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 自分が何を持っていて、何が足りないのか。

 リアムの言ってた言葉が、ちょこっと引っかかる。

 あたしは何を持ってて、何が足りてないんだろ?

 持ってるものは、セイライ国の奥義『セイ』。それから、傭兵としての誇りと覚悟。足りてないのは、とりあえず筋肉。あと、落ち着き。

 他に、何があるのかな?

「難しいよねぇ……」

 思わず呟いちゃって、リディとグレースにメッチャ変な顔された。

「いきなり何なのよ」

「んーと、リアムの言ってた、自分が何を持ってて、何が足りないか、って話。足りないのがわかってても、すぐにどうこうできるもんばっかじゃないじゃん? でも、足りないままじゃ嫌じゃん?」

「ああ、リアムさんらしいですよね。それは……むぅっ」

 言いかけたグレースの口を、リディが素早くふさぐ。

 ……のはいいけど、鼻もふさいでるよ。それだと、グレースが息できないから!

「たまには、ユノに頭使わせないとダメよ」

「ぅ……」

「ちょっ、リディ! 口と鼻ふさいでるから!」

 グレース、死にそうじゃん!

 慌ててリディの腕に飛びついて、グレースの口と鼻を自由にしてみる。

 ぷはぁ、って感じで、急いで息を吸いすぎて、グレースがゲホゲホむせた。

「鼻までふさいだら死んじゃうじゃん」

「やだ、ふさいでた? グレース、ゴメンなさいね」

「……あ、えっと……だ、大丈夫、です……」

 ホント、グレースが死にそうな感じ。

 さすがに、急には復活しないよね。一瞬、死にかけてたし。

 それにしても、グレース、リアムの言ってたことの意味とか、本質っての? その辺、ちゃんとわかってんだね。リディもわかってるっぽいけど。

 ……ってことは、わかんないの、あたしだけ?

 あたしに足りないの、ひょっとしなくても、頭の中身も……?

「足りないものを自力で補う、って考えるから難しくなるのよ。たとえば、ユノ。空を飛びたかったら、あんたならどうする?」

「え? んー……」

 あんま、空飛びたいとか思わないけど。んでも、飛ぶとなったら……。

「エレンさんに頼んで、ドナに乗せてもらうかも」

 しょっちゅう空飛んでるし、エレンさんなら嫌がらないと思うし。あと、他の竜騎士(ウォラーレ)には頼みにくいってのもあるし。

「ベネットさんには、頼まないのですか?」

 グレースが、すっごい不思議そうに首を傾けてる。

 あ、そっか。ベネットは同じ隊だから、頼みやすいとか思ってんのかな? 残念なことに、そううまくいかないんだよね。

「ベネットの竜ってさ、あたしのこと嫌いなんだよ。近寄るとうーって威嚇するし、遠慮なく噛みつこうとするしさぁ。初対面から印象最悪で、乗せてくれるって言われても、あたしが嫌だよ」

「確か、クレメンタインさんでしたよね?」

「……誰? ……あーっ! ひょっとして、それ、ベネットの竜の名前?」

 やっぱ名前長いよ。絶対覚えられないって、それ。もうちょっと短くなんなかったのかな? ドナくらいがいいよ、絶対。

 あ、もしくは、愛称! ベネットさぁ、今からでも遅くないから、愛称つけない? メッチャ短いやつ。そしたら、あたしでも覚えられるし!

「そういえば、ベネットさんは、あまり呼んでいませんでしたけれど……」

 えーっと、グレースがゲルトさんのとこにいたのって、半年くらいだよね? んで、ベネットたちもいたのが、三ヶ月くらい。その中で、ベネットが竜の名前を何回呼んだか、それが問題じゃない?

 ちなみにあたしは、解放軍結成から一緒だけど、まだ二回くらいしか聞いてない。

「あっ、そういえば、ベネットが名前言いかけると、あの竜、すぐ走ってくるよね」

 で、あたしに向かってガウガウ威嚇してくんの。ホント、ムカつくんだから!

「そうですね……ああ、それで、ほとんど聞いた覚えがないのでしょうか」

 主の声にジッと耳を澄ませて、呼ばれるのを待ち焦がれてる竜……想像したら、何か嫌だ。すっごい嫌だよ、それ。

 そんな竜に乗せてもらうくらいだったら、別の方法で空飛ぶよ。ってか、諦めるよ。別に、空飛ばなくても死なないし。

 ……ん? 別の方法……?

 自分で考えたことに、何でか引っかかった。

 あたしには『セイ』がある。傭兵としての誇りと覚悟もある。んで、嬉しくないけど、お貴族様相手でも使える、ご立派な家柄ってものもあるっぽい。

 この、お貴族様相手に使える家柄ってのは、多分、リディやグレースにはない。あたしだけが持ってて、あたしだけが戦える。

 それってつまり、リディやグレースがお貴族様に絡まれた時、あたしだったら助けられるってこと?

 別に、リディやグレースが、お貴族様と対等の家柄が欲しい、って思ってるなんて、あたしは思わない。でも、お貴族様と何かあったら、リディたちじゃ戦うこともできないじゃん?

 自分にないものを持ってて、助けてくれる人に「助けて」ってお願いする。で、助けてもらう。それで、足りないのはどうにかできるよね?

 逆に、自分にあって、他の人が持ってないものがあるなら、助ければいいじゃん。

 リアムが言いたかったのって、ひょっとして、そういうことなの?

「そっか! あたしに足りない筋肉も、落ち着きも、頭のよさも、誰かに助けてもらえばオッケーじゃん?」

「……あんた、自分の足りないものがちゃんとわかってるのね」

「当ったり前じゃん。あたしにないから、将軍とかイハル兄とかグレースが羨ましいんだもん」

「で、色気はいらないのね」

「今はね」

 んでも、いつかは欲しくなるかもね。

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