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毎日気の済むまで、騎士様たちの訓練を見て。あたしもそこで、ついでに一緒に訓練して。
そんなことばっかしててさ。何で、あたしの像ができそうなくらい、細かくあちこち測ったのかってこと、すっかり忘れちゃいそうになってた頃。
騎士様たちと中庭にいたら、バッサバッサって羽音が聞こえた。
「……ドナですね」
将軍がボソッと呟いて、すぐに、ホントにエレンさんが駆けつけてきて。
「ヴァージル、将軍。少し、ユノ嬢をお借りしますね」
エレンさんは言いながら、あたしの腕をグイグイ引っ張って連行体勢。将軍はちょこっと肩をすくめて、一回だけ頷いた。
ってか、何であたしの意志じゃなくって、将軍とエレンさんの間で取引成立してるわけ?
文句をつける前に、あたしはズルズル引きずられてって。
中庭の外に出て、建物の影に隠れたところで、エレンさんがすっごい真顔であたしを見てきた。
何か、何言われるかわかんなくて、逆にメッチャ怖いんだけど……。
「ユノ嬢は、リアムを知っていますよね?」
「へ?」
予想してなかった。その名前は、あたし、予想してなかったよ!
っていうか、何でリアム?
「これから、少々関わることに決まりまして……しかし、顔は一度見たことがあるものの、人となりはまったくわからないので……」
エレンさんは、ちょっと早口でまくし立てる。
へぇ……リアムが、ねぇ。エレンさんと関わるって、何か、珍しいっていうか。
「あたしが思うに、ベネットみたいな人じゃないよ。メアンラーエの貴族の養子になって、本物の代わりに兵役に出て、就役期間が終わる間際に大ケガして、そんでゲルト隊長に拾われたってのは聞いてる。一応、貴族らしいことは、やればできるって言ってたけど」
あ、そっか。その辺、関係あるのかな?
傭兵稼業してて、貴族の世界も理解できるって、やっぱ少数派っていうか。多分、滅多にいないし。
「メアンラーエの……ああ、だから、槍使いなんですね」
「うん。まあ、それなりに強いね。人の嫌がることは、基本的にはしないけど……どっちかってーと、自分からはあんまり絡んでいかないかな? 聞き手に回るのが多いって言うか、補佐するタイプっての? バンバン前に出てく人じゃないよ。グレースとも面識があるけど、ベネットと違って、用がある時でも、ギリギリ大丈夫な距離から話しかけてたって、前にグレースから聞いたし」
メアンラーエは、エミールみたいな魔道士と槍使い、斧使いに射手が多い国。もちろん、マーハルニーファにも、槍使いとかはいるけどね。
あー、そっか。貴族の身代わりにされたから、いつも一歩下がってるのかもしんないね。そういうのが、習慣になっちゃってるっていうか。
そりゃあ、もちろん、自己主張ばっかのウザい貴族もいるけどさぁ。
「気になるなら、話しかけてみたら? よっぽどのことしない限り、他人のこと、嫌いってなんないみたいだし」
リアムなら多分、エレンさんがいきなり槍で勝負を挑んでも、予告なしにドナで拉致して空中散歩しても、ニコニコ笑って受け入れると思う。んで、手を抜かずに、ちゃんとがっつり相手してくれるんじゃないかな?
だいたい、リアムが嫌いって言ってた人間ってさ、養子にした貴族一家とか、その辺だけだし。
「あと、イハル兄もリアムとは面識あるよ。ゲルトさんとこで、しばらく一緒に傭兵してたはずだから」
「……いえ、ユノ嬢のお話だけで十分です。私も、覚悟が決まりましたから」
えっと、あのさぁ……そう言うけど、何か、悲壮感出てるよ?
ってか、リアムと関わるのって、覚悟がいるとか、そういう重い話じゃないはず。ベネットだったら、バッチリ覚悟しないと、って思うけど。
「そういえば、先日測っていただいたアレなんですが」
アレ? あっ、すっかり忘れてた!
「無事に形になってきたそうですので、いずれ試着していただこうと考えています」
「試着!?」
ってことは、服作ってたの?
何だろ……傭兵隊の制服とか、そういうのかな? 騎士様たちと似た感じで、宮廷騎士団っぽいの。そしたら、見てすぐわかるよね。
いいなぁ、そういうの。
あ、できたら、女の子はちょっとヒラヒラさせて欲しいかも。ヒラヒラを着るリディって、ちょっと見てみたいし。
「ぜひ、拝ませていただきたいと思っていますので」
エレンさんはニッコリニコニコ笑って、メッチャ楽しそうに言う。んでも、あたしは、すっごく嫌な予感しかしないんだけど。
ササッとドナに乗って、エレンさんは飛んでった。そういえば、どこから飛んできたんだろ……。ってか、ドナって、いっつもどこにいるんだろ? 迷子になってウロウロしてても、ちっとも見かけないんだけど……。
気になったけど、騎士様たちの訓練も気になるから、あたしはいそいそ中庭に戻る。
足を踏み入れたとたんに、視線がバッて突き刺さった感じがして。見たら、騎士様たちが、メッチャこっち見てた。
見られるようなこと、何もしてないと思うんだけど……。
「エレンの用事は終わりましたか?」
「うん。予想外のこと聞かれたけど、別に困る話じゃなかったよ」
将軍が心配そうにしてるから、ざっくりとだけ。
んでも、そんだけで、ホッとした顔するからさぁ。詳しいこと言わなくてもオッケーなら、そのくらいは言ってもいいかなって思うし。




