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ショート・メルヘン

‎彼氏と私と雪の結晶

作者: 雪 よしの
掲載日:2016/03/20

やっぱり、東京は暖かい。

私、立野泉は、札幌の大学の2年生。春休みで東京に帰省中。

長い春休み、ショッピングとかで、都会の空気を充電してる処。


1年生の時、初めての冬道に慣れずに、

学校の入り口にあと少し、というところで、思い切り転んだ。

痛かった。尾てい骨、折れたかと思った。


鞄の中身は、四方にちらばり、それもめちゃ恥ずかしかった。

ノートや筆記用具、その他細々としたものを、拾うのを手伝ってくれたのが、

私の今彼・隼人との出会いだった。

彼は服装には、無頓着。でも銀縁眼鏡がよく似合うイケメン。

真面目で正義感の強いところもに魅かれた。




夕暮れ時、帰る道すがら、ため息がでた。

付き合って1年ちょっと、今、私と隼人の仲は、少し冷たい風が吹いている。

もしかしたら、そう思ってるのは、私だけかもしれないけど。


原因はわかってる。雪だ。

隼人の研究は、気象学、特に雪の形成や形状について研究してる。

春から秋にかけては、ごく普通に付き合ってたと思う。

映画も一緒に行ったし、彼の車でいろんな処にでかけた。

富良野のラベンダー畑や美瑛の丘にもいった。


ところが、雪の降る季節になって、私は隼人となかなか会えなくなった。

研究で忙しいのだろう。

ラインでよびかけてもスルーされたり、メールの返信も遅かったり、なかったり。


”私と研究のどっちをとるの”とはいわないけどね。

もう少しだけ、気にかけてほしい。


(どうしようかな・・いつもメールの返信待ってるだけっていうのもつらい。

かといって、押しかけて彼の研究の邪魔もしたくない。)


そんな事を考えるようになり、自分の心にも自信がなくなった。

隼人の事、愛してる わけじゃなかったかも。

友達よりちょっと上くらいの気持ちだったのかな?


歩きながら考えるうちに、疲れた。

沿道の桜の木はもう5分咲だった。

花が一つも咲いていない小さな桜の木を見つけた。そばにアクセサリー売りが座ってる。


のぞいてみると、どれも安っぽいアクセばかりだったけど、

左側の片隅に、雪の結晶をかたどったものがあった。

隼人に雪の写真集をみせてもらった事があったから。

そういえば、あの時の隼人は、目をキラキラさせていて、

私は、一応、質問すると、嬉しそうに解説してくれてたっけ。


「あのこれ、雪の結晶をモチーフにしたものですか?」

声をかけてしまったのは、売り子の青年が、ご機嫌で鼻歌を歌ってたからか

彼は、やせていて、髪も肌の色も色素が薄いって感じ。ハーフかも。


「そそ、ここらへんアクセサリー、全部、雪の結晶の形。

このネックレスどう?」


それは、六角形の角に花びらがついたような形だった。

飾りは、1cmもない小さいもので ちょっとクールで気に入った。

本に挟むしおりも買った。これも雪の結晶の形だそうだ。


アクセのにいちゃんは、「毎度あり、これらには、少しだけご利益あるよ」

へ~どんな?って私が聞くと、”それは企業秘密”と陽気にかわされた。

ご利益に企業秘密か。なんだかよくわからない会話し、私は、その場を離れた。


アクセサリー売りには仲間がいたのか、会話が聞こえてきた。


「おせ~よ。お前。大遅刻。おかげでこの桜には かわいそうなことしちゃったよ」

「ワリい。上官の命令も遅かったけど、俺らも、今年は進みづらくてな」


なんの会話だ?後ろを振り返ったが、誰もいなかった。

瞬間、暖かい風が私のばを駆け抜けていった。

北海道にくらべれば、各段に暖かいけど、今年の東京は寒い日が続くって、

ニュースでいってたっけ。寒気団が居座ってどうのこうのと。


ー・-・--・-・-・--・-・--・-・-・--・-・-・-

雪の季節もほぼ終わったおかげか、隼人とやっと会う機会が出来た。

この場で、さりげにお別れをするつもりだ。


「隼人、久しぶり、さっそくなんだけどね・・」

と話し始める前に、彼は私を見て、いきなりあの東京で買ったアクセサリーを手にとり


「泉ちゃん、これ、雪の結晶の正規六花模様だ、すごいキレイだ」

はいはい、アクセサリーがね。もう私の事は、目に入らないんだ。


アクセをはずし、隼人にあげて、席を立とうとした瞬間。

「うわ、冷た、痛い」

と彼が目を抑えてる。


どうしたの?とやんわり聞くと、彼は私の顔を見て、思い切りのけぞった。

なに、その反応は。ムっとしたけど、顔は変えずににこやかでいた。


しばらくの沈黙の後、隼人が突然、謝りだした。

「ごめん泉ちゃん、俺、研究に夢中になってて、泉ちゃんの事、

ほったらかしにしてたかも」


何度も何度も謝まってくる。まったく、そう思うならメールの返信してくれれば。。。

今となっては、もう遅い。私の心は決まってる。春休み中、悩んだ末の結論。


「いいのよ。私の言葉や声が聞けなくても、寂しくなかったんでしょ?

それでいいんじゃない?隼人は研究者だからね。

じゃあ、さようなら。そのアクセ、あなたにあげるわ」

これで、付き合いは自然消滅にもっていこう。


あぜんとする隼人を置いていった。

 

「泉ちゃん~待ってくれ、~うわ~。なんだ、吹雪?ホウィトアウト?」

見ると、隼人の周りだけ、吹雪になってる。信じられないけど。

でも、周りの人には、そう見えてないようだ。一種の幻覚かもしれない。

ふふふ、これがご利益ね。


一人でもがいてる隼人を、ジロジロとみんなみてる。

少しいい気味。まあ、彼が幻の吹雪で苦しんで、抜け出し 私を追ってきたら、

話し合ってみてもいいかも。


隼人はまだ幻の吹雪の中だ。私はとりあえず、彼を放置しその場を去った。













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― 新着の感想 ―
[良い点]  ラスト。  あら、まあ……、このあと隼人は吹雪を抜け出して泉を追っていくのでしょうね。  謝り倒して、許してもらえればいいのですが……。  愛の強さを試されているような気がします。
[一言] 雪の結晶って、神秘的ですよネ。研究に夢中になる彼の気持ちも解ります。 そんな彼にやきもきする彼女の気持ちも解ります。 話あって(話し合って)みてもいいと思ったのに、彼を置いて行く…。 「ん…
[一言] 自分には書けない不思議な少し大人の世界ですね。面白かったです!
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