表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/128

65

「ですから、あなたが他の男と話していれば嫉妬しますし、エレンといる時には、エレンに殺意すら覚えますよ」

 ……何か、エレンさんだけ、扱いがすっごく違わない? あ、でも、そうなる状況が想像つかないけど、ベネットの竜にだったら、あたしも殺意が湧くかも!

 そっと見上げた将軍の表情は、メッチャ晴れ晴れとしてた。すっきりしたってわかるくらい、吹っ切れてさっぱりしたって顔。

「祝賀会の時、言ったでしょう? あなたを一時でも独り占めできることは、私にとって幸運だと」

 ……言ったっけ? 言われたかな? うーん、そうだったかも?

「あの時は、将軍が珍しく、エレンさんっぽい口説き文句言ってるとは思ってたけど……」

 ここまで深い意味があるとは、思ってなかったんだよね。

 だいたいさぁ、あたし、そういうこと、今まで男の人から一度も言われたことないし。

 むしろ、あの将軍がエレンさんっぽくなんなきゃいけないくらい、お貴族様って怖いんだって思って、そっちに気ぃ取られてたから。

「祝賀会で言ったことはすべて、私の隠すことない本心ですからね」

「ぅえっ?」

 ダメだ。この、エレンさんっぽい将軍って、何か慣れない。最初の、黙り込んでて、並んで歩くのが拷問みたいだった将軍よりも、もっと落ち着かない。

 あたしじゃ理由はわかんないけど、無理。

 立ち上がって逃げれるなら、今すぐ逃げたい。けど、さっきから足に力が入んないの。何でか、全然立てないんだよね。

 あたしの足のはずなのに、あたしに動かせない。足じゃなくって、ただの棒きれになったみたいな、変な感じ。

「マノ隊長には、ありがたいことに許可をいただけましたので、これからは遠慮なくあなたに思いを伝えることにします」

 え……? ちょっ、母さん、何の許可なの、それ!

 ってか、遠慮なくって……え? ひょっとして、下手すると毎日こんな目に遭うの? そうなったら、あたしの心臓、そのうち止まっちゃわない?

 エレンさんだって、女の人だし、毎日じゃないから何とかなってたのに。

「む、無理! あたしが無理!」

「大丈夫です。そのうち、少しは慣れますよ」

 ニッコリ、爽やかに微笑んで、将軍はサラッと言い放つ。

「エレンさんのだって慣れないのに、無理に決まってんじゃん!」

「では、慣れてもらいます」

「無理!」

 叫んだ拍子に、何でか勢いで立てた。

「絶対、聞かない!」

 頑張って宣言して逃げたけど……何か、負けて捨て台詞残してったみたいな、妙な気分。


 敗北感満載で部屋に戻ったら、グレースはメッチャ心配してくれた。リディは、何かニヤニヤしてたけど。

「今日は謝れたみたいね」

「……ちゃんと謝れたけど、別の問題が出てきて、すっごい敗北感がさぁ……」

 グレースが座ってた方のソファの空きに、ちょんと座って。そのまま、グレースの膝を枕にして転がってみた。

 あ、これ、結構気持ちいいかも。

「……グレースって、ほっそりしてて、腕もメッチャ細いのに、太ももはふっかふかで気持ちいいんだね」

「あんたねぇ……どこのエロ親父よ、って聞きたくなること、平然と言わないでくれる?」

「何か、ふわっとしてて落ち着くんだよね……このままここで、寝てもいい?」

「ダーメ。隊長に怒られるわよ?」

 あー、そっか。イハル(にぃ)かぁ……しょうがない、今日は諦めようっと。

 むくっと起き上がって、ちゃんと座り直す。

「ユノさん、頭、小さいんですね。少し驚きました」

「そうよねぇ。ユノって、顔も小さいし」

 ……まあ、あたし、背が低いもんね。頭は自然と小さくなるもんでしょ。

「って、誰と比べてんの?」

「え? あ……」

 ブワッて感じで、グレースが一気に真っ赤になったから、聞かなくてもわかった。ってか、さすがにはっきりとは聞きたくない。

 何か、身内の恥をさらされる気がして、嫌。

 んでも、興味なさそうだし、そういうことしないんだろうなぁって思ってたけど、イハル兄も、ちゃんと男の人だったみたい。ちょっと意外だけど、安心するね。

 だって、こんなはかなげな美少女を、お得意の放置プレイする人だよ? 横から誰かにかっさらわれるんじゃないかって、心配だったんだから。

「にしても、いつから? そんなこと、言ってなかったじゃん」

「あ、あの……えっと……その……」

 真っ赤になって、何にも言えなくなってるグレースが可愛い。うん、可愛いから、もう何にも言わなくっていいよ。

「イハル兄に聞くから、やっぱ言わなくていいよ。こういう恥ずかしいことは、平気な人間が引き受けるべきだよね!」

「……あんたねぇ。とばっちりでこっちが被害受けたらどうしてくれるわけ?」

「えー? いいじゃん、とばっちりくらい」

 あたし、騎士(エクエス)様たちに聞いたんだからね。最近、あたしが騎士様たちの訓練に参加してて暇な間、おじさんがリディと話してるってこと。

 暇つぶしにつき合ってくれてありがたい、とかって、おじさん、メッチャ嬉しそうに言ってたらしいし。それに、リディがほいほい行くんだから、割と気が合ってるってことでしょ?

「……リディってさ、おじさんのこと、好きなの?」

 言った瞬間、あたしの体から力がスコンって抜けた。そのまんま、テーブルにおでこを思いっきりぶつけたんだけど。

 もう一個音が聞こえたから、多分、そっちはグレース。

「……わかったからもう言わない」

 照れ隠しが無言のお色気攻撃とか、ホントやめて欲しいんだけど。

「あのさぁ、二人に聞くけど、誰かを好きってどんな感じ? 家族とか友達が好きってのは、あたしにもわかるんだけど、そうじゃない好きって、どんな感じなのかな、って」

 まあ、二人を見てたら、何となくならわかるんだけどね。んでも、感覚としては理解できないわけ。

 ドキドキ。フワフワ。ワクワク。ハラハラ。

 多分、ひと言じゃ言えないよね。いろんな感情がゴチャゴチャ混ざって、できあがってそうだもん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