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 あたし、よく知らなかったんだけどさ……エスコートされるのって、ただ隣を歩くだけじゃないんだね。

 将軍がサッと手を出してきた時、何してんのかと思ってさぁ。思わず、ジーッと見ちゃったわけ。

「ユノさんの右手をここに乗せてください」

「へ?」

「乗せてください」

 ……何か、今日の将軍、ちょこっとだけエレンさんみたい。有無を言わせないとことか、サラッと口説いてくるところとか。

 そーっと言われたとおりにしたけど、別に何てことなかった。逃げれないように手をギュッと握られるのかと思ってたけど、そんなことしないんだね。ホントに、ちょんと乗っけてるだけ。

 これだと、手をつないで歩くのと、そんなに変わんない感じかな? 手を持ち上げてる分、ちょっと疲れそうだけど。

「迷子になったり、見失った時には、もう少し離れにくい形にしますから」

「な、ならない! 絶対ならないようにするから!」

 将軍の笑い方が、エレンさんっぽすぎて、メッチャ怖い!

 何だろ……ひょっとして、あたしが見てきた将軍って、作ってたの? このエレンさんっぽい方が、実は将軍の素ってこと?

 似たもの同士って、仲がすっごくよくなるか、メッチャ悪くなるかの極端だったりするよね? だから、いろいろあったことも含めて、エレンさんと将軍って仲が悪いんだ……ちょっと納得。

「ああ、そうです。今日は少しばかり厄介な連中が相手ですので、エレンを見習って振る舞いますから」

「……もうとっくに、エレンさんっぽいよ?」

 こう、エレンさんは初対面からああだから、あたしも慣れちゃってるけどね。将軍はあんましゃべんなくって、たまーにニコッて笑う人だと思ってたから。こんなふうに、いきなりエレンさんみたいなことされると、メッチャ違和感がある。

「そうですか。このところ、懸命に練習した成果があったようですね」

「ってかさぁ……将軍がエレンさんみたいになんないといけないって、お貴族様ってどんだけ怖いの?」

 あー、うん。エレンさんにリアムつけたの、多分父さんだ。リアムは一応お貴族様のことわかるし、精神的な攻撃には負けないし。ってか、逆に泣かせそうだし。

 まあ、あたしは、頑張っても聞き流すのがせいぜい……かな? 聞き流せなくって、突っかかっちゃいそうな気もするけどね。

「そうですね……エレンでも、あれに輪をかけて対応する程度には厄介でしょうね」

「へ? じゃあ、将軍じゃ無理じゃない?」

「確かに、できれば避けたいところですね。人には、向き不向きがありますから」

 ああ、そっか。

「んじゃあ、将軍が礼服とか着なくなったのって、お貴族様の世界に向いてないって思ったから? 着なきゃ、出なくていいって感じなのかな?」

「少し違いますね。正確には、出たくないので持たない、といったところです。着るものがなければ、物理的に出られませんから。ああ、もちろん、採寸されないよう、基本的には日夜逃げ回ることになりますが」

 ……何か、将軍も、結構エレンさんに似てるよね? 考え方、時々同じとこあるし。

 元々はちゃんとした家の人みたいなのに、礼服とか持ってないって、さぁ……。しかも、作らせないように逃げ回るって、どうなの?

「今回は、さすがに顔も出さないわけにはいきませんから……ずいぶん遠ざかっていたので、すっかり忘れてしまっていましたからね。仕方なく、エレンを参考にしました」

 忘れちゃったから思い出すのに、参考になっちゃうエレンさんが、メッチャすっごい人のような気がするんだけど。

 あー、でも、エレンさんって、顔で笑って心で罵る、とか平気でできそうだもんね。声に出さないでメッチャ罵倒しながら、ニコニコ笑って、チクッと刺さる嫌味を交えて話してそうじゃん?

 リアムも、そういうとこあるけど。しかも、嫌味がメッチャわかりづらいけど。

「ああ、そうです。広間に入ったら、できるだけ黙っていてください。何か言われたり、された時には、私に報告してください。マノ隊長から、あなたを絶対に矢面に立たせるな、と厳命されておりますので」

「母さんが? 父さんじゃなくって?」

 めっずらしー。

 母さん、あんま過保護じゃないから、あたしが何してても、何されてても、ほとんど気にしないのに。ケンカして、顔に擦り傷いっぱい作って帰っても、「あらあら」で済まされちゃったし。

 だからあたし、父さんから、容赦ないゲンコツ食らってばっかなんだけどね。

「間違いなくマノ隊長でしたよ。あの方も、エレンに通じるものがありますね」

「そう? 割と見たまんまだと思うけどなぁ……」

 いっつも父さんの後ろで控えてるから、怖いって思ったことないし。

 そういえば、母さんに怒られた記憶ってないかも。怒るのは父さんの役目、褒めるのは母さんの役目、って感じでさ。

 んでもって、たまーに父さんに褒められると、メッチャ嬉しかったんだよね。

「後々の面倒を避けるには、今をうまくやり過ごすのが最適とおっしゃっていましたが……」

「へー。まあ、あたしはカッとなったら、何にも考えないで口が出ちゃうから、もめごと起こすのは得意だしね。あ、そっか。母さんが心配するのも、しょうがないかも」

 お貴族様ともめると、やっぱ面倒がいっぱいなんだろうね。

 どんだけ向こうが悪くっても、こっちが謝んないといけないってこともあるんだろうし。それが原因で、いろいろ無理難題押しつけられても困るし。

 将軍に報告するまで黙ってられるかはわかんないけど、できるだけ、頑張ってみるよ!

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