第百一夜 ディシディア ファイナルファンタジー ユニバーサルチューニング
一つ、ゲームの話でもしようか。
少し前までよくあった販売戦略に、完全版商法というのがあります。これは新作ゲームを出してすぐに追加要素を付けた同じゲームをもう一度出すという手法で、有名なものだとコーエーテクモゲームズの「真三國無双」シリーズの「猛将伝」がこれに当たります。
この場合、当然最初のバージョンを買った人は損をするのでユーザーからは良く思われません。但し近年ではネットを通していつでもソフトウェアのアップデートが可能になった為、この完全版商法は過去のものになりつつあります。
さて前回ご紹介した「ディシディア ファイナルファンタジー」にも完全版が存在します。「ディシディア ファイナルファンタジー」発売時、スタッフインタビューで『詰め込める事は詰め込みきった(意訳)』と言っていたにもかかわらず一年経たずにアッパーバージョンが発売された事に関しては、当時は賛否両論あった模様です。
もっともこれが完全版と言っていられたのも短い間で、この後更に前作が丸ごと一本収録された上追加要素増し増しの続編「デュオデシム ディシディア ファイナルファンタジー」が発売される事になるのですが……。このせいで古いバージョンになればなるほど価格が大暴落を引き起こしているのが、どこか哀愁を誘います。
とにかく今回は、そんな悲劇の完全版として発売された作品。そのバージョンアップ前との変更点に重点を置いて、ご紹介しようと思います。
その名は「ディシディア ファイナルファンタジー ユニバーサルチューニング」。前回紹介し切れなかった仕様も合わせてご覧下さい。
本作は「ディシディア ファイナルファンタジー」発売からおよそ十ヶ月後、スクウェアエニックスよりPSPにて発売された対戦格闘ゲームです。完全版とは言うものの扱いとしてはインターナショナル版で、要は海外販売した際に付けた追加要素を日本でも付けて発売しようという流れで販売されたものです。
ストーリーには変化は一切ないので、説明はここでは省きます。バージョンアップ前では台詞だけのやり取りだったシーンの幾つかに新たにムービーが作られてはいますが、何せインターナショナル版ですのでムービーは全編英語で日本語への切り替えも出来ず、筆者のように英語に疎いユーザーは字幕に頼らざるを得なくなります。
まず操作面での変更点としてキャラ毎に技のバランス調整がなされた、いわゆるテコ入れが入った点が挙げられます。具体的に言うと空中技が少なかったキャラに空中技が新しく追加されたり、大量のブレイブ攻撃派生のHP攻撃を持っていたキャラは使いやすい方の派生を新たに単発のHP攻撃に作り直して弱体化させたりと、主にキャラ間の格差をなくす方向でのテコ入れが多くなされました。
これにより一部のキャラの操作感は大きく変わる事になり、そのキャラをメインで使用していたユーザーは新たな仕様に慣れるまで大変だったと思います。幸い筆者の使用キャラのバッツは細かい調整が入っただけで、操作感に大きな変更はありませんでしたが。
他にも「ディシディア ファイナルファンタジー」にはフリーエアダッシュというアビリティがあり、これをセットすると敵やEXコアの元まで一気に接近出来るようになるのですが、バージョンアップ前はレベルアップ習得だったこれが本作ではレベル1からの標準装備となっています。これにより最初からスピード感のあるバトルが展開出来るようになり、初期の出来る事が少ないもどかしさが軽減されています。
なお日本語切り替えが出来ないのはムービーだけで、バトル中のボイスの方はちゃんと英語と日本語の切り替えが可能です。英語日本語にかかわらずバトル前の掛け合いには字幕が入るようになっているので、日本語にすると日本語なのに字幕が出るというシュールな事になりますが、よく考えたらバージョンアップ前のムービーも日本語なのに全部日本語字幕入りだったのであまり変わりませんね。
