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「……ユノちゃん」

「んー? なぁ……にっ!?」

 呼ばれたから振り向いたら、今にも死にそうな雰囲気のリアムがいた。びっくりしすぎて、心臓がぴょこんと口から飛び出るかと思ったんだけど!

 ってか、何でそんな死にそうなわけ?

「……採寸をされると、祝賀会に強制参加って、本当?」

「リアムも測られてたの? あれ? ひょっとして、ベネットはなし?」

 だいたいいっつも一緒に行動してるから、そんな話したとするっしょ? んで、リアムは測ったのにベネットは違うってなると、リアムはちゃんと情報を集めに行くわけ。ベネットは「まあいっか」ってなって、そのまま忘れるタイプ。

 まあ、聞きに行くっていっても、父さんとかイハル兄とか、面識のある人だけだけど。

 その結果が、それなのかも。

「ちなみに、強制参加かどうかは知らないけど、傭兵部隊の中だと、あたしとグレースとリディ、あと、イハル(にぃ)も出なきゃいけないみたいだよ? 聞いてないけど、父さんと母さんもじゃないかな?」

 あー、そっか。エレンさんがリアムと関わるって、これか! きっと、リアムがエレンさんをエスコートするんだね。

 おっとりしてそうな近所のお兄さんと、キリッとした凛々しいお姉さん。

 うん、意外と、見た目はお似合いかも。

「……出ないわけには、いかないのかな?」

「お貴族様の集まりは、やっぱ苦手? 嫌なら嫌って言えばいいと思うけど……あたしの想像だけど、リアムはエレンさんのエスコート役だと思うよ? あれでエレンさん、中身知らなきゃただの美人だし、いっつも王女様のそばにいるから目立つし、いろいろ面倒なんじゃない?」

 お貴族様って作法にうるさそうで、あたしもああいうキラッキラの世界は嫌だけどね。

 まあ、できるだけ目立たないように、隅っこでコソコソしてるつもりだけど。

「……ああ、そういうこと。じゃあ、出るよ。どうりで、ベネットには来ない話というわけだね」

 ふーん。まあ、リアムがそう言うなら、もうちゃんと覚悟は決まってんだろうし。あたしがとやかく言うことじゃないけどさぁ。

 損な性分っていうか。お貴族様の世界は本気で嫌いなのに、結局首突っ込んじゃうんだよね、リアムって。

「あ、そういえば、イハル兄は何かすごい服になってたけど……リアムは?」

「見てないよ。できるだけ体型が変わらないように、って言われただけで、当日のお楽しみらしいね」

「そうなんだ? こないだ、見せてもらえばよかった!」

「イハル隊長は、グレースちゃんに合わせたんでしょ? 二人そろって、キラキラしてそうだよね」

 ニコニコ笑って、リアムは言う。

 リアムは元々、身近じゃない他人にはあんまり興味がない。関心も薄い。誰が誰を好きで、どうなろうと、全然これっぽっちも気にしない。そういう人。

 多分、グレースのことは、ゲルトさんのとこで心配になるレベルだったから、うんと気にかけてただけ。イハル兄に任せられるってわかったから、今はそうでもないってこと。

 ベネットはまだうるさいけど。

 あー、ちょこっと違うかな。リアムは、自分自身にも関心がないんだよね。いつどこで死のうが、気にしないって感じで。

 ただ、守る気になったら、すっごいけどね。正直、あたしは敵に回したくないって思う。ってか、敵に回られたら、人間的にとか、世間的にとか、いろんな意味であたしが死んじゃうし。

 大昔に、友達面したお貴族様の子供を再起不能にした、ってニコニコ笑って言ってたけど……それって多分、リアムが兵役に出る前っしょ? 絶対、今のあたしより、年下の頃だよね?

 物理的に怖いのがエミールだとしたら、リアムは精神的とか、他人にわかんないところで攻撃されそうで怖い。

 ……あー、何かその辺、エレンさんと通じるものがあるかもね。リアムのが、さらにえげつないことしそうな気がするけど。

「ねえ、ユノちゃん。私は、私に敵意や殺意を向けない限り、敵になる気はないよ? ユノちゃんはそういうこと、しないでしょ?」

 ガーン! リアムにまで、考えてること読まれた!

「あははっ、顔に出すぎるのも、少し問題だね」

 ニッコリ笑って言うとこが、リアムだけどさぁ……あたし、もうちょっと、顔に出ないように頑張らないとダメっぽい?

「まあ、そこがユノちゃんのいいところでもあるから、そんなに気にしないでいいんじゃない? ヴァージル将軍も、そういうユノちゃんだから、近くに寄せてくれるんだと思うよ」

「へ?」

 あたしが目をおっきくしてリアムを見たら、リアムは不思議そうに首を傾けた。

 っていうか、それ、あたしがしたいこと!

「ヴァージル将軍は、同じ騎士(エクエス)はともかく、それ以外の人は寄せないし、寄ることもしない人らしいよ。正直、魔法に狙われたユノちゃんを助けたこと自体、相当珍しいことだったみたいだからね」

「へぇ……そうなんだ? あー、そういえば、あんま人と話すの、得意って感じじゃなかったっけ。今は慣れたけど、最初は拷問みたいでさぁ」

 ひょいって肩をすくめたら、リアムがプッて噴き出した。

 んでも、ホントに拷問だったよ? で、今はホントに普通に話せるよ? ……何でかな?

「あ、あれかな? 将軍がちょこっと笑うようになってから、話しやすくなった気がする。それまでは、とことん黙ってるから苦手だったけど」

「ユノちゃんでも苦手な人がいるんだね……それこそ、意外に思うんだけど」

「あたしだって人間だもん、苦手とかあるよ? あー、でも、嫌いってなる人は、少ないかな? 本気でいいとこない人って、それこそ自分が嫌になるくらい探さなきゃ、見つかんないじゃん? その気になったら、ガイルファラの皇帝でも、いいとこ見つけられるかもよ?」

 もちろん、探したくなんてないけどね。

 マーハルニーファだけじゃなくって、セイライ国の仲間とか、たっくさん殺してる人だから。直接手を下したんじゃなくっても、この国を滅ぼそうとして軍を突撃させた時点で、同じことだから。

 そんな人のいいとこ探しなんて、単なる自虐趣味でしかないじゃん?

「……それは、好き好んで探したくはないけどね」

「まあ、そうなんだけどね。もののたとえってやつ」

 ガイルファラの皇帝なんて、ちょこっとくらいいいとこあっても、これまでが最悪だし。一個二個の美点なんて、簡単にチャラになっちゃうでしょ。

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