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「あ、そういえばさぁ、何で逃げたの?」
どっから見張られてるとか、あたし、全然わかんなかったんだけど。
「何でって……一部以外が、牽制から結託に変わったからよ」
一部以外……? あー、エレンさんか将軍、どっちでもいい人かな? でも、どっちかは欲しいって人。それ以外は、どっちか、ってはっきり決まってるってこと?
あれ? どっちかでいいなら、別に協力してもいいよね? ってことは、両方? それはちょっと、欲張りじゃん?
「貴族にはいろいろありまして、特に不仲な家同士でない限り、後々の探り合いやら出し抜き合戦やらを考慮しなければ、一時的に結託することはよくあります。今回は、すでに陛下という選択肢がないため、次の狙い目に関する邪魔者を、協力できる全員で排除する方向で一致したようですが」
「邪魔者……って、あたしとリアム?」
まあ、他にいないと思うけど。
あたしは、母さんの「やっぱりやめたわ」で、狙われることはなくなるはず。んでも、リアムはどうなんだろ? エレンさんはともかく、リアムは割と本気っぽいからね。
……正直、戦場でも、ここまでやる気のリアムは見たことないし。
「ってか、見張ってた人たちが団結するの、わかるもんなんだ?」
「私たちは慣れているので、だいたいわかりますよ。空気があからさまに変化するんです」
「へぇ……」
それってさ、慣れちゃうくらい、こういう目に遭ってるってことだよね? そんな生活してたら、神経ゴリゴリすり減っちゃいそうじゃん?
「ユノちゃんは、そのまま、こういう世界のゴタゴタとは無縁でいて欲しいね」
「あたしも、縁がないままでいたいよ?」
だから、できたら巻き込まないで欲しいっていうか。よそでやってて欲しいよね。
念のためってことで、ちょっと時間をつぶしてから、地下通路は四人で抜けた。リアムがキョロキョロしてなかったから、多分、もう道覚えてるっぽい。
将軍とエレンさんは、王女様に報告があるって、上に向かった。で、あたしは、リアムに頼んでお城の外まで案内してもらってるとこ。
リアムも、お城の中では別に迷わないんだって。ってか、迷うのはあたしくらいだって言われたんだけど……どこ通ってるかちっともわかんないし、迷うよ、絶対。
外に出たら、城壁があるから迷わないんだけどね。
「さっき思ったんだけどさぁ、リアムって、割とエレンさんと遊んでる?」
「ああ、そうだね。朝一番に、ちょくちょくドナちゃんに乗せてもらってるから、あそこにはよく行ってることになるかな?」
そっか。だから、全然見回してなかったんだ。
「やっぱりユノちゃんは、他人のことには鋭いね」
相変わらず、何か含みがあるけど……まあ、いっか。
「そういえば、リアムは何で、エレンさんにやたらと絡んでんの?」
「……強いて言えば、見た目と噂と実体の違い、かな? そこが面白くってね」
ああ、うん、冷ややか美女って感じの見た目と違って、性格はひんやりしてないよね。その辺、確かに面白いかも。んでも、噂って?
お貴族様の間だと、何か噂でもあるのかな? ってか、一応貴族の一員なんだけど、リアムがそういうの知ってるってのも、何か不思議なんだけど。
「あれ? そういえばリアムって、メアンラーエのお貴族様の養子なんだよね? 兵役終わったからって、ぽいっ、ってされなかったの?」
「幸か不幸か、ケガをしたのが兵役満了まで数ヶ月残ってる時でね。私を廃するなら、メアンラーエ国王に、兵役残して逃げてますよ、しかも兵役は、実子じゃなくって養子に押しつけて、その養子は追い出しましたよ、って助言してやるって脅したからね」
それって、脅しになるの?
別に、王様にもお貴族様にも、養子をどうしたとかこうしたって、関係ない話じゃないの?
「養子が兵役をこなしても、そのまま置いておけば問題はないんだけど、追い出すともう一度兵役をやり直しっていう、貴族の力を削ぐことには力を入れている国王なんだよ。完了させていないっていうのも、国王が喜ぶ、重要な点だね」
……んー、いまいち理解できないとこがあるけど。とにかく、メアンラーエの王様は、お貴族様が幸せいっぱいでのほほーんとしてるのが嫌、ってことだね!
で、リアムは、兵役は終わらせたことになってるけど、実はまだ残ってるんだっけ? それを王様に教えちゃうぞ、って脅したんだよね? そうすると、リアムを養子にしたお貴族様は、兵役やり直しだから、しょうがなく……ってことかな?
「何が使えるかわからないから、手に入れたものは手放さない方向で頑張ったからね。そんなわけで、私は傭兵だけれど、メアンラーエの貴族っていう立場は持っているんだよ」
「さっすがリアム……」
リアムを養子にしたお貴族様、絶対後悔してるだろうなぁ……他のお貴族様の子供泣かせるし、かえって困るから追い出すことができないし。リアムが死ぬの、今か今かと待ってるんだろうね。
そっか。メアンラーエでも貴族は貴族だから、王女様とつながりが欲しくって、しかも息子がいるお貴族様には、リアムが邪魔なんだね。
エレンさんがドナに乗せたってだけで、かなりの衝撃だもん。それも、割としょっちゅう乗せてるっぽいし。
「ねね、リアム。ひょっとして、外堀、埋めてるの?」
「エレンちゃんには内緒だよ?」
うっわ、本気だ。
でもさぁ、さっきリアムが言った理由だけだと、ちょっと弱いよね。リアム、権力とかには興味ない人じゃん?
エレンさんが面白いってだけじゃ、リアムは本気出さないと思うんだけどなぁ。




