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 とりあえず、お貴族様とはいえ、訓練中にわざわざ突っ込んでくることはないみたい。その代わり、チラチラ見てて、休憩に入るとワッて押し寄せてくる感じ。

 そのたびに、あたしはすっかり決め台詞みたいになった言い回しで、サクッとお帰りしてもらってるんだけど。

 結局、朝エレンさんに聞いて、夜寝るまで、半日くらいの間だよ? 途中で数えるのやめちゃったくらい、たくさんのお貴族様が来てさぁ。

「もーヤダ。同じことばっか言うの、面倒くさい!」

 部屋で思わず、愚痴言っちゃった。

「でも、裏返すと、ヴァージル将軍狙いの家がそれだけあるってことでしょ? 偉い人は大変ね」

「あたしさぁ、人の顔覚えるのは割と得意なんだけど、一回追っ払ったはずのお貴族様が、何回か来てたよ?」

「ああ、そうでしょうね。一回だけだと、口先でごまかしてるって考えるらしいから、何度も足を運んでくると思うわ」

「うっわ、面倒くさい……本気で面倒くさいよ、それ……」

 じゃあ、何? お貴族様がみんな納得するか、将軍が母さんに断ったって話が出てくるまで、ずっとこのままなわけ?

 ……外、出たくない。面倒だから、ずっと部屋にいたくなるじゃん。

「ちなみに、部屋から出なくても押しかけてくるわよ? 厚顔無恥もいいとこだから、ここまで上がってくるんじゃない?」

「はぁー? 他の傭兵ですら、階段までで部屋には来ないのに? ここ来たら、塩まいて追っ払うよ。話も聞かないし、決まり文句でも言いたくないもん」

 あー、そのために、塩用意しとかないと。いっぱいいるかなぁ……ここまで持って上がるのも面倒だよね……。しかも、散らかしたら掃除しないといけないし。

 すっごい面倒なんだけど。

「塩……?」

 メッチャ不思議そうに首を傾げてるリディと、目をパチパチさせてるグレースがいて。

 ひょっとして、また、セイライ国限定の習慣なわけ?

「いけ好かない人間を追っ払った後、二度と来ないように験を担いで塩をまくんだけど……やっぱ、マーハルニーファじゃやらないの?」

「そもそも、験を担ぐことがないわね」

「あー、そうなんだ? ってことは、塩まいても意味ないってことだよね……」

 セイライ国だと、お互いわかってるから、まかれたら近寄らないんだけどね。

 んじゃあ、しょうがない。別の方法考えようかなぁ……あーでも、縁を切る意思表示ってことで、まいてもいいかも。

 ……まあ、ここでやっちゃうと、掃除がメッチャ大変なんだけどね。

「相変わらず、セイライ国って面白いわね」

「そう? あたしからすると、当たり前なんだけどなぁ……」

「……ああ」

 いきなりグレースが感心した声で呟いたから、あたしもリディもそろって驚いた。普段あんましゃべんないから、すっごくびっくりするんだよね。

「以前、イハルさんが塩を持って来い、と言ったのは、そういうことだったんですね」

 ちょっ……イハル(にぃ)、何やってんの? ってか、イハル兄が塩まくってことは……絶対グレース絡みだよね!

 多分、グレースにちょっかい出してたやつを追っ払って、んでもって塩まいて、徹底的に縁を切ろうとしたってことじゃん?

 いっつもはあんな冷め切った顔してるくせに、その辺ちゃっかりしてるなぁ、イハル兄って。

 思わずニヤニヤしちゃって、グレースに変な顔された。でもさ、リディもニヤニヤしてるよ?

「ねね、夕ご飯の前にお風呂行こうよ。疲れたから、さっぱりしたい!」

「そうね……たまには、気分転換になるかしら」

 着替えを用意して、三人で行こうってなったところで、廊下から悲鳴が聞こえた。廊下を走る音と、ドアをバタンって閉めた音も。

 すっごい嫌な予感。ってか、もう、それしかないでしょ、って予想しかないんだけど……。

 着替え置いて、急いで廊下に飛び出して。

「誰か、塩持ってきて!」

 思わず叫んじゃった。

 だって、男は遠慮して上がってこないここに、おっさんがいるんだよ? 今すぐ追っ払いたいじゃん?

 カノ(ねぇ)と母さんも部屋にいたらしくって、出てきてギョッとしてる。んで、何でか、カノ姉が一回部屋に戻ってって、腕でがっつり抱え込むくらいの大きさの何かを持って出てきた。

「ユノ、塩だよ!」

 さっすがカノ姉! 部屋に塩常備だなんて、やるじゃん!

 駆け寄って受け取って、しっかり左腕で抱き抱えてっと。中身をグッとひとつかみして、思いっきり投げつけてやった。

 そこにいるのがお貴族様かどうかなんて、あたしには関係ない。だってここは、女性しかいない場所だもん。おっさんがいるだけで、みんな怖がっちゃうじゃん?

 ってか、これ、王女様に訴える案件じゃない?

「こんなとこまで何しに来たわけ? 出てけ! 傭兵の男性陣すら入ってこないのに、何で勝手に入ってきてんの!」

 言いながら、おっさんに向かって、力いっぱい塩を投げつける。気がついたら、カノ姉も一緒になってやってた。ついでに、母さんも参戦してるし。よく見たら、こっそりチオリ姉まで参加してたよ。

 それにしても、塩壺、でっかいの持ってるなぁ……その割に、重たくないし。いいな、これ。あたしもこれ買ってきて、たっぷり塩入れて部屋に置いとこうかな。

「ユノ、どうした!」

「あ、イハル兄! ちょうどいいから、こいつ、外につまみ出して!」

「はぁ? ……なるほどな。よりによって、ここまで上がったのか」

 言うが早いか、イハル兄はおっさんの襟首引っつかんで、ズルズル引きずって階段を下りてく。

 塩まかれて呆然としてたのか、おっさんは抵抗してない。

 多分あれ、下に下りたらボッコボコにされるね。特にリアムとユウガ兄あたりに、ボッコボコにされるよ、絶対。

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