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子守されてるっぽく、一番後ろをのんびりついていこうと思ってたのにね。いつの間にか、将軍があたしの右隣にちゃっかりついてた。
んでもって、いきなりギュッて、手をつかまれたんだけど。バッて見上げた将軍は、メッチャ涼しい顔してるし。
「ユノさんを見失うと困りますからね」
「……将軍とリアムが、いい目印だと思うけど?」
二人とも、背が高い方だしさぁ。顔がこっち向いてたら、多分、人混みでもすぐわかるよ。
いい意味でも悪い意味でも、目立つと思うし。
あたしが見失わないでちゃんとついてけば、それでいいじゃん?
「私が、こうしていたいんです」
むー……あたし、そんなに心配されるほど、今は迷子にはならないよ? しょっちゅう迷子になってたのは、うんとちっちゃい時だけだもん!
ちょっとムッとした気分のまま、あたしは前を見る。
あたしの真ん前を歩いてるのはリアムで、その右側にエレンさん。ほどほどの距離で歩いてそうなのに、意外と近い……っていうか、リアム、何かおかしくない、それ? 絶対逃がさないって感じで、リアムがエレンさんの手首つかんでるんだけど……。
別に、がっつりしっかり握り締めてるわけじゃないけどさぁ。あれ、簡単には抜けないっていうか、逃げれないよね?
「……いくら何でも、これはないんじゃない?」
ちょこっと手を持ち上げて、エレンさんが抗議してる。
まあ、そうだよね。あたしでも、あれにはやっぱ文句言うよ。
「エレンちゃん、すぐ逃げるでしょう? このくらいがちょうどいいと思うけどね、私は」
「ユノ嬢がいるから、逃げることは……」
「逆、逆。ユノちゃんがいるからこそ、ユノちゃんと二人で逃げ出すくらい、やりかねないよね? エレンちゃんはそういうことをする子だから」
図星だったのかな? エレンさんがグッと押し黙った。
リアム、案外押しが強いね。正直、こういう人だと思わなかったよ。ってか、リアムって、見た目はどっちかっていうと、押しに弱そうだよね。で、実際は、押しも押されもせぬ、ってとこ。
……あれ? 何か、妙に仲がいい? んー、違う。リアムが、エレンさんのこと、よくわかってるっぽい?
リアムお気に入りの、早朝空中散歩、しょっちゅう一緒に行ってるのかな?
あたしがドナにご飯あげるのは、散歩の後だからね。エレンさん、自分のことはあんまり話さないし。
んでも、何となーくなんだけど。
「ねね、リアム。ひょっとしてさぁ、エレンさんのこと、かなり気に入ってる?」
グレースみたいに、危なげで気にかけてる、ってレベルじゃなくって。遠慮なく、思いっきり、やりたい放題にかまい倒してる気がするんだよね。
何て言うか、今まで見たことないリアムがそこにいる、って感じ。
「……ユノちゃんって、変なところで鋭いね」
そうかな? 見ててわかることは、誰でも何となくわかるもんじゃないの?
特に、今のリアムは絶対おかしいし。
「リアムはさぁ、自分と他人をきっぱり線引きするじゃん? その他人も、気にかける人と、どうでもいい人と、いっそいなくなれって思う人と、大ざっぱにそんな感じ? エレンさんは、そのどれでもないなーって思って」
エレンさんも、似たようなとこあるけどね。ただ、リアムの「気にかける人」の幅って、すっごい狭いんだよ。
多分あたしは、微妙な位置だけど気にかけてる方。戦場でもどこでも、見かけたらちょこちょこ声かけてくれるし。でも、隊が違ってたら、どうでもいいんだと思う。
同じ判定で、ベネットは微妙にどうでもいい方じゃないかな?
今のグレースは、もう気にかけてないっぽいし。
「……他人は、よく見てるんだね」
「リアムは同じ隊だしね」
そう答えたけど、何か、リアムの言い方が引っかかった。『他人は』ってとこが、やけに強調されてた気がするんだよね。
「じゃあ、ユノちゃんから見て、エレンちゃんは私のこと、どう思ってるかな?」
む……話逸らしたね?
んー、でも、エレンさんがリアムをどう思ってるか、かぁ……。
「少なくとも、将軍みたいに大嫌いってわけじゃないよね。だって、エレンさん、将軍が手をつかんできたら、全力で振り払うか、腕を切り落としにかかるっしょ?」
「当たり前でしょ? 肩からバッサリ切り落としてやるわ!」
「……そもそも、前提が間違っていますね。私はそんなことはしませんよ。いえ、したくありません」
将軍も何か言ってるけど、とりあえず聞き流してっと。
エレンさんは、リアムが嫌いってことも、ないと思う。んで、どっちでもないっぽいイハル兄とも、ちょっと違う気がするし。
ただ、あたしに対する態度とも、やっぱ違うよね。
「あたしに言えるのは、エレンさんは、リアムは嫌いじゃないって程度かな?」
「そうなんだね。嫌われていないなら、それでいいよ」
うわぁ……エレンさん、リアムに本格的に気に入られてるよ……。
んでもさぁ、エレンさんって、お貴族様なんだよね? いろいろ面倒くさいんじゃないの?
「……リアムは、養子とはいえ貴族なの。だからこそ、私にとってはかえって面倒が……」
「私の悪運が強くてよかったと、今なら言えるかな」
……あーあ。
エレンさんが自由になれる道は、リアムを将軍と同じくらい嫌いになることしか、多分ないよ? 嫌いじゃないままだと、外堀埋められて、気がついたら……ってことになってるんじゃないかな?
その辺、リアムは悪知恵が回るっていうか。




