07
散々悩んだが、いい方法は見つからなかった。
だからアリエルは今、5番目の兄であるリードの部屋の前へと来ていた。
リードは博士号を持つ程の知識人だ。
彼なら何かいい方法を見つけてくれるかもしれない、とアリエルは微かな希望を持って部屋の扉をノックした。
「リードお兄様、アリエルです」
アリエルが扉に向かって自分の名前を告げた次の瞬間、
「わっ!」
ドアが勢いよく内側に開けられ、中から伸びてきた腕に抱きしめられた。
「リ、リードお兄様っ」
「ああ僕の愛しのアリエル、会いたかったよー!今日も相変わらず可愛いね、ほら、"お兄様、ちゅー"は?」
「いつの話してるのよっ!私もう17よっ」
顔を真っ赤に染めながら、アリエルはバシバシと兄の胸を力いっぱい叩いていた。
だがそんなの痛くも痒くもないリードは、むしろ愛おしく感じ、更にぎゅうっと抱きしめる。
「ちょ、リードお兄様!苦しいですっっ」
「ああもう本当可愛いッ!食べちゃいたいぐらい可愛い!」
ペロリ、と耳たぶを舐められ、アリエルの身体はビクリと震えた。
ほ、本当に食べられてしまう…!
いよいよ身の危険を感じたアリエルは、心の中で「ごめんなさい」と呟くと、リードの股間めがけて膝を蹴りあげた。
「ぐわっ!」
クリーンヒットしたそこはぐにゃっとしていて、こんにゃくのようだとアリエルは不快感に眉を潜めた。
アリエルの愛の鞭を受けたリードは一人悶え苦し み、やがて痛みも引いたのか、顔を青ざめさせながら椅子に腰掛ける。
そして弱々しい笑みを浮かべると、アリエルの方へと椅子を回転させた。
…知識は人魚の世界で一番なのに、この痴態はなんだろう。
あまりにも知識を詰め込みすぎて、どこか頭のネジが外れちゃった?
そうだ、そうに違いない。
俗にいうシスコン、それも重度のシスコンであるリードに、アリエルはため息をつく他なかった。
…っと、こんな事してる場合じゃない。
「リードお兄様、聞きたい事があるの」
「ん?なんだい?言ってごらん?」
「どうやったら人間になれる?」
アリエルのこの質問は、リードにとって目を見開いてしばらく固まる程のものであった。