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「……君が、ヴァージル将軍か? 思ったより若いな」
「ヴァージル・カルヴァートと申します。経験ある騎士は、そのほとんどが先の侵略で命を落としましたから。私はまだまだ若輩者ですが、現在、宮廷騎士団の団長を任されております」
言葉は、そうでもないんだけどさぁ。二人ともこう、声の温度とか、笑ってない笑顔とか、その辺が、ね……。
王様も、腹の探り合いができるんだね。見た目は、そういうの、あんまり得意そうじゃないんだけど。
「少し、詳しく聞きたいことがあるんだが……どこかいい場所はあるか?」
「そうですね……では、こちらへ。私が戻るまで、訓練を行っていてくれ」
後半は騎士様たちに向いて言って、将軍は王様と王子様と一緒に、中庭を出て行っちゃった。
多分、あたしが聞いてもいいなら、あたしも連れていかれると思うんだよね。んでも、置いてかれたってことは、あたしにはあんまり聞かせたくないんじゃないかな?
ってことで、あたしは訓練してればいいんだよね、うん。
「……ねえ、あの人が、セイライ国の国王陛下なの? マノ隊長の、お兄さんなんだよね?」
あー、うん、全部言わなくっていいよ。
改めてあたしも、母さんとは全然、顔も性格も似てないって思ったし。ざっくり言っちゃうと、正反対って感じ。
それにあたし、前の王様は知らないんだよね。覚えてる頃からずっと、あの王様が王様だったし。
母さんと王様は、それぞれどっちかの親に似たってことなんだろうけど……どっちにしても、あれだよね。
「まさに、美女と獣の兄妹だね」
「それ言っちゃダメだってば」
でもまあ、おっきい声で言いたくなるくらい、本気で似てないけどね。
あたしは父さん似だからともかく、だよ? お兄ちゃんやお姉ちゃんたちがみんな母さん似だし、母さんの顔はすっごい増殖するみたいなんだけど……何で王様って、母さんとは似てないんだろ?
あ、セイライ国の王女様たちも、他の王子様も、王妃様に似て美人ぞろいなんだよ。王様と跡継ぎ王子様だけ、あんな感じ。
王様って、どうやって美人の王妃様をつかまえたんだろうね。
そういえば、父さんと母さんのなれそめも、一度も聞いたことないなぁ。ユウガ兄も知らないみたいで、聞いても「さぁ?」ばっかりだし。
あ、そっか。王様だったら知ってるよね? 教えてくれるなら、一回くらい、伯父さんって呼んでもいいんだけど……んでも、暑苦しいかなぁ?
「んじゃ、訓練するか。やってないと、団長に怒られるからな」
騎士様に言われて、みんながノロノロ立ち上がって。
そこでフッと思い出して、おしゃべり騎士様を見たら、まだ絡まって転がってた。
走り込んで、素振りして、打ち合いしてる騎士様たちを見てたら、将軍たちが戻ってきたんだけど……何か、すっかり打ち解けてるっぽい?
「ユぅーノぉーっ!」
叫びながら、王様がこっちに向かって走ってきた。
あのさぁ……いくら近距離からだって、王様にドンって突進されたら、あたしが吹っ飛ぶに決まってんじゃん!
悪いとは思ったけど、ギリギリまで頑張って、ひょいって避けたから。王様の進行方向に騎士様がいたのは、ちょっと予定外だけど。
吹っ飛んだのは騎士様で、王様は何ともないってのが、本気でいろいろ申し訳ないけどね。
「なぜ避けるんだ!」
「あたしが吹っ飛んでケガするかもしれないからに決まってんじゃん!」
それとも、他に理由があると思ってんの?
セイライ国じゃ、王様が真っ直ぐぶつかってくるって、ホント有名なんだよ? 知らないの、生まれたばっかの赤ちゃんくらいだもん。
「だいたいさぁ、近いうちにヘザーに会いに行くって言われてんのに、ケガしたら台無しじゃん?」
ヘザーに餌あげたり、持ってっていいお土産聞いたり、楽しみなこと、いっぱい待ってんだから! 今ケガさせられたら、恨むなんて可愛いもんじゃないからね!
「お前は、本当に、セイガと同じようなことばかり言うんだな」
「へぇ……父さん、こういうこと言わなさそうなのに」
意外と、スパッと言っちゃうんだ?
何か、いっつもその辺で昼寝してたり、素っ裸で部屋をウロウロしてるとこしか知らないから、すっごい意外。
「何だ、知らんのか? マノが惚れ込んで押しかけていっても、寄るな触るな近づくな、と、ことごとくつれなかったらしいぞ。セイガはあれで、言いたいことははっきり言う人間だな」
「えー……」
ホントのホントに、母さんからだったの? うん、まあ、逆はないって思ってたけどさぁ……ホントに母さんからなんだ……。
「セイガは他人に触られるのも嫌がっていたんだぞ。マノはすぐ触りたがるせいで、それこそ最初は、セイガに蛇蝎のごとく避けられていたそうだ」
あ、うん、そりゃあ、父さんと母さんのなれそめが聞けたら、って思ってたけど。思ってたけどね……いざ聞かされると、すっごい微妙。
あたしの知ってる父さんと全然違ってて、メチャクチャ違和感あるもん。
……ってことは、母さんが押しに押して、ってこと? あの父さんが、押しに負けたの? ってか、そのくらい、母さんが強烈で強引だったってこと?
ここまで聞いちゃってから言うのはあれだけどさぁ……正直、聞きたくなかったかも。




