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 将軍とエレンさんの勝負を見た、二日後の朝。その間は、平和で普通の日だったよ。

 ドナにご飯をあげて、宿舎に戻ってきたらさぁ。

「あ、ユノちゃん」

「へ? あ、リアムじゃん」

 宿舎で会うの、初めてじゃない? 今まで、一回も見てないよね?

 ってか、見かけたとして、わざわざ声かけてくるって……何かあるってことじゃん? それも、たいてい、あたしにとってよくない話でしょ。

「相変わらず、顔によく出るね。いいか悪いかは別として。そうそう、明日、エレンちゃんとヴァージル将軍と出かけるんでしょう?」

「へっ?」

 それ、何の話? 知らない。聞いてない。っていうか、明日?

「まだ言ってなかったのかな? 私は、昨日のうちに聞いたのだけれど……」

 ……さっき会った時、エレンさん、何にも言わなかったじゃん。ってことは、午後の訓練で教えてくれるのかな?

 まさか、明日の朝、いきなり言ってくる、なーんてこと、ないよね?

「多分、今日中には聞かせてくれるっしょ。リアム、教えてくれてありがとね!」

 何か、変なふうに動揺して、無駄にドキドキした気分だけどさぁ。んでも、油断してるとこに不意打ち食らうよりは、まだいいのかな?

 まあ、リアムから聞かされても、十分びっくりするけどね。


         ‡ 


 訓練の時、将軍は何にも言わなかった。エレンさんにも会わなかった。それってつまり、どういうこと?

 もやもやしたまんま、朝になって。ドナの餌やりに行ったら、エレンさんから、今すぐこの間の服を着て街に行こうと誘われた? わけで。

 あたしが驚かなかったから、エレンさんが不思議そうだったけど、ちゃんと理由は教えるよ?

「……昨日の朝、リアムに聞いたから」

 うっわ、エレンさん、すっごい不満げな顔してるし……やっぱり、不意打ち食らわせる気だったんだね!

 でもまあ、断る理由はないから行くよ。

 街って賑やかで楽しくって、何度行っても全然飽きないし。

「じゃあ、中庭で待ち合わせね」

「ん、わかった。朝ご飯食べて、着替えて行けばいいんだよね?」

「ええ、お願いね」

 いつもみたいに、嫌な予感はそんなにしないから、今日はちょこっと安心できるよ。


 朝ご飯をいっぱい食べて、着替えて。ちょっと前に針子のドリスが作ってくれた、どんな服でも合わせやすい、白くてちっちゃな斜めがけの鞄にお財布入れて。

 うん、バッチリ。

「この際、せっかくだし、ちょっと髪を伸ばしてみたら?」

「えー、手入れ面倒じゃん? シノ(ねぇ)くらいだったら、まだマシかもしんないけどさぁ」

 シノ姉は、肩に触んない長さだからね。エレンさんより、もうちょっと短いんだよ。あの長さだったらいいかなって思うけど、多分リディが言うのは、エレンさん以上でしょ?

 あたしさぁ、今の長さが一番楽なんだよねー。

「ユノが髪を伸ばしたくなるようなことが起きると、いいのにね」

 リディがボソッと呟いたけど、そういうこと、そうそう起きないと思うよ?

「じゃあ、行ってきまーす!」

 今日はグレースが、イハル(にぃ)と街に行っちゃうから、リディは一人になっちゃうんだよね。まあ、おじさんが残ってるから、退屈とか暇ってことはないし。

 ちょっとワクワクしながら、あたしは部屋を出る。

 だって、いつもはだいたい、一人で街に行くんだよね。グレースと行こうと思うと、イハル兄がいるし。どうせならリディも、って思っちゃうし。そうなると大所帯って感じだから、好き勝手のびのび見てくるってわけにもいかないじゃん?

 エレンさんとはまだ出かけたことないし、将軍とも一回、偵察兼ねて行っただけだもん。普通に行ったらどうなるのか、楽しみでしょ?

 待ち合わせ場所の中庭に着いたら、もうそろってるみた……あれ?

「リアム?」

 何でいるの?

 ……ひょっとして、リアムも一緒? それこそ聞いてないんだけど。

「リアムにユノ嬢の驚きを取られてしまったから、今度こそ驚かせたくって」

 ニッコリ笑ったエレンさんが、あっさり種明かし。

 何かもう、黙ってる理由がわけわかんないよ……。

「エレンちゃんが褒めちぎっていたから、どんな服なのかなって思ってたけど……本当に、ユノちゃんによく似合うね。その服を着ているなら、十六歳って言っても信じてもらえると思うよ?」

「ホント!?」

 将軍とかエレンさんに言われても信じられないけど、リアムだったら信じる! あと、服に関しては、イハル兄もちゃんと信じてるよ。

 リアムとイハル兄って、似合わない恰好にはメッチャ厳しいもん。特にイハル兄は、セイライ国にいた頃、ちょっと失敗した子をバッサリ切り捨てて、泣かしてたもんね。

 んでもって、リアムは、似合ってないと褒めないんだよ? しっかり褒めてくれたってことは、この服があたしにちゃんと似合ってるってこと。

「では、行きましょうか」

 何か妙に不機嫌な将軍が言って、ゾロゾロ歩き出す。

 エレンさんは、ちょっと意外っていうか。袖と裾が広がっててヒラヒラしたチュニックと、ショートパンツ。シュッとしてて似合うけど、足を出してるとこが、ホント意外。

 将軍は、前見た服と違うね。まあ、今日も、騎士(エクエス)様には見えないカッコイイ人になってるけど。

 で、リアムは、やっぱり知らない私服。まだ新しそうだから、最近買ったのかな?

 ……でもさぁ。この顔触れにあたしが混ざると、やっぱり子守に見えそうだよね。

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