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始まりの迷宮 01

 新章スタートです。

 というか本編スタートです。

 それは、現在もっとも興奮するゲームである。

 ただしそれは、この現代においてもっとも危険な遊びである。

 日本で興ったこのもっとも近代的かつ原始的なゲームは瞬く間に全世界にひろがり、かつてないブームを巻き起こした。

 しかし現在、各国政府機関はこのゲームを公的には認めていない。

 このゲームは刺激的である。

 一種麻薬的な魅力を秘めている。

 そろそろ、ゲーム本体の紹介をしよう。

 ゲームのタイトルは「ミクロンダンジョン」

 ゲームジャンルで言えば「体験型ロールプレイングアドベンチャー」

  プレイヤーはミクロンシステムと呼ばれる装置で十分の一の大きさになり、プレイヤー本人が実際にダンジョンを冒険するというゲームだ。






 何の変哲も無い店に見える。

 確かに表向きマンションの立ち並ぶ住宅街の片隅に取り残された昔ながらの何の変哲もないオモチャ屋だ。しかし、本当に何の変哲もないオモチャ屋に定期的に大人ばかりが集団で出入りするなどというのもオタクがある種の市民権を得て久しいとはいえ、気にして見ていると奇異なことに気づく。

 もちろんそこはボードゲームやコンピューターゲームなどが置いてある個人経営のオモチャ屋であって、大人のオモチャ屋などではない。

 ではなぜ彼らはこんなところにいるのだろうか。彼らは一様いちように人目を避けるようにして店の奥へと消えて行く。

 そんな彼らの様子の一部始終を大きな双眼鏡で覗いていた青年がいる。ちょうど店の真向かいにある七階建のマンションの四階からである。

 部屋には彼を含めて四人いるのだが、その双眼鏡を覗いている青年を見る三人が実に奇妙な格好をしている。まるで時代錯誤な姿だ。二十年、三十年前のセンスを粋がって着ているのとは全く違う。 何というのかその姿はひどく滑稽だった。


 背の低い小太りでの男はローブを着ている。よく絵に描かれる魔法使いのアレだ。しかも、何やら難しい文章の書かれた分厚い本を片手で開き持ち、さも興味なさげに時折青年を見る仕草をしては本に視線を戻している。 まさにファンタジーの物語に出てくる魔術師のような仕草だ。本人としてはいかにもひ弱そうで、俗世に関心の薄い魔術師のつもりでいるのだろう。だが、脂ぎった丸い顔ではとてもひ弱そうには見えないし、読書もそこそこにチラチラと青年を見ていては関心が薄いとは言えない。

 三田みた善治ぜんじ。仲間には「ゼン」と、そう呼ばせている。


 その隣にいる男はモコモコとした上着を着ている。どうも綿が入っているらしいが、明らかにトレーナーの類いだ。肩の辺りが、特に念入りに綿が詰められている。察するに体を負荷から守るためのものらしい。手にはおそらく彼の手作りらしい鎧や剣のミニチュアが握られている。

 この着膨れした痩せ気味の男の名は珠木たまきおさむ。彼もまた仲間には「ジュリー」と呼ばせている。


 もう一人の男は忍者服のような着物を着て腕組みをし、何やら深い瞑想の世界に入っているかのようだ。

 仲間に「サスケ』と呼ばせている彼の名は佐藤さとう航助こうすけという。


 誠に奇妙な三人組である。


 その中にあって比較的まともに見える青年の名は、伊達だて弘武ひろむ。三人からは「ロム」と、そう呼ばれている。稽古終わりなのか藍色の拳法着が実に良く似合う好青年だ。


「どうなんだ、ロム」


 着膨れしたジュリーが沈黙に耐え切れずに身を乗り出して尋ねてくる。その言い回しは、いかにもワザとらしい熱血漢のそれであった。


「千葉のマスターの情報通りだ。間違いなくあそこにあるな。灯台とうだいもとくらしだ」


 ここは奇妙な三人組がルームシェアで借りているマンションである。彼らはこの2か月この部屋から観察していたのだ。

 その言葉を聞いて嬉しそうな響きが込められた言葉が返ってきた。


「やったな!」


 熱血なセリフだ。


「それはいいが…」


 と、口を開いたのは例のロープ男ゼンだ。彼もまた、お気に入りの古いアニメキャラクターの真似でもしているらしく、鼻にかかった妙な節のついた話し方をする。


「どうやってコンタクトを取る?」


 ゼンに視線を向けられた忍者男サスケもまた、自らの世界に浸っているらしく無言で首を横に振る。

 ロムこと弘武は、いつもの事ながら変な奴らだと頭を掻く。何故彼は、この奇妙な三人と付き合っているのだろうか?それはまだ「ミクロン」が、合法的にゲームセンターに置かれていた頃のことだ。

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