ストーリーモードでは前述の通り新規ムービーが追加されている他、HPだけでなくEXゲージもバトル外でも確認出来るようになったり、時間制限系のDPチャンスはバトル中に失敗までの残り秒数が表示されるようになったりと全体的に親切になっています。特にDPチャンスの残り秒数表示は嬉しく、達成出来るか怪しくなったら即リトライが出来るので達成出来たと思ったらギリギリ時間が過ぎていた……という事故も大分減る事となりました。
クイックバトルでは敵からドロップ出来るアイテムの種類が増え、バージョンアップ前はデュエルコロシアムの特定のコースの更に特定の敵からしかドロップ出来なかった装備もクイックバトルでドロップが可能になりました。アイテムドロップはバトル勝利後確率でしか出来ないとは言え、デュエルコロシアムで対象の敵が出るまで粘ったりしなくても良くなった事を考えると大きな時間短縮になります。
そのドロップ限定装備もバージョンアップ前は性能が中堅クラスの、手に入る頃には完全なコレクターアイテムだったのですが本作では最高クラスにまで性能が引き上げられ、実用に十分足るアイテムに変わりました。「ディシディア ファイナルファンタジー」には特定のシリーズの装備を複数装備する事でそのシリーズに対応した特殊効果が付くというボーナスがあり、該当アイテムはそのボーナスも強力なので是非とも全種類揃えたいところです。
デュエルコロシアムではまず、更に強力な敵が出現するコースが追加されました。素材は既存のコースを遊ぶだけでも全て集める事が可能なので、挑戦はあくまで任意なのがありがたいところです。
またメダルで取得出来る素材に、エリクサーシリーズが増えました。これらは集めるとショップで必要な素材と交換出来るようになるもので、これによりいつまで経っても欲しい素材が流れて来ないという素材難民状態が解消された形になります。
但し強力な素材と交換するにはレベルの高いコースで手に入るエリクサーと交換するしかないので、レベルの低いコースだけ回って装備を全て揃えるという横着は出来ません。強力な素材が欲しいなら、大人しくレベルの高いコースを遊びましょう。
本作には既存のモードの他に、もう一つ追加されたモードがあります。それがアーケードモードです。
アーケードモードでは始めから全てのキャラが選べますが、使える技や装備品は全て決められた状態で変更は一切出来ません。その状態のキャラを操り十連戦し、どれだけ早い時間で全ての敵を倒せたかを競うモードです。
連戦中は一度負けたら自動リタイアとなり、コンティニューは出来ません。またクリア報酬としてエリクサーシリーズも手に入るので、腕に自信があればアーケードモードを周回した方が早く素材が集まるかもしれません。
なお十戦目は必ず、ラスボスでもあるカオスとのバトルになります。カオス戦は必ず三連戦となるので、実質十二連戦しなければならないのが辛いところです……。
「ディシディア ファイナルファンタジー」ではPSP本体の時計と連動して時間が流れ、一日に一通か二通モーグリ達から手紙が届く仕組みになっています。時にはモーグリ達への返事を三択で選ぶ事となり、その反応によって限定アクセサリや、本来は通信で手に入れるしかないフレンドカードを特別に貰えたりします。
そのモーグリ達からの手紙の中にはクイズも混じっており、全問正解する事でフレンドカードを入手する事が出来ます。クイズは「ファイナルファンタジー12」までのナンバリングの中から満遍なく出題され、攻略サイトに頼らず全問正解出来た人は相当の「ファイナルファンタジー」通だと言えるでしょう。
さてそのクイズ。本作では全て一新され、出題内容もよりマニアックになっています。
全問正解で手に入るフレンドカードは他の手紙でも手に入るものばかりとは言え、不正解は何だか悔しいもの。どうせならしっかり全問正解し、モーグリ達の鼻を明かしてやりたいものです。
全体的に仕様が親切になりバージョンアップ前の不満の殆どが解消されているのは、流石完全版といったところ。もっともすぐに続編に立場を奪われてしまった辺り、やはり本作は不遇だなあ、と思えてしまうのです。
とりあえず、今回はこれにて。




