ダンジョンやイベントによっては、複数パーティーを交互に操って進めていく必要があります。使用キャラがあまりに偏っているとこの時のパーティー分けに苦労する事になるので、なるべく全てのキャラを均等に育てていくのが好ましいです。
本作では全滅後自動的に最終セーブポイントまで戻され、所持アイテムやイベントフラグなどもセーブ時の状態に戻りますが、レベルとレベルアップによって上がったステータスだけは全滅時の状態が継続されます。これにより経験値が無駄にならずに済む為、一度全滅したからといって諦めないように。
本作の売りと言えばやはり、後半の自由度の高さでしょうか。飛空艇入手とそれに必要なキャラの加入だけは絶対こなさなければいけませんが、それ以外はどこへ行くも自由、誰を仲間にするも自由。
やろうと思えば、最低人数の三人だけでラストダンジョンを踏破しラスボスを倒す事も可能です。出来るものならですが。
中には特定キャラを仲間にしてからでなければ起きないイベントや手に入らないアイテムや魔石もあり、後半の全てを極めるのは結構大変だったりします。希少なアイテムを賭けて勝つ事で更に希少なアイテムが手に入る施設『闘技場』もあり、アイテム収集にこだわるプレイヤーはハマってしまったのではないかと推測します。
パーティーキャラとなる魅力的なキャラクター達も、本作を彩る要素の一つです。『全員が主人公』を掲げるだけあり彼ら彼女らはそれぞれに物語を持ち、それらはストーリーの大筋と時に密接に絡み合っていきます。
筆者のお気に入りはトレジャーハンターの青年ロック。泥棒と呼ばれるのを嫌う割には固有コマンドが『ぬすむ』、しかもストーリーの都合上必ず『ぬすむ』を使わなくてはならない、ストーリー面で言えば盛大な守る守る詐欺の数々やかつての恋人の死体を防腐処理した上でそれを蘇らせようとしているサイコ具合などツッコミどころには事欠かない彼ですが、コミカルな面も多くそこが魅力となっています。
余談ですが筆者はこういう、飄々としてなかなか本心を見せない的なキャラクターが好きな傾向にある気がします。本当にどうでもいい話ですが。
ファンタジーを軸にしながらも随所に見えるスチームパンクな雰囲気は純ファンタジーだった前作と近未来的雰囲気を持つ次作のまさに中間といった感じで、シリーズ全体で見ると非常に興味深い立ち位置にあると思います。本作を最後にナンバリング作品に触れる機会がなくなった筆者ですが、この頃遊んだ「ファイナルファンタジー」達は今も色鮮やかな記憶となって心に残り続けています。
とりあえず、今回はこれにて。




