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 あたしはさ、父さんと母さんが祝……うーん? えっと、おめでとう会に出るならしょうがない、って思うんだよね。聞いたら、ユウガ(にぃ)もカノ(ねぇ)も巻き込まれてるみたいだし。父さんと母さんの子供ってことで、家族まとめて、みたいな扱いっぽいじゃん?

 でもさぁ、何でグレースとかリディも巻き込まれたんだろ? 一応活躍した隊の隊長ってことで、イハル兄はともかく。

 着替えは、順番とかいろいろあるらしくってさ、あたしは一番最後だった。リディは、結構早かったかな? あたしが着替える前に、見たところ父さんと同じくらいの年齢の騎士(エクエス)様が迎えに来てたし。

 名前呼ばれて、リディがすっごくびっくりしてた。んで、騎士様に何か言われて、珍しくちょっと赤くなってたっけ。

 ってか、あの騎士様、訓練でも見かけたことないんだけど……誰?

 グレースは、ついさっき。あたしが着替え終わって、ヘロヘロになったところに、ちょうどイハル兄が来たんだよ。

 うん、予想どおり、二人並んだらメッチャキラキラしてた。

 イハル兄が、王子様とか、お貴族様みたいに見えたもん。グレースは真っ赤になってて、すっごく危なっかしかったけどね。

 あー、イハル兄、ちゃんと褒めたかな? ……それ以前に、褒め言葉、ちゃんと知ってるのかな?

 よく知らない子もたくさんいたけど、みんないなくなった。今は、あたしだけ、ぽつんと残ってる。

 ドレス着せられて、化粧もされて、髪の毛もいじられて。正直、このまま帰っちゃいたいくらい、もうくったくたなんだけど。

 あ、ちなみに、鏡は見てない。見たくなかったから。

 壁際にずらーっと、いっぱい並べてある椅子にちょこんと座って、壁に背中をくっつけて、だらっとして。あたしはぼんやりドアを見てる。

 疲れてる時に変化がないって、退屈だよね。んで、何か、眠くなるの。

 ……さすがに、この恰好で、床で寝てたら怒られるよね? ドリスとか、エレンさんに。

 でもさぁ、剣もないし、この恰好で暴れるわけにいかないし、退屈ー。

 椅子からズルッとずり落ちそうになったところで、バタバタ足音がした。慌てて、ちゃんと膝くっつけて座り直したら、ドアがバンッて開いて。

「申し訳ありません、遅くなりました!」

 まさかの将軍だった!

 ここ、もうあたししかいないんだけど……そういうこと? ってか、何で将軍?

 えーっと、父さんは傭兵部隊の隊長で、宮廷騎士団として見たら、二番目に偉い人ってとこかな? そんな父さんの娘だから、一応それなりの人間を当てないとダメってのは、何となく理解できる。お貴族様の世界だから。

 んでも、将軍は違うっしょ。つーか、将軍、宮廷騎士団の中じゃ一番偉いんだし。部下の娘をわざわざエスコートって、お貴族様でもしないっしょ?

「…………」

 こっち見て、将軍が固まってるんだけどさぁ。やっぱ、こう、頑張って褒める言葉探してるんだよね?

 うん、あたしでも、褒め言葉見つけんの、多分苦労するし。なくっても気にしないっていうか、むしろ言わない方向で!

 あー、でも、やっぱ似合うね、あの服。ちゃんと完成したら、使用人っぽい服には思えないし。着る人を選ぶ服ってとこは変わんないけどね。何となく、将軍がいつもよりずっとカッコイイと思うし。

 んでも、あれをイハル兄が着たら、絶対似合わない。きっぱり断言するよ、本気で死ぬほど似合わないから。

 何ていうか、あたしのがいたたまれないから、ちゃっちゃと立ち上がる。んで、将軍のとこに歩いてく。

「確認なんだけど、あたしは将軍と行けばいいの?」

 問いかけたら、将軍がハッと我に返った顔をした。

 一生懸命、褒め言葉なんて探さなくていいからさぁ……変に気を遣うより、いつもどおりにしてくれた方が、あたしとしては助かるし。

「え? あ、はい……」

「将軍、せっかくいつもよりうんとカッコよく見えるのに。あたしと一緒だと、子守押しつけられたみたいじゃん?」

 昔、イハル兄がされたみたいな。

 あっ、そっか。その方が、ごちゃごちゃもめないで済むって考え方かな? 将軍モテるみたいだし、誰か一人だと、後が面倒とかありそうじゃん?

 あたしだったら、後で何かあっても、子守です! って言い切っちゃえばオッケーだし。

「……今のあなたを見て、私が子守を押しつけられたと言う人間がいるならば、ぜひ拝みたいですね」

 ジーッと顔を見つめられて、あたしは将軍の視線に負けた。

 自分のつま先見てるけど、まだ将軍に見られてんの、ちゃんとわかるよ。

「だいたい、他人が何を言おうと、私には関係ありません。あなたをほんの一時、独り占めにできる幸運は、何にも代えがたいものですから」

 ……将軍って、こういうこと、サラッと言えちゃう人だったんだ……。

 何か、恥ずかしくって、心臓がドキドキして、顔が熱い。

 あたしはスカートをギュッと握って、力いっぱい目を閉じる。

 スカート、しわしわになっても知らない! 怒られたら、将軍が悪いって言ってやるんだから!

「ちなみに、あなたをエスコートできることは、私にとって、あなたを堂々と独占できる権利と同義なんですよ」

 恥ずかしすぎてもう無理! 聞けない……ってか、聞きたくない!

 将軍、何か変なもの食べたとしか思えないんだけど。ベネットの竜みたいに、拾い食いでもしたわけ? それとも、変な薬、無理矢理飲まされたとか?

「ですから、この部屋を出たら、私から絶対に離れないでくださいね」

 見てないけど、多分ニッコリ微笑んでるんだろうな、って思う声がした。

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