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「というわけで、他を当たったら? もしくは、ヴァージル将軍に、直接聞いてみるのもいいんじゃない?」

 ニッコリ笑ってるくせに、有無を言わさない強さ。それが、リアムの言い方にはあって。

 だけどさぁ、女の子でも、やっぱお貴族様はお貴族様だよね。そういうとこ、全然気にしないみたい。

「あの方に直接聞けないから、他の人間にわざわざ聞いてあげているのよ。知らないのなら、知っていそうな人間を教えなさい」

 すっごい上から言ってくるね。多分、リアムが一番嫌いな人間じゃないかな……嫌いだって思ったら、絶対容赦しないよ? 泣いてもやめないと思うんだよね、リアムって。

「だったら、知ってそうな人をつかまえれば? ああ、そうだ。マノ隊長だったら、自分の娘くらいわかると思うよ?」

 うっわ、全部母さんに放り投げる気だ。んで、母さんにボッコボコにしてもらう気でしょ?

 ……あ、違う。あの顔は、母さんと一緒にボッコボコにする気だ!

「では、今すぐ、その人のところへ案内しなさい。いえ、その人をここへ連れてきなさい」

「じゃあ、呼んできてくれる?」

 リアムがあたしをジッと見て、ちょこっと首を傾けて言った。ってことは、その通りにすれば、とりあえず、任せちゃっていいってこと……かな?

 あたしじゃ絶対、お貴族様の相手なんてしてらんないし。

 頷いて、あたしは宿舎に走って、階段を駆け上がった。母さんの部屋のドアを、思いっきりバンバン叩いて。

「ねね、母さん、ちょっといい?」

 何にも言ってないのに、母さんが怖い顔で出てきてくれたんだけど……何でカノ(ねぇ)も一緒に来たの? しかも、何でちゃっかり塩壺持参なわけ?

 二人と一緒に階段を駆け下りて、外に出たら……増えてるし。

 きっと、王女様に報告終わってから、外にいるの、気がついたんだよね。じゃなきゃ、エレンさんまでいるわけないもん。

 帰れ、帰らない、の押し問答してるっぽい雰囲気かな?

 お貴族様の女の子たちを見て、母さんが怖くなった。スタスタ、あっちに歩いてく。カノ姉は、塩壺の蓋開けてるし。

 あたしはこっそりコソコソ、カノ姉の後ろから移動して、聞き耳を立てる。

「ええ、確かに私は、ヴァージル将軍に、私の娘を薦めたわ。現セイライ国王の姪で、年上年下、凶暴な娘から完璧な娘まで、いろいろそろっているもの」

 あー、うん、そうだね。お姉ちゃんたち、まだ誰も結婚してないもん。カノ姉が、もうすぐかな、ってくらいで。

 ってか、今のとこ、結婚してんのユウガ(にぃ)だけじゃん。

「ヴァージル将軍が気に入った上で、選んだ娘もその気になれば、という条件つきだけれど」

 ちょっ! あたし、そんな条件、聞いてないから!

 声が出かかって、慌ててゴクンと飲み込んで。

「ふーん……だから、ユノなのね」

 カノ姉が、納得納得、って頷いてるけど……全然納得じゃないよ!

「ねぇ、ヴァージル将軍。ユノは可愛い?」

「ええ、大変可愛らしい方ですよね。ユノさんほど可愛らしい方は、恐らく、どこを探してもいないと思いますよ」

 ……カノ姉ってさぁ、引っかき回す趣味あったっけ? なかったよね? そういうの、リノ姉の趣味だったじゃん?

 あたし、宿舎で待ってて、ついてこなきゃよかったのかなぁ……。

「ですから、不用意に押しかけてきて、ユノさんを出せという人間には、引き合わせることはできません。彼女に何かされては、犯人も自分も、許せなくなってしまいますから」

「ふふっ、ですって、ユノ」

 言いながら、カノ姉はあたしの腕を引っつかんで、ポイって感じで放り投げた。

 もちろん、お貴族様の方に、だよ? カノ姉の片手だから、そんなに飛ばないけどさぁ……ちょっとひどくない?

「わわっ!」

 よろめいたあたしの前には、すぐに将軍が来て。右側にはエレンさんで、左側にはリアムがいて、がっちり周囲を固めてくれてる。

 簡単には近づけないと思うけど……あたしの顔は、バッチリ見られたよね?

「……よくも、騙してくれたわね」

 怒ってる……お貴族様の女の子、絶対怒ってるよ!

「ユノちゃんは名乗ってないだけで、騙してないよ? 先に嘘をついたのは私の方だからね」

「訂正しなかった時点で、同罪でしてよ!」

「へぇ……マーハルニーファでは、貴族に嘘をついたら罰せられるんだね? 初めて聞いたけど、陛下に確認を取っておこうかな。他国の人間が間違えたら、国際問題に発展しちゃうからね」

 ニコニコしているリアムに、全部お任せ。ってわけにはいかないよね。

 んでも、あたしが出ても、何も解決しないと思うんだよね。だって、あたし、当事者のはずなのに完全にのけ者だし。

「マノ隊長もいらっしゃるので、この際はっきりさせておきましょうか。私はユノさんを選びました。ユノさんが私を選んでくれるまで、ユノさんには申し訳ありませんが、しつこくつきまとわせていただく所存です」

 あー、うん、それなりに迷惑だもんね。

 っていうか、今までも十分あれだと思うんだけど、まだやるの? いっそ、スパッと諦めるのも、悪くないと思うんだけどなぁ……。

「少なくとも、希望がまったくないわけではなさそうですからね。完全に嫌われない限りは、手をゆるめるつもりはありません」

「……そこまで頑張んなくていいんだけど」

 ボソッと言ってみたけど、将軍は聞き流した。エレンさんとリアムは、ほとんど同じタイミングで、プッて笑ったけどね。

「……絶対に、認めませんわ」

「私に王位継承権はありませんから、全貴族の承認はいりませんよ? 誰を選ぼうと、私の勝手です」

 声はひやっとしてるけど、多分、顔はすっごくいい笑顔だと思う。

 エレンさんといい、リアムといい、将軍といい、何となーく、どことなく、似た行動するよね。

「……今日はこのくらいにして差し上げますわ」

「一昨日きやがれ! ……だったかなぁ?」

 クルッと背中を向けたお貴族様たちに、カノ姉が塩をグッとつかんでバッてまいた。多分、当たってないと思うけど、まあ、ちょこっとくらいは大丈夫だよね?

 なーるほどね。そのための塩壺だったんだ……。

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