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「だからな、ヴァージル将軍にも教えてやったんだ。セイガですら、押しに押されたら落ちるんだ。ユノもいける、とな」
「ちょっ! 何よけいなこと言ってんの!?」
父さんは父さん、あたしはあたし。まったくの別物だよ?
同じやり方でどうにかなるとか、それを堂々と助言したとか、ホントさいってー!
「あーもう! さっき、父さんと母さんのなれそめを教えてくれたら、一回くらい伯父さんって呼んでもいいかな、って思ったけど、やめた! 絶っ対呼ばない!」
よっぽどショックだったのかな? 王様、がっくりって感じで、崩れ落ちて地面に突っ伏して起きてこないんだけど。
ここまでされると、さすがにちょこっとくらいは、罪悪感がさぁ……。
「兄さん、何をしてるの? ユノを怒らせないで、って、手紙に書いたでしょう? この子はセイガさんと同じで、怒るとこじれて面倒なのよ」
なーんか、母さんまでひどいこと言うし。
そりゃあ、頭に来たら、カッとなって思いつくままにいろいろ言っちゃうけどさぁ。それでも、こじれるってほどひどくはないと思うよ?
悪いこと言ったと思ったら、謝るし。バッサリ縁を切るなら、ちゃんと切りに行くし。
「マノ、だがなぁ……」
「だが、も、しかし、も、へったくれもないの。兄さんは歩くはた迷惑だって、いい加減に自覚してちょうだい。ああ、ダイも、第二の歩くはた迷惑にならないよう、今から気をつけてね? いい加減、後始末をさせられる人間の身になって、少しは考えてくれるかしら?」
あー、うん、母さんだよね。他人じゃないから、ホント容赦ない。
「それからユノは、自分から触りにいく分には気にしないけど、他人に触られるのは嫌いなの。そこも気をつけて。思い切り怒らせると、二度とその顔見せないで、って言われるわよ?」
「えっと、一応母さんのお兄さんだし、そこまでは言わないけど……んでも、しばらく顔も見たくない、は言うかも」
だって、何かメッチャ暑苦しいし。
でも、さすがに、ずっと見ないってわけにはいかないと思うけどね。
っていっても、今まで家族以外にそういうこと言ったの、将軍にだけ……かなぁ? イハル兄には、一回も言ってないし。
イハル兄はさ、嫌いとか、顔も見たくない、って言ったら、フラッとどっか行っちゃって、もう帰ってこない気がしたから。言ったことがホントになっちゃいそうで、怖くて言えなかったんだよね。
今だったら、言っても大丈夫な気がする。
グレースが、イハル兄の帰る場所になったから、かな? 行き先がわかってるから、変な言い方だけど、安心して言えるっていうか。
あたしたち家族は、ずっと一緒にいたけど、イハル兄の帰る場所じゃなかったと思うし。
「……私は、大嫌いと言われましたが」
う……。
将軍にボソッと言われると、やっぱ、ちょっと堪えるかも。
そりゃあ、もちろん、勢いとはいえ言ったあたしが悪いんだけど。
「なっ……」
別のとこから声がしたけど、あたしは振り向かなかった。嫌な予感しかしなかったし。
「なあなあ、ユノちゃん! 兄さんが嫌いなら、俺でどう?」
「ヤダ」
だいたいさぁ、おしゃべり騎士様、そこまで本気じゃないっしょ? 半分くらいはその気があるかもしれないけど、残りは別。そんな感じがするんだよね。
まあ、ただの勘だけど。
「将軍か、おしゃべり騎士様か、他の騎士様から誰か、って言われたら、将軍にする。将軍はなしだったら、全員お断り。まだリアムのがマシだもん」
リアムは、服の裾ならつかんでもいいけど、おしゃべり騎士様はベネットと同じ。一緒に行動する時、うっかりはぐれなきゃいいんだから、縄で十分でしょ。
他の騎士様だったら、一緒に出かけるのも嫌だし。
「あ、そっか。将軍がダメなら、リアムやめてエレンさんにする」
エレンさんだったら、手ぇつないでもオッケーだもん。
「それに、勢いで嫌いって言ったことは、ちゃんと将軍には謝ったよ? ホントは、嫌いじゃないもん」
とりあえず、人間として嫌いじゃないってのは、ホントのことだし。ただ、恋愛的に好きかって聞かれたら、わかんないって答えるけどね。
ってか、みんな、好きかどうか、どうやって理解してんの? あたしが知らないだけで、こうこうこうだからその人が好きなんですよー、とか書いてある本が、どっかにあったりするわけ?
それとも、誰かが『それは好きってことでしょ! 愛だよ、愛!』とか、わざわざ指摘してくれんの? そんな親切な人、今まで見たことないんだけど。
「……ま、まさか、ここまでセイガと同じとは……」
「だから言ったでしょう? ユノを怒らせるとこじれるって」
「ふむ……実際にこじらせた人間がいうと、やはり重みが違うな」
あ、王様が今言ったそれ、多分禁句ってやつ。
母さんの目の色が変わったっていうか……空気が怖くなったから。
そっかぁ……母さん、父さん怒らせちゃったんだ。いっつもの、ゲンコツ落としてくる父さんじゃなくって、本気で怒らせたんだ……すっごい怖いんだろうなぁ、本気で怒った父さんって。
「……おしゃべりなお口は、さっくりつぶしてしまおうかしら?」
ニッコリ笑って怖いこと言う母さんに、王様たちがメッチャ逃げ腰なんだけど。
うん、まあ、あたしも逃げたいし。
「とにかく、兄さんに頼みたいのは、ユノに何かしたら逆に危険だと、この国の貴族たちに、目で見てわかるように教えることなの。それ以外は、何もしないでちょうだい」
「わ、わかった……鋭意努力しよう」
王様、完全に怯えちゃったね。
実のお兄さんでも、やっぱ、母さんは怖いんだ……。




