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 どうしても気になったから、次の朝、ドナの餌やりの時、エレンさんに聞いてみた。

「陛下と兄さんの? ああ、まだよ。まったく、兄さんの次に有望だからって、しつこいんだから、あの家は」

 エレンさん、アルヴィン様のことは嫌いだけど、王女様のことは大好きだからね。王女様が望んでるから、叶えてあげたいんだろうなぁ。

「そういえば、王女様の結婚相手って、誰でもいいわけじゃないの?」

 何か、オッケーな人とそうじゃない人がいるっぽいこと、おしゃべり騎士(エクエス)様が言ってたし。

「陛下が庶子だから、限られるのよ。あまり血が薄まらないよう、歴代の王妃はすべて遠縁の方なの。その兼ね合いで、陛下に関しては、できるだけ近い血縁から選ぶことになっているわ」

「……何か、面倒くさいね」

 あー、でも、そういうもんなのかな?

 興味なかったから、セイライ国でも気にしたことないけど……案外、遠縁のお嫁さんとかだったのかな?

 ん? ってことは、エレンさんやアルヴィン様って、陛下と結構近い血縁ってこと?

「ふふっ、私は陛下のはとこになるのよ。それも、同じ男系で、前陛下と父がいとこなの。だから、反対している家以外は、すべて賛同に回っているんだけど」

 ああ、なるほどね。それだと確かに、かなり近くなるよね。

 じゃあ、きっと、まだオッケーしてくれない人ってのが、アルヴィン様と同じくらい近い血縁なのかな?

 んでも、他はみんな賛成ってことは、よっぽどのことがない限り、ただの時間稼ぎっていうか、引き延ばしだよね? 正直、望みなんてないんじゃない?

「そうそう、ユノ嬢。陛下の結婚話を進めるにあたって、少し協力してもらえませんか?」

「あたしが?」

 できることなんて、大してないと思うんだけど。でも、ちょこっとでも助けになるなら、協力するよ!

 やっぱ、王女様には幸せでいて欲しいじゃん?

「反対している家に、揺さぶりをかけたいの。あの家には、既婚の長男、陛下との縁談を望む次男と、その下に娘が二人いて、どちらも悪趣味なことにヴァージル狙いなんだけど……そこにつけ込みたいの」

 将軍狙いって、別に、家柄とか考えたら普通じゃないの? カッコイイ騎士様だし、普通の子だったらおかしい気はしないけど……あ、そっか。エレンさんからしたら、確かに悪趣味だよね。

「陛下と縁続きになるのは、もちろんおいしい話なんだけれど、ヴァージルとの確固たる縁っていうのも、やっぱり貴族にはおいしい話なの。その両方をつぶしにかかったら、さあ、あの貴族はどちらを取るかしら?」

 楽しそうにクスクス笑うエレンさんが、すっごい悪女に見える……。

 んでも、何となくわかった。王女様との縁に必死になってる間に、将軍にも縁談をぶつけちゃおう、って話だよね?

 望みの薄い王女様にこだわるか、まだ可能性のある将軍を取るか。そういう選択を迫って、王女様の方をさっさと諦めさせようって魂胆かな?

 ……あれ? でも何で、あたしに協力って?

「ユノ嬢、あなたは忘れているかもしれないけど、セイライ国王の姪で、しかもお気に入りという立場は、どの国でもかなり有効なの。何しろセイライ国は、全力で当たれば、ガイルファラ帝国とも堂々と渡り合える兵力を有しているでしょう?」

 へぇ……そんなになるんだ? あー、そっか。残ってる人たちも、剣を持ったらそこそこ戦えるもんね。ある程度の年齢だと、子供ですら戦えちゃうから。そこに傭兵で出てる人が全部入ったら、そのくらいにはなるかなぁ?

 ……そういえば、父さんやシノ(ねぇ)は一騎当千だし。兵力とかで考えたら、なるかも。

「家柄は十分。騎士団長であるヴァージルでなくとも、セイライ国とのつながりはおいしい話になると、外からはそう映るわ。騎士団と関わりが深い貴族は、表立って反対ができなくなる。それ以外でも、強力な国防に匹敵する代替案が出せなければ、自分の娘を強く推すことができないでしょ?」

 んーっと……つまり、あたしと縁談があるって話にして、お貴族様を焦らせようってことかな? どっちかっていうと、あたしがどうこうっていうか、国同士の損得って感じだけど。

「それで、反対している貴族には、陛下との縁談を諦める代わりに、ヴァージルとの縁を希望させたいの。まあ、ヴァージルはさっくり断るでしょうけど」

「ってことは、一度結婚を認めさせちゃえば、もう王女様は心配いらないんだね?」

「ええ。全貴族が賛同することが、陛下の結婚には必要条件なの。ずっと反対し続けることができるから、一度賛成の意思を示したら、よほどのことがない限り、それを覆すことはできないのよ。そうね……兄さんが女の子をたっぷりはべらせて、次々に子供を産ませた。そのくらい、とんでもないことをやらかさない限りは、陛下は安泰ね」

 ……えー。何か、たとえがすごいんだけど。ってか、そんだけのこと平気でできる人なんて、そうそういないっしょ?

 エレンさんは女の子みんな大好きだけど、もし男の人だったとしても、最終的にはちゃんと一人を大事にしそうだし。あたしが知ってる中で、そんな何人も同時に……なんて人、やっぱいないと思うよ?

「もちろん、ユノ嬢にいろんな危害が加えられないように、この話は、マノ隊長からヴァージルへ軽く打診した、程度の噂として流すつもりよ。だから、誰かに真偽を聞かれたら、そんな話知らない、でも、聞いたけど冗談だと思った、でも、否定的な言葉なら好きなように答えていいそうよ」

「ふーん。んじゃあ、母さんの冗談にしようっと。こうやって聞いちゃった以上、あたしには知らなかった顔なんてできないし。そもそも、ホントの話じゃないし」

 初めて聞いて驚いたのと、知ってて驚くのって、やっぱ違うじゃん? あたしには、顔に出さないなんて器用なこと、できないからさぁ。

 ってか、だいたいさぁ、母さんがこの手の話を言っても、ホント冗談っぽいんだよね。からかい半分じゃなくって、からかうのがほとんど、みたいな。んで、ほんのちょこっとの本気。

「…………ね」

 エレンさんが何か言ったみたいだけど、ちっちゃな声だったから聞き取れなくって。

「ん?」

「ふふっ、ただの独り言よ」

 聞き返しても、ニマニマした感じの笑顔でそう言われただけ。

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