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訓練が終わると、騎士様たちは、すっごい勢いで帰ってく。正直、ちょっと嫌がらせを疑うくらい、あっという間に。
で、あたしは、いっつも置いてけぼりにされる。
そんでもって、エレンさんっぽくなった将軍に、いろいろ言われて逃げ帰るのが、今の日課。
こんな日課、本気でいらないんだけど……。
十日くらいじゃ、慣れるわけない。もちろん、何日やっても、絶対慣れないと思うんだけどさぁ。
毎日ぐったりしながら部屋に戻るんだけど、今日は何かおかしかった。
まず、いつもならソファに座ってるリディがいない。で、グレースがすっごくオロオロしてて、リディの部屋を見てる。
「……何かあったの?」
「あの、リディさんが……戻ってきて、すぐに部屋に入ってしまって、それっきり出てこなくて……」
眠くて寝てるんじゃ。
そんなこと、言わない。ってか、リディが眠い時は、ちゃんと「眠いから寝るわ」とか言って寝に行くし。それがないなら、眠かったんじゃないってこと。
だから、グレースがこんなに不安そうなんだよね。
「泣きそうな顔をしていらしたので、心配で……」
「……それ、ホント?」
「あ、はい……泣きたい気持ちを我慢しているような、悲しい表情でしたけれど……あっ、ユノさん!」
背中でグレースの声を聞きながら、あたしは部屋を飛び出した。
今すぐ見つけたい人がどこにいるのか、あたしにはわかんない。でも、絶対に探し出してやるんだから!
よく見かけるとこには、さすがに見当たらなかった。まあ、もう散歩の時間じゃないし。
しょうがないから、中庭を見てから最終目的地に行くことにしたんだけど。
「あっ」
いたっ!
中庭で、将軍と話してるみたい。深刻なお話っぽいけど、こっちも大事!
「おじさん!」
ビクッとして、おじさんが振り向いた。そこに、あたしが激突する。ドン、と思いっきり、ぶつかってやった。
でも、さすがは騎士様だね。全然、何ともないみたい。それとも、あたしに重みがないだけ?
「リディに何言ったの!?」
拳をギュッと握り込んで、おじさんの鎧をゴンと殴る。
いっつも、だいたい、笑ってんだよ? たまに怒ったり、呆れたりしてるけど、あたしの知ってるリディは、たいてい笑ってる。
よっぽどのこと言わなきゃ、あのリディが泣くなんてあり得ない!
だから、絶対、おじさんが振ったんだ。あたしはそう、確信してる。
「何で泣かせるの? ねえ、どうして!」
見上げたら、ものすごくばつの悪そうな顔してるおじさんがいた。すぐに顔がグニャッて歪んで、何だか泣きたそうに見える。
「……ユノさんは、十四歳も年上の男と、恋愛できると思うかな?」
「できるんじゃないの?」
別に、年齢って関係ないっしょ。
そりゃあ、その時流行ってたこととか、ちょっと違うはずだから、話題が難しいかもしんないけど。んでも、趣味が同じとか、共通の話題があったら、別におかしくないと思う。
「盛り上がる話題もないのに、ってのは、もちろんあり得ないと思うけど。そうじゃなかったら、それもアリだって、あたしは思うよ」
それに、十四歳差ってことは、ユウガ兄より二歳上だから……ユウガ兄って考えるといろいろ無理だけど、そんなに悩むほどじゃないでしょ。二十歳も上って言われたら、あたしでもちょっと考えるけど。
どれだけ年が離れてても、気が合えば、何とかなるんじゃないの?
「あたし、リディはおじさんのこと、恋愛って意味で好きなんだと思う。おじさんは、違うの?」
難しいことって、あたしにはいまいちわかんないけど。んでも、その分、勘は割といい方なんだよね。
リディと話すの、楽しかったんでしょ? それでも、恋愛となったら別物なの?
いろんなことをちゃんと考えて行動しなきゃ、誰かをうんと好きになったらいけないの?
「ジャレッドさんは、大人げなく本気を出してしまったのでしょう? その責任は、取るべきだと思いますよ」
今までずっと黙ってた将軍が、ボソッと呟いた。
「時々、若い女性向けの装飾品を買っていましたよね。父が存命の頃からずっと」
「……知っていたのかい?」
「ええ、まあ。それから、リディさんは、エレンが気に入っている一人です。後々を考えれば、今すぐ行動に移すべきかと」
「……エレンか。今勝負を挑まれたら、さすがに敵わないね」
おじさんは苦笑いして、ちょいっと肩をすくめる。
うん、吹っ切れたみたいだね。
「エレンさんが勝負って言わないなら、あたしが『セイ』を叩き込むよ」
笑って言ってみたら、おじさんが笑った。
「ユノさん、ありがとう」
「あ、あと、今度リディを泣かせたら、やっぱり『セイ』だからね! ついでにグレースにも、いろいろ頼んでやるんだから!」
きっと、グレースも、リディのためなら魔法を撃ってくれると思うんだよね。多分、闇かな。
闇の魔法って、地味に効くらしいから。
「泣かせないと、約束するよ」
「絶対だからね!」
あたしがおっきな声で言ったら、おじさんはしっかり頷いた。そのまま、傭兵用の宿舎の方に走ってく。
……言っといてあれだけどさぁ、今から行くの? ってか、閉じこもってるリディと、グレースしか部屋にいないから、ヤバくない?
グレース、おじさんのこと、平気かなぁ? ダメだったら、勢い削いじゃうよね? 今を逃したら、またこじれちゃったりしない?
「あ、あたしも行く!」
リディを何とか引っ張り出して、ちゃんと話させなくちゃ!




